【INTERVIEW】映画『【推しの子】-The Final Act-』『366日』に出演する稲垣来泉にインタビューを敢行。奇しくも同じ繊細で大切な役どころを稲垣はどのように演じたのか話を聞いた。

【INTERVIEW】映画『【推しの子】-The Final Act-』『366日』に出演する稲垣来泉にインタビューを敢行。奇しくも同じ繊細で大切な役どころを稲垣はどのように演じたのか話を聞いた。


世界中を熱狂させている『【推しの子】』が遂にドラマ&映画化となり、天童寺さりな役として出演。自身も大好きな作品と、どのように向き合ったのか。そして、1月10日公開の映画『366日』では、上白石萌歌の娘・陽葵役として出演し、登場人物たちの20年を超えた想いを繋ぐ、大切な役どころである。稲垣には、本作への想い、役作りなどお芝居について語ってもらった。

撮影/浦田大作 スタイリスト/金順華 ヘアメイク/加藤遥香 文/太刀川梨々花


――『【推しの子】』が遂にドラマ&映画実写化されるということで、出演が決まった時の気持ちはいかがでしたか?

「私は元々、原作の第1巻が発売された時から読んでいて、大好きな作品だったんです。なので、オーディションで自分がさりな役に決まった時は、さりなとして生きることができる! と嬉しく思いました。ただ、原作の中にあるさりなを、肉体として自分が映し出さないといけないプレッシャーは感じていました。慎重に役を咀嚼して、自分が思うさりなを演じられるようになれたと思います」

――さりなという役柄についてどんなことを感じましたか?

「さりなはゴロー先生の前では、明るくてチャーミングで可愛い女の子ですが、その裏にはお母さんが病院までお見舞いに来てくれない寂しさや、自由に体を動かすことが出来ない悲しさを抱えています。自分が憧れのアイドルになっている姿を何回も想像したと思います。そんなさりなの中にある葛藤や複雑な気持ちを、見て下さっているみなさんにも伝わるように表現するためには、どういう風な表現の仕方をすればいいんだろうと考えました」

――原作のある作品を演じる上で、心掛けたことは?

「原作があるということは脚本家さんが書いて下さった脚本と原作、どちらにも役柄のヒントが書かれています。情報が多いからこそ、役柄を捉えるためにさりなをたくさん研究しました」


――ゴロー先生を演じた成田凌さんとのお芝居はいかがでしたか。

「成田凌さんとは今回で3度目の共演になるのですが、いつも優しくて、たくさんお話をして下さいました」

――ちなみに、『【推しの子】』で稲垣さんが印象に残っているシーンはありますか。

「原作の最新話になるのですが、アクアをみた(有馬)かなちゃんの行動や言葉、描かれている表情に、自分も感じるものがあって涙が止まらないくらい号泣しました」

――続いて、映画『366日』のお話しも聞かせて下さい。『366日』はHYの名曲をモチーフに作られたオリジナルラブストーリー。脚本を読んだ感想はいかがでしたか?

「登場人物一人ひとりが本当に優しくて。そして、それぞれが抱える葛藤もあります。温かくて自然と涙が流れてくる作品だなと思いました」

――陽葵を演じるにあたって、心掛けたところは?

「陽葵は明るくて、お話しするのが大好きで、家族思いでいい子です。私も活発で明るい性格なので、そういう部分が似ているなと感じました。物語の中で、ある事実を知る場面があるのですが、その事実を知った時の表情や感情を繊細に演じようと心掛けました」

――監督から、こういう風に演じてほしいなど指示はありましたか。

「陽葵の元気さが伝わるように演じてみてほしいと声をかけて頂きました。あとは、琉晴(中島裕翔)とのシーンで、琉晴に会えた瞬間に気持ちが込み上げる大切なシーンでも、お芝居の方向性についてお話しがありました」

