居酒屋ごっこのすすめ

居酒屋ごっこのすすめ


お酒はそれほど強くないのに、居酒屋風のつまみが好きだ。
旬の素材に手をかけ過ぎずに、カンどころをぴしっと押さえた気のきいた一品。取り合わせの妙を楽しむ一品、珍味を上手に使ったおつな一品など、料理が美味しい居酒屋さんの品書きはどれもこれも魅力的で、眺めているだけでわくわくしてしまう。もちろん料理屋さんならではの仕入れのよさと包丁さばきをただただ楽しむものもあるが、シンプルで簡単なのに素材の組み合わせが新鮮だったりすると家に帰ってからすぐに真似してみたくなる。

とにかく居酒屋は簡単でおいしいレシピの宝庫だ。「これは何が入っているんですか?」「どんなふうに作るんですか?」とわざわざ質問しなくても、料理をしている手元が眺められるカウンター席はまるで料理教室のようだ。料理人たちの無駄のない動きは眺めているだけでほれぼれしてしまう。

そうして見て、味わって、真似して作っているうちに自然に居酒屋風のレシピが増えた。たとえば和えるだけのメニューなら、珍味の力を借りるのがいちばん。味つけを塩や醤油に頼るのではなく、塩昆布や酒盗、たらこや明太子などの魚卵などのうまみたっぷりのものを使うことでぐんと味わい深くなる。
これからの季節ならかぶや白菜を細切りの塩吹き昆布で和えるだけで美味しい。鯛やヒラメなどの白身の刺身をうすく削ぎ切りにして同じく塩昆布で和えて、かぼすでもすだちでも添えれば即席の昆布〆のようなおつな味わいの一品になる。

いかの刺身なら細切りにしてから、たらこと醤油少々を。ちょっと贅沢だが、バターでじっくり焼いた餅にパスタに使うパウダー状のからすみをふりかけて海苔でくるんで食べるとお酒が弱い私でさえお酒が欲しくなるほどだ。

また安定の明太子やたらこと細切りにしたにんじんを炒め合わせたしりしりは常備菜としても活躍してくれる。

梅干しやしば漬けやキムチ、たくあんに最近ではいぶりがっこなどの漬けものも発酵食品ならではの酸味と旨みで味付けに深みを出してくれる。さっと茹でたニラをたたいた梅干しとだし醤油、胡麻油と隠し味に砂糖を少々加えてもみ海苔とあえたものは我が家の定番中の定番。おつまみにもなり、白いごはんのお供としてもぴったりだ。

まぐろやいか、サーモンなどの刺身の盛り合わせを小粒の納豆と刻んだしば漬けやたくあんに万能ねぎや大葉、かいわれなどの薬味と和えた五色納豆も漬けものがなければ味が締まらない。これを焼き海苔で巻けばいくらでも食べられる。この五色納豆はごはんや酢飯にのせて丼にしてもいける。

切って和えるだけならフルーツも使い勝手がいい。これからの季節はいちじくや柿、梨などがおすすめだ。特にいちじくは胡麻味と相性がいい。胡麻豆腐に添えたり、簡単なところでは切ってごまだれをかけるだけで割烹や小料理屋で出されるような一品になる。柿や梨は白和えに加えると抜群だ。

和えものの次はちょっとこってりしたものも欲しい。炒めるのもいいけれど、ここはやっぱり揚げものの出番。ビールはもちろん日本酒にも合うから揚げは、鶏もも肉におろした生姜やにんにくを加えた酒、みりん、醤油の下味に卵と片栗粉と胡麻油少々も加えてジップロックなどの袋で染み込ませてから揚げるだけで、外側はカリッとなかはふっくらジューシーに仕上がる。ぷつぷつと竹ぐしで穴を開けてから揚げたししとうと盛り合わせると彩りも鮮やかに。

ありあわせの野菜を取り合わせたかき揚げもよく作る。夏場はとうもろこしや空豆、枝豆が定番だったが、これからの季節は根菜類が主役に。
最近気に入っているのがごぼうのかき揚げだ。ピーラーで薄くスライスしたごぼうをさっと酢水に放してから水気をよく拭いて、ビニール袋に入れて片栗粉をまぶして油で揚げるだけ。ごぼうのちょっと土っぽい風味と甘さがいい感じにミックスしたちょっとスナックのような軽い味わいになる。これにはシンプルに塩をふるだけでも美味しいが、カレー塩などにするとよりおつまみっぽくなる。

ほかにも肉豆腐やきんぴらなどのあるとほっとする甘辛味やこってり味をリセットしてくれる酸味のあるものなど、かならずセットにして献立てを立てる。

寒くなってくれば立ち上る湯気もごちそうの蒸し物を。あんかけにした茶碗蒸しは具など入れなくてもつるんとした舌触りと出汁のうまみでほっこり温まる。季節感のあるものが和食にはやっぱり似合う。

そしてこれらの料理を盛り付けるときにも気を付けていることがひとつ。いつもはモリモリに気前よく大盛りにしているのだが、おつまみのときに限っては小さめのうつわに控えめにするのを心がけている。お酒を美味しく飲むためのつまみが山盛りでは興ざめしてしまう。目で楽しんで、もうちょっと食べたいなと思うくらいがちょうどいい。いつものお惣菜も盛り付け方によっては十分おつまみ仕様になる。

また、おつまみのときにはちょっと面白い形などうつわも遊んでみるのも一興。お猪口や片口などの酒器は阿南維也さん、余宮隆さん、新道工房、ガラスの田井将博さんなど大好きな作家さんのものをひとつずつ買い集めていくうちにコレクションがずいぶん増えた。

お客様のときなどは小さなお盆に並べて、好きなものを選んでもらうようにして小料理屋の女将気分を楽しんでいる。

 

*次回は10月14日(月)更新予定です。

 

『arikoの食卓』

 『arikoの食卓 -もっと食べたい-』

『arikoの黒革の便利帖』
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Written by ariko
ariko

CLASSY.、VERY、HERSなどの表紙やファッションページを担当する編集ライター。日々の食卓をポストしているInstagramが、センスあふれる美味しそうな写真と食いしん坊の心を掴む料理で話題に。現在、フォロワー数は98000人を突破。Instagram@ariko418

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