
【INTERVIEW】1月24日に公開が迫る、ホラー映画『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』で、霊感のある男を演じた平井亜門。念願のホラー作品初出演で、役者として得たこととは?
「第2回日本ホラー映画大賞」の大賞受賞作を長編映画化した近藤亮太監督の『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』が1月24日に公開。総合プロデューサーには『呪怨』シリーズを手掛けた清水崇を迎え、Jホラー好き待望の“新次元Jホラー”が誕生した。
失踪してしまった弟がいる過去を持つ主人公・兒玉敬太(杉田雷麟)の同居人・天野司を演じた平井亜門にインタビューを敢行。ホラーが好きで、普段からホラーに触れている彼が、今回演じるのは霊感を持つ役柄。どのように体現していったのか、話を聞いた。
撮影/浦田大作 ヘアメイク/佐々木麻里子 文/浅川美咲
——ホラー映画初出演となりますが、『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』のオファーを受けた時の率直な感想はいかがでしたか。
「凄く嬉しかったです。元々、怖い話みたいなものが凄く好きで、普段から家で家事をしたりしながら、ラジオみたいにYouTubeで怖い話とかを流したりして。ホラー系のお仕事は出来たらいいなと思っていたので、“やった、ついに来た!”という感じでした」
——ホラーのどんなところが好きですか。
「いわゆる超常現象みたいなものって、本当なのか嘘なのか半信半疑なところもあって。でも本当にあったとしたら面白いなという、そういうワクワク感です」
——脚本を読んだ印象を教えて下さい。
「ホラー作品ではあるんですけど、派手な演技をするとかそういうことではなく、僕は俳優として生っぽい演技が出来たら、より『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』が描きたい怖さみたいなものが引き立つのかなと思いました。日本的なホラーで、何か怪物が出てきてわっと驚かすというよりも、じっとりと怖さがまとわりつくようなそういう作品だったので」
——平井さんが演じた天野司は、“霊感がある”役柄です。どういうアプローチをして取り組んでいましたか。
「僕自身は全く霊感がなくて。でも見えたら面白そうだなという憧れはあるんですけど。YouTubeとかで、“こんな感覚なんだなあ”と思いながら、霊が見える人の話とかをいっぱい聞いたりしました。と言いつつも、その感覚みたいなものは、人によって感じ方が違うんですよ。視覚的に見えるのか、肌がピリッとくるみたいなものだったりとか、人それぞれなので、現場で近藤監督とお話しながら作り上げていきました」
——監督と具体的に相談したシーンは?
「例えば冒頭でビデオテープが送られてきて、それを触って映像みたいなものが出てくるシーンは、電気信号的なものが指に走るイメージでやっています。もう20年ぐらい前に、TOKIOの松岡(昌宏)さんが『サイコメトラーEIJI』という刑事ものに出演されていて。ものを触ることによって、その残留思念みたいなものが脳内に浮かんでくるような設定だったと思うんですけど、それと近い感覚かなと、監督と話しながらやりました」
——失踪事件の真相を追う新聞記者・久住美琴(森田想)と司のふたりでのシーンは、霊感がある司だからこそ、目の動きや仕草から、何か感じるものがありました。
「塾にきた女の子も実はちょっと見える設定で、その子も何か感じとっているし、久住さんと話してるところは、目には見えない何かが背後にちらついていると想像しながら、でもそれをやり過ぎないように意識しました」
——塾のシーンもそうでしたが、長回しが多い印象がありました。だからこそ引き込まれたり、ホラーのドキドキ感が高まる感じがありました。
「シーンの頭からケツまで取ったあと、色んな角度で撮っていましたが、わりと長尺で使ってるシーンが多かったですね。確かに引きで長回しが多いのは、ホラー映画として凄くいい効果になっていたと思います」
——コメントに「マジックのようなアイデア溢れる面白い撮影の連続だった」とありましたが、例えばどういったところが驚きでしたか。
「影でぼんやり目に見えないものを描く時に、うしろのほうにスクリーンを置いて、映写機みたいなものでそのスクリーンに映して、それの反射でその影がぼやっと出るように写していたり、見たことない撮り方ばかりでした」
——廃墟での撮影はいかがでしたか?