――自分で演技プランを事前にもっていったりされますか。

「私は事前に固めてから現場には行かないようにしています。台本を見るときは言い方や動きは考えずにセリフだけを覚えています。現場に入ったら役の気持ちになって、その場の雰囲気で動きたいなと思っています」

――まずは現場で動いてみて、というやり方なんですね。方言も出てきますが、どのように練習しましたか。

「朝ドラ『ちむどんどん』の時に強めの訛りで沖縄の方言を話していた経験があったので、今回はそこまで難しくなく、細かな言い回しを先生から教わりました」

――共演者のみなさんとどんなお話しをされましたか。

「上白石萌歌さんとは『ちむどんどん』の時に一緒のシーンはなかったのですが、少しお会いしていて。今回は同じ作品で共演することが出来て、『縁があるね』と上白石さんが言って下さり、嬉しかったです。齋藤潤さんとは学校のテストや勉強のことをお話ししました」


――琥太郎(齋藤潤)と陽葵のやり取りが微笑ましかったです。

「陽葵が道に迷っている時に、琥太郎が来て水を渡してくれる一連のやり取りがあるのですが、そこの動きはふたりともアドリブだったんです。今回の作品の中でアドリブをしたのはこのシーンだけでしたが、スタッフさんも自由に動いていいと仰って下さいました」

――陽葵が涙を流しているシーンもありますが、稲垣さんが泣くお芝居の時に意識されていることはありますか?

「置かれた状況の中で、役になって感情が入ると、気がついたら自然と涙が流れてきます。特に意識していることがあるとしたらお水をたくさん飲むことです」

――沖縄での撮影で思い出のエピソードがあったら教えて下さい。

「沖縄に前乗りした時に、到着がお昼前だったので、マネージャーさんとアメリカンビレッジに行きました。あとは、撮影中の昼食でケータリングを用意してくださったので、沖縄そばやアイス、飲み物のキッチンカーが来ていました。どれも美味しかったです。撮影以外でも充実した日々を過ごせました」

――稲垣さんがお芝居をしていて楽しいなと思う瞬間はどんな時ですか?

「自分じゃない誰かになれることで新たな発見があったり、役を通してこそ受け取れる感情を見つけたり出来た時が楽しいです。あとは他の共演者さんの演じ方に合わせて自分の演じ方も変わっていく、その変化が好きです」

――現在は俳優、モデルのお仕事と様々に活躍されています。今後挑戦してみたい役柄やジャンルはありますか?

「体を動かすことが好きなのでアクションが出来る役や、大好きな動物が関係している作品にも出てみたいです。今まで優しくていい子の役を頂くことが多かったので、サイコパスみたいな悪い役でギャップを出したいです。挑戦したいことが沢山あります!」

――今後の作品も楽しみですね。最後に『【推しの子】』『366日』の見どころを教えて下さい。

「『【推しの子】』はライブシーン含めて映像がとても可愛くてテンションが上がります。原作をご存知でない方も楽しめる作品となっているので是非観て頂きたいなと思います。『366日』は、登場人物全員が本当に温かくて、一人ひとりの感情や繊細さが伝わると思うので、温かい涙が流せる作品になっています。大人から子供まで、どの年齢層の方にも観て頂きたい作品です」


プロフィール
いながき・くるみ
2011年1月5日生まれ、千葉県出身。主な出演作は、ドラマ『とと姉ちゃん』『砂の塔~知りすぎた隣人』(16)、『TWO WEEKS』『スカーレット』(19)、『ちむどんどん』『オールドルーキー』(22)、映画『人間失格 太宰治と3人の女たち』(19)、『糸』(20)、『そして、バトンは渡された』 (21)、『ブルー きみは大丈夫』(24)など。24年4月よりファッション誌『nicola』(ニコラ)の専属モデルとしても活躍している。2025年NHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』、NTV系1月期ドラマ『アンサンブル』に出演決定。現在は、映画『【推しの子】-The Final Act-』公開中、映画『366日』1月10日公開。