【INTERVIEW】「東映ムビ×ステ」第5弾となる作品『仁義なき幕末』で桂小五郎を演じている岡宏明。熱量のある現場での様子や、役と向き合っていく中で感じていることなど、たっぷりと語ってもらった。

【INTERVIEW】「東映ムビ×ステ」第5弾となる作品『仁義なき幕末』で桂小五郎を演じている岡宏明。熱量のある現場での様子や、役と向き合っていく中で感じていることなど、たっぷりと語ってもらった。


俳優・モデルとして活動を行なっている岡宏明。3月に公開された映画『仁義なき幕末 -龍馬死闘篇-』​に続き、舞台『仁義なき幕末 -令和激闘篇-』で桂小五郎を演じている。令和の京都を舞台に、命を張って戦う男たちの物語が描かれている本作。東京公演の一週間前、稽古真っ只中というタイミングで取材を敢行し、久しぶりとなる舞台に挑む今の心境を聞いた。

撮影/浦田大作 文/太刀川梨々花

――まずは、映画と演劇のメディアミックスという「東映ムビ×ステ」シリーズの出演が決まった時の率直な感想を教えて下さい。

「率直に嬉しかったですね。『仮面ライダーセイバー』の頃から脚本でお世話になっていた、毛利(亘宏)さんからお声がけを頂いたので、仮面ライダーで演じていた時のお芝居を評価して下さったのかなと思いました。実は、そんな毛利さんと初めてお会いしたのは、『仁義なき幕末』の舞台挨拶の時だったんです。実際にお会いすると凄く物腰の柔らかい方なんだなという印象を受けました」

――今、絶賛稽古中とのことですが、どんな形で稽古が進んでいますか?

「通し稽古は終わって、ある程度の流れは出来てきているのですが、まだまだキャラクターの表現の仕方やアプローチの仕方をどんどん変えていく段階にいます。もちろん物語が面白いので完成前でもすでに見応えがありますが、これからもっと変化していくのだと思います」

――キャストやスタッフのみなさんと話し合いながら稽古をしているのでしょうか?

「そうですね。その場で話して台本が変わったりしますし、今回の座組はみなさん話し合いながら色々試しているように見えます。僕が以前、脚本家であり演出家の座長・横内(謙介)さんが主催する劇団扉座に出ていた時は、役者が脚本に変更を加えることがほとんどありませんでした。今回は『こういう風に変えてみると表現しやすくなるかなと思うんですけど、試してみていいですか?』という風に、ディスカッションをする場面が多く見られて、それもまた僕にとっては新しい刺激です。表現をよりよくしようと脚本についての相談の場が開かれるたびに勉強させてもらっています」

――岡さんから提案した部分はありますか?

「映画『仁義なき幕末 -龍馬死闘篇-』で演じた桂小五郎を、舞台ではどうやってもっていくのか、毎回色々考えながら変えてみせてはいます」

――色々なパターンをもっていって、演じてみて、どれがはまるか探っていくイメージですか?

「まずはこういう感じでやってみるかってことをある程度自分の中でイメージしました。その先は自分一人で出来ることじゃないですし、一緒に演じて下さる方がどういった芝居をするかでももちろん変わってきますので、その場で何を感じるのかを大事にしようとしていて、その変化にどう適応するかが難しいです。なので、新しいことにどんどんチャレンジしてみて、パターンを変えながらブラッシュアップしていきます。あとは今回の作品だと、男性キャストの中で僕が一番年下になるので、経験豊富な先輩方に色々と相談しています。感情的なキャラクター作り以外でも、舞台上ではこういう風にしたほうがよく見えるとか技術的なアドバイスも頂けるので、勉強することがいっぱいです」

――かなりディスカッションが出来る現場なんですね。

「はい。結構たっぷりと稽古期間をとって作っているのですが、舞台で主演の和田(琢磨)さんや映画で主演の(松田)凌さんとか、凄く熱くて真面目な姿勢が伝わってきます。お二人の絡みも情熱的だし、組自体の雰囲気もパッションがある、楽しい現場です」

――桂小五郎を演じるにあたって、具体的にどう役を膨らませていきましたか?

