「お正月」みたいなイタリアのクリスマス

「お正月」みたいなイタリアのクリスマス



イタリア在住のイラストレーター・マンガ家のワダシノブさんが、
イタリアの暮らし・文化・人などの情報をお届け!
今回は、イタリアのクリスマスについて。



(イラスト:ワダシノブ)

イタリアのクリスマスは日本のお正月に近い。帰省して家族でおだやかに過ごす、楽しみだけどちょっとだけ退屈で面倒なイベントなのだ。日本で多くの人がイメージする“ロマンチックな恋人たちのクリスマス”はここにはない。

「家族で過ごすのが良いクリスマス」という風潮があり、これも日本のお正月っぽいところだと思う(今はだいぶ薄れてきているけれど……)。
家族間に問題を抱えている人や、事情があって家に帰れない人、1人でいるのが好きな人にとっては、「どうして帰らないの?」と聞かれるのが憂鬱な季節でもある。

イタリアではどんなに遠くに住んでいても、12月25日には家族が集ってクリスマスランチを食べなくてはいけない。だからクリスマスは高速道路も渋滞するし、飛行機や電車のチケットも取りにくい。鮭が川を遡って生まれた場所に戻るように、クリスマスのイタリア人も家に帰るのだ。

私にとって、イタリアのクリスマスは24〜26日まで3日間続く食事マラソンのようなものだ。
クリスマスになると、夫の家族が集まる夫の実家へ行く。実家に着くと、まず何を食べるかを話しあう。ムール貝がいいかホタテにするか。「毎年毎年、よくそんなにメニューについて語れることがあるな」と思うけれど、彼らにとってこれは真剣な話し合いなのだ。

メニューが決まると買い出しへ。そして、料理ができたらテーブルに赤いテーブルクロスを敷いて、中央にクリスマスキャンドルを飾り、皿やワイングラスを並べる。まるで映画にでてくるような食卓を用意する。
夫の実家の食卓は決して豪華ではないけれど、この日ばかりは普段はあまり使わないきれいなお皿を使って食事をする。クリスマスの食事を特別なものにしようと、家族全員で盛り上げるのだ。食卓は頑張るのに、服は普段着のジャージだったりするのがなんだかアンバランスだけど。

まずは24日のクリスマスイブのディナーから始まる。この日はまだキリストが生まれる前だから魚介のメニューを食べる。前菜、プリモ(パスタ・スープ・リゾットなど)、セコンド(魚料理または肉料理)、ドルチェのフルコースだ。
そして25日はクリスマスランチを楽しむ。この日はキリストが生まれた後だから、肉がメインのフルコース。そして26日は残り物を片付ける。
食事の合間には、ストゥルッフォリ(揚げた小麦粉のお菓子に蜂蜜をかけたもの)やパネトーネなどのクリスマスのドルチェ、スパークリングワインをいただく。

前菜といっても揚げたピザやコロッケなどで、軽い食べものはサラダくらいしかない。これらを本当にずっと食べ続ける。食べすぎて眠くなるなんて経験を初めてしたのも、イタリアのクリスマスだった。1週間で体重が2kgは増えるからすごい。
ちなみに、イタリアは「嫁」という概念がない国なので料理を手伝う必要はなく、私は食べるだけでいい。

毎年クリスマス前は「今年こそは食べすぎないようにしよう」と決意しているのに、家族ととりとめのないことを話しているうちに、気づいたら食べすぎて終わっている。
これが私にとってのイタリアのクリスマスだ。特別な日だけど、特別なことが起こらないところが、やっぱりお正月みたいだなと思う。

Written by wadashinobu
ワダシノブ

イラストレーター・マンガ家。広島県生まれ、イタリアのトリノ在住。
日本で出会ったイタリア人パートナーの帰国に付いて、2007年からイタリア生活を始める。
イラストのほか、noteやPodcastでイタリア生活や趣味について発信している。
Twitter @shinoburun
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