「僕はオカルトは好きなんですけど、実際に心霊現場とかに行ったりはしないんです…怖過ぎるから。もうちょっと距離を置いたところで、ホラーを楽しみたいと思うところがあって。実際に呪われたくもないし、本物を見たらとんでもなくパニクるだろうし。きっと数日間寝られなくなることが想像出来るので。懐中電灯を持って廃墟を練り歩くシーンがあって、ずっと手持ちで懐中電灯を持っているんですけど、すっごい遠くのほうにぱっとライトを照らしたら、敬太の弟の日向のマネキンがあって、マジで『うぉー!』って声をあげてしまうこともありました(笑)。“出た!”と思ってこんな雰囲気あるところで怖いなあと思いました」
——オカルトは好きだけど、怖がりではある?
「怖がりではあります。稲川淳二さんの話とかそういうのだったら全然…いや、めっちゃ怖いんですけど。頭の中で想像しながら、こうかなこうかなって考えるのは大丈夫なんですけど、本物の肉眼で見える映像で来られるとちょっと心臓が止まりそうになります」
——今回、共演した杉田さんから刺激を受けたことや印象に残っていることはありますか。
「杉田雷鱗君は年齢のわりに、凄く落ち着いている男の子だなという印象があります。あと“静の芝居”みたいなものが凄く上手い俳優さんだなと思いました。僕は逆に普段、喋っている時からボディーランゲージが出ちゃうタイプなので凄く刺激を受けましたね。動かないけど何か思わせる、それが表情なのか本当に微妙な体の揺れみたいなものなのか、凄いなあと思っていました。でも撮影日数が長くなってくると、だんだん彼自身も打ち解けてきて、なんなら撮影以外のところではずっと喋っていたかもしれないです。近藤監督とずっとしょうもない話をしていて、こんな一面もあるんだなって、かわいらしいなと思いました」
——完成作品を観た感想は?
「本当に謳っている通り、20年代初頭とか90年代後半とかの古きよきJホラーが帰って来たなという感じで、きっとその時代の日本のホラー映画が好きな人が喜んでくれる映画になったのではないのかなと思いました」
——ビデオテープの質感とホラーってこんなにも合うんだなと思いました。
「ビデオテープって最近では全然見ないですからね。レンタル屋とかで置いてあったのも、僕が小学生のころまでじゃないかな。もう懐かしいですね。鮮明過ぎず、ノイズが乗っかるからこそ雰囲気が出ますよね」
——今回初めてのホラー作品を経験してみて、役者として得たこと、知識が増えたことはありますか?
「僕が怖がるお芝居をするシーンがあるんです。“うわっ!”って驚いて、崩れ落ちて、結構情けない声をあげる芝居をはじめにやってみたのですが、監督から『もうちょっと抑えてみよう』と言われまして。怖がり過ぎて声が出ないみたいなイメージでやってみようと。感情がかなり動くシーンですし、わかりやすくやろうと思ったんですけど、監督的にはそうではなくみたいなことで。先程、雷鱗君の“静の芝居”みたいな話をしましたが、そういう繊細な芝居の難しさみたいなものには、改めて気づけたなと思います」
——驚き方、怖がり方のバリエーションって幅広いですよね。
「驚き方が凄く大きいホラー映画もあるし、両方ありますもんね。今回、監督が求めていたものは静かなほうでした」
——次またホラー作品に挑戦する時は、もっと声を出して驚くような演技も?
「どっちも出来たほうがいいですよね。どっちを求められても常に対応出来るようにいたいなと思います」
——ではまたホラー作品に出演したいと思いますか?
