『「育ちがいい人」だけが知っていること』

『「育ちがいい人」だけが知っていること』


恐ろしいことが起きてしまいました。なんと気がつけば、この連載を1年4か月も放置してしまっていたのです。

そもそも、書く気がないわけではなかったのでした。それどころかこの連載には愛着がありますから、むしろ肯定的でやる気まんまんだったのです。ところが、来る日も来る日も“目の前にある仕事”に追いかけられているうちに、信じられないほどの時間が経過してしまったということ。

これはもう、呪いかなにかとしか思ませんね。きっとそうだ(それはないね)。

謝罪は言い訳せずにストレートに
(119ページより)

……おっと、こちらの思惑を見透かしたかのように、絶妙なタイミングで痛いところを突かれてしまいましたな。「育ちがいい人」だけが知っていること』(諏内えみ 著、ダイヤモンド社)という本に。

たまたま見つけた本書は、基本的には女性に向けて書かれたものです。しかし目を通してみれば、「うんうん、そうそう」と共感できる部分が少なくなかったんですよね。だから、ひさしぶりの寄稿となる今回は、これを取り上げてみようと思っていたわけです。

で、まずは最初の数行を書き、「ここからどうつなげていこうかなー?」と思いながら本書をパラパラとめくっていたところ、たまたま上記の119ページが目に入ってしまったというわけ。

できすぎた話ですが、真実なのですから仕方がありません。

しかも、そこからまた数ページさかのぼったりしていたら、追い打ちをかけるように「人を待たせない」(114ページより)というフレーズが。

いやはや、おっしゃるとおりでございます。果たしてこの連載を待ってくださっている暇な、いや、奇特な方などいらっしゃるのだろうかという問題もあるのですが、それはさておき「待たせない」ことはすべての基本ですからね。

またもや、背中をビシッと叩かれたような気分です。

とはいえ、いつまでもこんなことを書いていても仕方がないので、そろそろ本題に移ることにしましょう。つまり、『「育ちがいい人」だけが知っていること』について。

本書が魅力的なのは、簡潔で無駄がないからだと思います。「ふるまい」「話し方」「見た目」「暮らし」「人間関係」などなど、全9章のなかで257種もの“守るべきこと”が紹介されているのですが、ひとつひとつが数行でコンパクトにまとめられているので、要点だけがストレートに飛び込んでくるのです。

そんな構成にも潔さがあり、もちろん個々の考え方も納得できるものばかりなので、なんだか痛快。

ちなみに最も重要なポイント、すなわちこの連載で言うところの「神フレーズ」は、本書を手にとってみてすぐ、「はじめに」のなかに登場します。この部分を読んで「本当にそうだよな」と実感したからこそ、おのずと本文への関心も高まっていったような気がするのです。

それはなにか? 端的にいえば、「育ち」についての考え方です。

多くの人は、「育ち」とは自分では変えることのできない、一部の選ばれた人々だけが持てるものだと思い込んでいるのではないでしょうか?

でも著者は、「育ち」をもっとシンプルに考えているのだそうです。そして、そこに説得力があるので、今回は次の文章を「神フレーズ」としたいと思います。

「育ち」とは、その方の佇まいのこと。
所作やふるまいを、知っているかいないかだけのこと。
さらに言えば、
「知ろうとしているか、いないか」だけの差にすぎないのです。
(「はじめに」より)

これは、とても重要なことだと僕も感じます。

どれだけ身分の高い家に生まれたといっても、基本的なマナーなどを教わっていないのであれば、「育ち」がいいとは言えません。逆に、決して経済的には恵まれていない家に生まれたとしても、親からきちんとしつけられているのだとしたら、その人の振る舞いには自然と「育ち」のよさが出るものです。つまり、「育ちがいい」ということになるわけです。

当然のことながら、社会のなかで評価されるのは後者です。

テレビのバラエティ番組で大騒ぎしているような“自称セレブ”は間違いなく前者ですが、いくらお金を持っていようとも、「育ち」がいいとはとても思えません。

おそらく、著者が訴えようとしてるのもそういうことであるはず。自分の意識ひとつで、「育ち」のよさは手に入れられるということ。先天的なものではなく、自分の意識次第でどうとでもできるものだということです。

でも理由はどうあれ、連載を先延ばしにするようなことをしていたら、僕も人のことを偉そうには言えないな。これを機会に、また通常のペースに戻していこう。うん、決めたぞ。

ということで、また近日中にお会いしましょう。

 

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印南敦史:著

Written by innami atsushi
innami atsushi

印南 敦史(いんなみ・あつし)/作家・書評家・ライター 1962年生まれ。東京都出身。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。現在は、「ライフハッカー[日本版]」「マイナビニュース」 「ニューズウィーク日本版」「Suzie」など多くのメディアで連載。最新刊『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社刊)がベストセラー記録更新中。FMおだわら78.7Mhzで 毎週日曜日20:30~21:00(再放送:金曜22:30~23:00)、ラジオ番組「印南敦史のキキミミ図書館」のパーソナリティも。http://book-radio.net

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