【INTERVIEW】幸せな家族に訪れる恐怖…ホラー映画『サユリ』が8月23日に公開。初めてホラー作品に挑んだ南出凌嘉に話を聞いた。

【INTERVIEW】幸せな家族に訪れる恐怖…ホラー映画『サユリ』が8月23日に公開。初めてホラー作品に挑んだ南出凌嘉に話を聞いた。


 

押切蓮介原作で、白石晃士が監督を務めた映画『サユリ』が、8月23日に公開を迎える。
夢のマイホームへと引っ越した家族が不可解な現象に襲われる姿を描く本作。“サユリ”というこの家に住み着いた少女の霊に対抗していく、一家の長男・則雄を演じたのは、ホラー映画初出演で主演を務めた南出凌嘉。ドラマ『ウロボロス-この愛こそ、正義。』では生田斗真演じるイクオの幼少期を、『姉ちゃんの恋人』で有村架純演じる主人公の弟役を演じ話題に。本作では、「則雄とリンクする部分があった」と話す一方で、「観客も巻き込んで“怖がる”ためにどうしたらいいか悩んだ」と言う彼にたっぷりと作品について語ってもらった。

撮影/浦田大作 スタイリスト/岡本健太郎 ヘアメイク/亀田雅 文/浅川美咲

——『サユリ』の出演が決まった時はどんなお気持ちでしたか。

「とにかく嬉しかったです。どんな役でも選んで頂いた時は凄く嬉しい気持ちでいっぱいで。その次にやりきれるかな、出来るかな? って不安がきて…という繰り返しで、でも頑張らなきゃなって、奮い立たせています」

——本作はオーディションだったそうですね。

「原作を読んで、作品のテイストを理解して、則雄にちょっとリンクするところがあるなと思ったんです。気合を入れて臨みました」

——リンクする部分は、どんなところですか?

「のらりくらりじゃないですけど、受け流すのが上手でなるべく平穏にというところです。上手くことが進めばいいなってほんわか思っているような男の子だったり。あと、ちょっとおとなしかったり。ビジュアルも僕に似ているところがあるなと思いました」

——ホラー作品には初出演となりましたが、これまでとお芝居の仕方も違いがありそうですね。

「それはもう本当に痛感したところです。今回現場に入って、演じ方をちょっとずつ探していく中で、自分が怖がるだけじゃなく、観客も巻き込んで同じように怖がってもらうためにはどうしたらいいんだろうというところに悩んでいました」

——それはどう解決していったんですか。

「とにかく一旦、全力で怖がってみて。あとは、サユリに対してあまりかわいそうという気持ちが出ないように。家族がおばけに殺されたとしたら、なんで殺されたのかわからない、なんでこんなことになったのかもわからない、そのわからない理不尽さや、次殺されるのは俺かもっていう怖さがあります。サユリのことを理解して、かわいそうだと思ってしまうと、その怖さが曖昧になってしまうと思うんです。理解して納得するよりも、次どうなるかわからないってことがホラーにとっては大事なんじゃないかなって思って」
——ホラー映画特有の“怖さ”という部分で今回感じたことはありますか?

「『サユリ』は前半と後半で“怖さのテイスト”が変わっていくのが特徴だと思います。最初はザ・Jホラーのような何が来るかわからない怖さ。後半はサユリのことを理解していって、返り討ちにあうかもしれないという理解した上での怖さ。見えない敵に対しての怖さと、見えている敵に対しての怖さ、2種類の怖さがあるなと思いました」

——サユリの背景を知ると、怖いだけじゃない感情もわいてしまいますよね。

「友達とワイワイしながらホラー映画を観るのが好きで。でも“怖かったね”という気持ちだけ盛り上がって、作品が置き去りにされちゃっているなと感じる部分もあったんです。でも、『サユリ』はこういう経験があった家族が、これからどうなっていくんだろうって考えさせてくれるので、まとまりがあるなと思いました。最後のシーンも大好きです」

——脚本を読んだ時はどんな印象でしたか?

「正直言って、結構ハチャメチャだなって思いました。太極拳と下ネタの決めゼリフで、正体もわからない凶悪な敵を倒しちゃう訳ですから」

——監督と作品についてお話しされたことは?

「主に役のことについてですが、たくさんお話させて頂きました。一番印象に残っているのは、最初にお話ししたことなんですが、則雄は、昔から太極拳の才能があって。太極拳って相手の力を止めるんじゃなくて、受け流して返す、周りの気の流れとか、そういう巡りみたいなものが大事なんです。則雄はさっき言ったように、のらりくらりしていたり、家族の話し合いがあった時はうまく回ることを大事にしていて。太極拳が得意なのは、こういう理由があってっていうことをお話しして頂いて、全てに理由があるんだなと思いました。この話が、役作りの中で迷った時に、助けになったと思います」

——南出さんは元々、空手の経験があったそうですね。

「『映画 妖怪ウォッチ 空飛ぶクジラとダブル世界の大冒険だニャン!』で映画初主演をやらせて頂いた時に、フィジカルを鍛えるのがこれからの課題だなと思って、空手が出来るところに行って。小学5年生から中学1年の秋ぐらいまでやっていました」

——今回、太極拳も結構準備をされたそうですね?

「ちょっと前からレッスンをして、でも空手と全然違うし、むしろ真逆でした。打つ、受けるっていうのが空手なんです。体重移動とか通ずるところはあったので、助けられたところもありながら、苦戦したところもあります」

——ホラー作品の現場はどんな印象でしたか?

「撮影場所となるお家に着いて、うわあ、変わった家だと思いました」

——なにか感じましたか…?