「これが凄く難しいです。『仁義なき幕末』の中での桂小五郎は歴史上の桂小五郎とは違う描かれ方をしてるので、歴史文献をそのまま参考にすることは出来ないじゃないですか。なので、バックグラウンドとして何がしたいか、何を考えているか、そこを自分がどう表現するかが大事だと思っています。歴史上の事実や背景、行なった行動とかよりも、その場面場面、作品内での桂小五郎をどう成立させるかというところにフォーカスしました。桂小五郎本人である必要はないというか、僕が演じることに意味があると思いたいし、そう思って頂けるように表現したいので、一旦勉強したことは忘れて表現に集中しました」

――では実際に稽古で演じてみて感じたことは?

「幕末から西郷隆盛、木戸孝允は、ライバルでもあり仲間でもある。だから西郷隆盛を演じられた本宮(泰風)さんに負けないような振る舞いであったり、居方じゃないと成立しないと思うんです。映画でも、どうやって対等に見せるか考えましたが、舞台では更に練り直しています。作品の中で桂小五郎が桂小五郎らしくあり、リアリティーがあるように表現することが出来るか、苦心しながら色々探ってやっています」

――映画を拝見し、更に今回お話を伺っていると、岡さんはもちろん役者陣のエネルギーが伝わってきます。舞台になると生モノになり、また一個プラスして観ている方が受け取れるモノも多いのかなと思いますが、すでに稽古の現場でエネルギッシュな部分が感じられるんですね。

「そうですね。みんな凄いです。殺陣とかも本当に尋常じゃない量です。特に沖田総司を演じている(本田)礼生君の殺陣は異次元です(笑)。一対五の殺陣があるんですよ。見えないところからも切りかかってくるのに対して後ろ手で止めたりするんですよね。そのタイミングも凄いです。現場を見て頂いたら分かるのですが、今の段階でもかなりエネルギーのある熱い現場なので、僕自身も本番がますます楽しみです」

――一個タイミングを間違えたら怪我をしたり、リズムが崩れてしまいそうですね。

「怪我をしないようにと無駄に不安になる必要はないのですが、とにかく他の方々のレベルが凄く高いので、そのレベルについていけるように日々トレーニングをしていますね」

――殺陣は『仮面ライダー』でも経験されていますね。

「劇団扉座と『仮面ライダーセイバー』で殺陣をやっていて、ライダーの時は高岩(成二)さんのところで学ばせて頂いていました。でもそれから期間が空いているし、久しぶりの殺陣はやっぱり大変でした」

――先程、劇団扉座のお話も出ましたが、岡さんはどういったきっかけでこの世界に飛び込まれたんですか?

「今の事務所にスカウトして頂きました。当時は高校生で、俳優をやるかモデルをやるかも決まっていなくて、とりあえず大学受験をして。明治大学に入学したと同時に上京してきて、扉座に入りました。厳しいと噂される劇団で演技の実力をつけたかったのですが…稽古は本当に厳しかったです(笑)」

――そこでは演技のレッスンをずっとやっていたんですか?

「お芝居だけでなく、ダンスや、殺陣、日舞など色々やりました」

――厳しい中にも楽しさや、このお仕事を続けたいと思える瞬間はありましたか。

「そうですね。自分に向いていると思いました。誰かと一緒に何かを作っていくことが好きですし、たまたま出会ったのがお芝居だったので、今でもそれが続いています」

――舞台にはどういった印象をもっていますか? 映像とはまた全然違うものだと思うのですが。

「稽古はもちろん大変ですけど、楽しいですよ。例えるならば、映像でのお芝居は、ジャズのセッションのようで、各々もっている技術や準備してきたものがその場の即興で混ざり合う感じです。一方舞台でのお芝居は、オーケストラの演奏のような感じで、みんなで練習して積み上げて一つの作品にする。それぞれの役やお芝居に向き合って、みんなで合わせながら時間をかけて準備出来るのが舞台の良いところだと思いますね」

――演じる上でも意識する部分が違いますよね。映像だと目線や細かな部分であったり。

「特に映像の時は、画角がどれくらい寄っていて、どういう角度で撮っているのかとかが僕は気になります」

 ――舞台だと演技の大きさを変えたり、声量も大事になってくるのかなと思うのですが、そういう部分の意識はいかがですか?