「やりたいです。バラエティ番組とかでもあるような、心霊現場に行ってみました! みたいな作品もやってみたいです」
——平井さんが俳優として活動を始めた経緯も教えて下さい。
「元々は歌ったりするのが好きで、そういうことが出来たらいいなと思って今の事務所の門を叩きました。今もまだまだですが、最初はよちよち歩きというか、稚拙なものなので。そんな時に、マネージャーさんに、『俳優やってみたら?』と声をかけてもらいました。でも、はじめは自分の気持ちが前のめりの状態ではなかったので、オーディションも受からなかったし、かなり苦戦しましたね。面白くしようというよりも、どうしたら怒られないのかなとか、始めたばかりのころはそんな低いところでやっていたと思います」
——その気持ちが切り替わったきっかけは?
「オーディションにも受からない、仕事が繋がらない、当時多分 22、23歳だったと思うんですけど、その不甲斐なさみたいなところがあったのかなあ。長い期間、何にもならなかったので、もうちょっと頑張りたいという気持ちに、徐々になっていきました」
——今、お芝居のやりがいを感じる部分はどんなところですか?
「最近は、カットがかかった時に、監督が凄く満足そうな顔をしていたり、監督以外にもスタッフさんとかが笑っていたりとか、そういう時に一番やりがいを感じるかもしれないです。現場の方々の意見って、やっぱり忖度ない意見だと思うので」
——今後挑戦してみたい役柄はありますか?
「今回の司君は自分的にわりと楽しかったんです。自分の普段のイメージ的なところで、元気な男の子の役を頂くことが多いのですが、今回の司君は落ち着いていて、凄く楽しかった。なので、また静かな男の子も演じたいです。あと最近(取材は10月に敢行)、大幅に髪の毛を短くしまして、なかなかスポーティーな感じになっているので、ヤンキー的な役や、ちょっと怖い役とかもやれたら楽しそうだなと思います」
——普段はどういった作品を観るのが好きですか。
「エンタメ色の強い作品はそんなに観ないかもしれません。最近観直した作品は、『ファイト・クラブ』や、 最近初めて観た作品は『羊たちの沈黙』です。作り手のインテリジェンスみたいなものが観える作品が凄く好きですね。その時だけの一過性というよりも何十年時間経っても、観る人の世代が変わってもずっと愛されるような」
——そういう作品を観る時は、役者としての目線で観ますか?
「ただ楽しんで観ています。そういう映画って1回目普通に観て楽しめて、2回目以降は、流し見みたいに、ずっとラジオみたいにつけていて、その音声が流れてくるだけでも結構気持ちいいんですよ」
——では最後に、『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』の見どころをお願いします。
「やっぱり僕は、この映画を観て呪い的な存在が苦手だなと思いました。だって司君も敬太君も弟を探しに行っただけですからね。それがこんな理不尽に怪異にさらされて、僕は怨霊などの類を許したくないですが、オカルトを信じるあなた、『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』を是非、観に来て下さい!」
●プロフィール
ひらい・あもん
1995年9月28日生まれ、三重県出身。2017年に「Sony Music×smartモデルオーディション2017」でグランプリを受賞。19年に、『恋愛ドラマな恋がしたい シーズン3』、20年『アルプススタンドのはしの方』で注目を集める。最近の出演作に、ドラマ『ガチ恋粘着獣』『初恋不倫〜この恋を初恋と呼んでいいですか〜』など。
●作品紹介
『ミッシング・チャイルド・ビデオテープ』
監督/近藤亮太
脚本/金子鈴幸
総合プロデュース/清水崇
出演/杉田雷麟 平井亜門 森田想 ほか
配給/KADOKAWA
兒玉敬太(杉田雷麟)は幼い時に、弟の日向とかくれんぼをしていたのだが、そのまま日向は行方不明になってしまう。そんな彼のもとに、母親から古いビデオテープが送られてくる。そこには、日向が行方不明になる瞬間が収められていた。霊感のある同居人・天野司(平井亜門)は、そのビデオテープになにかを感じ、敬太に深入りしないように話すが、敬太は過去の深層を暴くために動き出してしまう。
https://mcv-movie.jp/
1月24日公開
©2024「ミッシング・チャイルド・ビデオテープ」製作委員会