「なにかあるとかじゃなくて、山の中にある不思議なお家で。坂道の途中にあって、2階から入るんですよ。家に入ったら最初に吹き抜けがあって。でも僕は、変わったお家だなと思いながら、あんまり怖いなとか思わず、むしろなんかちょっとこんなにおしゃれなところ、住んでみたいなって考えてたりして」

——確かにあまり見ないような内装ですよね。映画を観ていても奇妙さは伝わってきました。

「結構不思議なところで、お家の周りも人があんまりいない感じで。森が鳴るじゃないですけど、夜は真っ暗で、木の音とかざわざわする感じでしたね。近くのところのホテルをお借りして、約3週間僕はずっといたんです。ある時、夜中にお腹が空いて目が覚めて、コンビニまで行こうと思い、真っ暗の山道をスマホのライトで照らしながら歩いて。着いたらコンビニが閉まっていたので、ただ怖い思いをして行って帰ってきただけの人になっちゃった(笑)。暗いところを歩いたのは一番怖かったです」

——南出さんは多くの作品に出演されていますが、今回ホラー作品に初出演して、新たにお芝居について考えたことはありますか?

「先程話した、観客を巻き込んで同じように怖がってもらうというのもそうなんですけど、作品の意図としてこう見てもらいたい、こう見てもらわなきゃっていう気持ちは僕の中で今まで足りなかったと思います。その意識が一番勉強となり、次の課題だなと思います」

——完成作を観た時はどういうお気持ちでしたか?

「自分の芝居を見ると、反省や後悔ばかり浮かんできて、あまりフラットに自分の作品を見られたことが少ないんです。でも普段の自分の作品を見る時と違って、純粋に怖がれたと思います。怖いのと、さっき言ったようにまとまりがあって、凄く感動して。ちょっと不思議な気持ちになりましたね。なんか感情のジェットコースターじゃないですけど、もうずっとグワングワン、白石監督に引っ張られ、振り回されているような感覚になりました」

——監督のコメントに“応援上映があってもいいかも”とあって、本当にそういう作品だなと思いました。

「そうですね(笑)。あってもいいかもしれないですね。わあー! って声出して。みんなで決めゼリフを言ってもらって(笑)」

——南出さんご自身のお話もお伺いしたいです。役者を始めた経緯は?

「元々、母が服が大好きで、僕と弟に色んな子供服を着させるうちにモデルをやるようになりました。僕も2~3歳ぐらいの幼いながらに、みんな笑っているし楽しくて。でも僕がその現場で落ち着きがなくて、厳しく叱ってくれる人が必要だなと母親が思ったらしくて。劇団や芸能界って厳しそうだしということで、事務所に入ることになりました。そこからオーディションを受けることになり、受けた役は落ちてしまったのですが、別の役で出演させて頂いたところ、その現場で僕がドハマりして。そこからはもう僕がやりたいやりたい! という感じでした。でもその時は、演じる楽しさとかは全然なくて、現場に行って、見たことない機材とか、かっこいいカメラやマイクとかへの興味が凄くて、そういうのにワクワクしていたと思います。小さい子達が、ヒーローや戦隊に憧れる感じで俳優に憧れ、今子供のころの夢をずっと追っている感覚です」

——自分の中で役者として心境が変わった作品はありますか?

「それまでは、現場に普段見られないものを見に行く興味みたいなもので行ってたんです。でも役者ってかっこいいなと思ったのが、小学3年生の時に撮影した『ウロボロス』という作品です。ほとんどレギュラーのような形で出演させてもらって。その時に、僕の大人時代を演じていた生田斗真さんの役づくりの姿勢に、役者ってこんなにかっこいいんだって思って。そのころから明確に役者に憧れを抱いていました」

——今、お芝居をしていて楽しいと思う時はどんな時ですか?

「“今、自分じゃなかったな”と思う時ですかね。家に帰って一息ついて、“今日よかったな、なんか今日うまく出来たな”という日があって。完全に役になれた、もう1回あの感覚を味わいたいなって。やみつきじゃないですけど、僕じゃない何者かになれた感覚が凄く好きで、その感覚を求めてずっと演技しています」

——最後に、映画『サユリ』の見どころをお願いします。

「『サユリ』は今までのJホラーを変えるような、前衛的で、挑戦的な作品だと思います。僕らも作品を観終わったあと、なんか変な感覚ですねって感想が多くて、今までのホラーにはない、新しい魅力がある作品になりました」

 


●プロフィール
みなみで・りょうか
2005年8月10日生まれ、大阪府出身。12 年、NHK 連続テレビ小説『純と愛』でデビュー。16 年には映画『妖怪ウォッチ 空飛ぶクジラとダブル世界の大冒険だニャン!』で映画作品初主演を飾る。主な出演作としてドラマ『ウロボロス-この愛こそ、正義。』『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』『落語元禄落語心中』『姉ちゃんの恋人』『やさしい猫』、映画『青夏きみに恋した30日』『キングダム』『ザ・ファブル』『糸』などがある。


●作品紹介










『サユリ』
原作/押切蓮介
監督/白石晃士
脚本/安里麻里 白石晃士
出演/南出凌嘉 近藤華 
梶原善 占部房子 きたろう 森田想 猪股怜生 
根岸季衣
配給/ショウゲート

夢の一戸建てマイホームに引っ越してきた神木家。家族7人、幸せに暮らしていくはずだったが、どこからか聞こえる奇怪な笑い声とともに家族がひとりずつ死んでいく…。霊の正体はこの家に住み着くサユリ。一家の長男である則雄(南出凌嘉)は、どのように立ち向かっていくのか…。
https://sayuri-movie.jp/
8月23日公開

©2024「サユリ」製作委員会/押切蓮介/幻冬舎コミックス