【新連載】優雅で美しい台湾茶、難しいことなしにおいしく楽しめたら。台湾在住コーディネーター・青木由香のゆるい台湾の茶のお話。
優美でおいしい台湾茶。
淹れ方やお作法のハードルが高そうだけど、実は自由に楽しめるもの。好きなところをつまみながら自分の茶道を探す、台湾在住コーディネーター・青木由香さんのお茶ごとエッセイ。
はじめまして。
台湾のいいところ、台湾のいいものを紹介することが生業で、台湾に住んでいます。
台湾なんでも屋な感じで20年以上。昨年、お茶のブランド「香香台湾」を立ち上げました。
茶渋だらけの茶碗でじゃぶじゃぶ飲む台湾のおじいちゃんたちのお茶。きっちりしつらえた茶道のお茶。その中間の、いいとこ取りのお茶の道を探しつつ、この連載を書いていきます。毎回おまけに「今日の一杯」と称してお茶の紹介も。まずは、1回目。私が台湾茶になぜハマったか、そんなお話です。
活気があって愛嬌がある台湾の街は、パワーをもらえるけど吸い取られもする。
20数年前の初台湾。初めて入った茶芸館が外の世界と真逆過ぎて、台湾のお茶の世界にやられました。これが、私の台湾茶の道の始まり。
お茶の世界に入ると、ガヤガヤ製造マシーンとも言える賑やかな台湾人が、小声で、というかほぼ話さず、ゆっくりと丁寧にお茶を淹れている。
聞こえてくるのは蟻や蚊に聞かせるつもりかと思われる音量の古琴(グーチン)のCDと、湯を注ぐ音。乾いた茶葉の香り、温めた茶器の中の茶葉の香り、あったかいお茶の立ちのぼる湯気の香り、湯を含んだ茶葉の香り、お茶を飲み干した茶杯の香り。あらゆる角度から茶の香りを何度も吸い、アロマがどうのなんて言い出す前の時代に香りが心地良くさせることを知った。
台湾に来たばかりの2000年代頭、台湾の若者は、お茶は年寄りのものといった扱いで、目もくれず。そんな頃、一見さんお断り風の文化サロン的なお茶屋に私のような30歳前後(当時)の外国人が迷い込む。
迷い込んでもヒゲの仙人(みたいな茶人)はウエルカム状態。高価なお茶を価値もわからない外国人に淹れてくれて、お茶屋の外の台湾の素敵なところまで惜しみなく見せてくれた。お茶を取り巻くすべてがカッコイイ台湾文化の宝庫だった。
お茶を通して台湾の細やかで叙情的な部分にも触れると、街のバイクが、市場の活気が、より個性を増し、より魅力的に。台湾の見え方がお茶に触れたことでまたガラリと変わっていった。
台湾茶は、日本の茶道と違ってだいぶ気楽に楽しめるもの。作法を知らずとも、茶会に参加できてしまう。お茶をいただく側に堅苦しい作法はほぼない。静かに茶を愛で五感で味わう、それっぽい動作を周りのマネでやれば良い。
茶席のしつらえも、絶対というものがなくて、実はかなり自由で楽しい。美味しく淹れるテクニックも、ぶっちゃけ台湾茶の底力なら適当にやっても美味しいし。茶器を買ってどっぷりハマって楽しんでもいいし、気軽なスタイルで日常的に飲むのでも、どの飲み方でも台湾茶を知らないのはもったいないなぁと思うのです。
今日の一杯。
烏龍茶の水出し。お湯じゃなくて、水に浸して時間をかけてお茶を出す水出し茶は、誰が淹れてもスーパー美味しく入るので泣けてくる。500mlのペットボトルに茶葉5g。大体、茶葉1g:水100mlの割合で、約8〜10時間冷蔵庫へ。約一晩で出来上がり。
お茶は、温度が低い水で淹れるとタンニンやカフェインが抽出されにくいので、渋みや苦味がない。お茶の甘さや香りといった、みんなが大好きなところを良いとこ取りに淹れられる。茶器も道具も要りません。爽やかな高山茶でも、発酵度の高いお茶でもなんでも水出しは試す価値あり。夏の暑い日に夢のような味わいです。
*次回は9月2日(月)に公開予定です。
\青木さんのお店もチェック!/
『你好我好(ニーハオウォーハオ)』
https://www.nihaowohao.net/
日本から購入できるオンラインストアも!
https://nihaowohaostore.com/
\好評発売中!/
『暮らしの図鑑 台湾の日々』
著:青木由香
発行:翔泳社