「僕は小劇場でずっとやっていて、劇団扉座ではキャパが大きくても400人ぐらいだったので、マイクもつけていませんでした。なので、マイクをつける舞台は今回が初めてで、声量は探りつつになるかなと思います。ゲネや場当たりでどんな風になるのかチェックしつつですけど、一旦出せるだけ出していきます。声を張ると、それだけで感情が上がってくるのですが、キャラクターを崩さない程度に声を大きくしてみたり、コントロールしながら試している段階です」

――では、映画を観て、更に舞台を楽しみにされているファンの方々が沢山いると思いますが、舞台ではこういうところを見て欲しいというみどころを教えて下さい。

「生き様ですかね。幕末からきた人間と現代に戻ってきた大友と、それを取り巻く環境。なんの為に戦って、なんの為に死ぬか、というのが凄く大きく描かれているテーマのひとつだと思います。なので、みんな何かを残して死んでいく、散り際の輝きがあると思うんですよ。そこに辿り着くまでの道筋を描いた物語なので、散り際までの生き様やエネルギーを是非見てほしいです」

――普段の日常で、生と死に直面することがなかなかないので、それを体現出来るのが幕末の作品のよさだったりするのかなと感じました。それが、映画から舞台に繋がっている本作が凄く楽しみですね。

「そうですね、感動するんじゃないかな。特に幕末で生きていた人についての歴史に詳しくない人も分かりやすいように描かれているので、感じとりやすい部分があると思います。幕末だけでなく、主演の大友は現代で生きていた人なので、現代の人が抱えているコンプレックスじゃないけど、心の中で納得出来ない、飲み込めない部分も凄く描かれています。現代の人が主軸となって、幕末の人と関わりながら自分を見つけていくという物語の中で、大友が最後に何を思うのか。そこに共感出来る方も多いと思うので、誰でも楽しんで頂ける、そして舞台独特の派手さも含めて本当に楽しいので、是非観て頂きたいです」

 ●プロフィール
岡宏明/おか・ひろあき
1998年11月19日生まれ、山梨県出身。俳優・モデルとして活動。仮面ライダーシリーズに出演。そして、劇団扉座の舞台にも多数出演している。近年の出演作にドラマ『ショジョ恋。』『全ラ飯』、映画『ネメシス 黄金螺旋の謎』『仁義なき幕末 -龍馬死闘篇-』など。


 ●作品紹介
舞台『仁義なき幕末 -令和激闘篇-』
作・演出/毛利亘宏(少年社中)
出演/和田琢磨 松田凌 水谷果穂 石黒英雄 本田礼生 小野健斗 木津つばさ 吉田メタル 荒川ちか 岡宏明 柏木佑介 赤澤燈 鈴木勝吾

タイムスリップした幕末からひとり令和に舞い戻った大友一平(和田琢磨)を待っていたのは、様変わりした京都の勢力図だった。更に蘭月童子(荒川ちか)が現れたことにより、令和の世に坂本龍馬(松田凌)がやってきたのだった。土方歳三(石黒英雄)、沖田総司(本田礼生)、原田左之助(小野健斗)ら新選組に加え、中岡慎太郎(赤澤燈)、桂小五郎(岡宏明)らも令和にタイムスリップ。ヤクザたちの抗争に幕末の志士たちが参戦することとなる。令和の京都を舞台に、幕末の争乱のような戦いと野望が繰り広げられる抗争の末に待ち受けているものとは…。

【東京】サンシャイン劇場 4月27日~5月7日
【大阪】梅田芸術劇場シアタードラマシティ 5月18日~5月21日

ムビステHP:http://toei-movie-st.com/jinbaku
舞台HP:http://toei-movie-st.com/jinbaku/stage/