
【INTERVIEW】Netflixシリーズ「グラスハート」でヒロインの座を射止めた宮﨑優。音と映像が融合する世界で、彼女自身のシンデレラストーリーが幕を開ける。
映画『死刑にいたる病』、映画『正体』、金曜ドラマ『ライオンの隠れ家』に出演している宮﨑優。次なる作品は現在配信中のNetflixシリーズ「グラスハート」。若木未生氏原作の不朽の名作の映像化を佐藤健が熱望し、主演・共同エグゼクティブプロデューサーを務めている。今作でヒロイン・西条朱音を演じる宮﨑に、作品や役への思いを聞いた。
撮影/浦田大作 スタイリスト/道端亜未 ヘアメイク/尾曲いずみ 文/絹村千紗
――Netflixシリーズ「グラスハート」の朱音役は、オーディションで選ばれたと聞きました。
「はい。私自身、売れない時期が3年ぐらいあって、何もなかった時期のオーディションでした。女優を辞めるか辞めないかみたいなことを考えた時期でもあったので、受かったことで芸能界に引き止められた感覚がありました」
――具体的にはどのようなオーディションだったのでしょうか。
「まだ台本がかたまる前だったので、本当にいろんなことを経験させていただきました。朱音はドラムをやっていて、天才ミュージシャン・藤谷直季(佐藤健)に才能を見出されて同じバンドに入る…というストーリーなのですが、オーディションの時点では決まっていなくて。ドラムだけではなく、ダンスや歌の実技もあるオーディションでした」
――ヒロイン役を射止めた時の気持ちをお聞かせ下さい。
「妹と、『イェーイ!』という感じでハイタッチしました(笑)。本当にとてつもなく嬉しかったですし、現実味がなさすぎて喜べたのかなと今は思いますね。こんなにも大きい役、そしてヒロインというのも初めてだったので、あまり実感がなくて、素直に喜んでいたと思います」
――宮﨑さん演じる西条朱音は、どんなキャラクターでしょうか。
「彼女のことを強い人間だと言う方もいるのですが、私自身は意外と悩んだり、迷いがある人なのではないかなと思います。夢に向かう中で、落とし穴があったり、つまずいても諦めずに地道に進んでいく。だから、周りから強く見られがちなんだと思うんですけど、結構ブレブレになる瞬間もありますし、決して強い人間ではないのかなと思います」
――宮﨑さん自身が似ているところはありますか?
「私も、悩んだり迷ったりするほうです。あと、人から『強いね』と言われるけど、自分では全然強いタイプではないと思うので、そういう部分もすごく似ているなと思いますね」
――今作で印象的なのが、朱音がドラムを叩くシーンです。プロフィールの特技にもドラムと書かれていますが、いつからやられていたんですか?
「実は朱音役が決まってからです。撮影に入る前に1年ぐらい習って、撮影自体も9カ月間くらいあったので、その間もずっと練習していました。今も続けていて2年ぐらいになるので、特技として書かせていただいています」
――学生時代にバンドをやられたのかなと思うぐらい、パワフルなプレイでした。
「ありがとうございます。ドラムのシーンは、プロの方やドラムが趣味の方が見ると至らない部分があるんじゃないかと不安はありますが、自分では精一杯頑張れたと思います。ドラムを習っていく過程は、最初は脳トレみたいで難しかったです。撮影と並行して練習したり、1日ぶっ通しで練習した日もありました。曲数自体もたくさんあったので、次々やっていかないといけなくて、それに慣れるのも大変でしたね。最後のほうは撮影しながら曲を覚えることに慣れましたけど、やっぱり最初は戸惑いが隠せなかったですね」
――演技と並行して、ドラムの練習をやられていたんですね。
「はい。(作中のバンド)TENBLANKのみんなで編曲を考えたり、リハーサルで『こっちのほうがいいんじゃないか』みたいな話をして、曲を変えたりとか、演技の話し合いとは別に、音楽面の話し合いがありました。佐藤(健)さんがバンドをすごく大事にしてらっしゃったので、音楽についてはバンド内で話し合って、映像のときは監督を交えて話し合って…みたいな。そこは本当にバンドみたいな感じでした」
――主演であり、エグゼクティブプロデューサーを務める佐藤健さんから言われたことで、印象的なことはありますか?
「具体的な言葉ではないのですが、佐藤さんは言葉の伝え方が上手な方だなと思いました。私が負けず嫌いなので、ちょっとイラッとすることをわざとふっかけるような感じで言うんです(笑)。それでエンジンがかかってやる気が出る、そういうことが多かった。そうやって言って下さったからこそ、大先輩ですが思いきってぶつかっていけましたし、作中で朱音は(佐藤演じる)藤谷のことを『先生』と呼んでいるので、本当にふたりの関係性に近かったと思います
――監督から言われた、印象的な言葉はありますか?
「柿本(ケンサク)さんと後藤(孝太郎)さん、おふたり監督がいらっしゃったのですが、柿本さんはすごく人見知りで。最初は話せなくて“どうしよう”と思っていたんです。でもだんだん打ち解けて、中盤のドラムを叩くシーンで私が『心配なんですよね』って言ったら、『大丈夫。宮﨑はやってくれるって信じてるから』と言って下さって。しかも、スタッフさんにもそれを言ってくれていたのがすごく自信になって、頑張ることができました。信頼してくれたことがとても嬉しかったです。後藤さんは、撮影に入る前から相談に乗って下さったり、演技レッスンをして下さっていました。ドラムの練習にも来て下さったり。私を見つけてくれたのはおふたりですし、寄り添って、育てようとしてくれることがすごくありがたかったです」
――全編を通して、宮﨑さんのドラムプレイの熱量の高さがすごかったです。撮影の時の気持ちの上げ方を教えて下い。
「ありがとうございます! “私の何を見て選んでくれたんだろう”と考えたときに、『ドラムをやってる姿が楽しそう』と言われることが多かったので、“ドラムだけは誰にも負けないようにしよう”という気持ちでやっていました。TENBLANKのメンバーも撮影に加えて各自の楽器練習があるので、普通の現場より余裕がなくて、全然話していなかったんです。今の、プロモーション活動をしている時期のほうが話しているぐらいで。撮影の時期はみなさんの練習量も知らないし、全員揃った時は演奏する時なので、そういう時は“一番かっこよく演奏するぞ”と強く思っていました」
――宮﨑さんにとって、思い出深いシーンはありますか?
「やっぱり最終話、エピソード10ですね。撮影的にも最後のほうだったので、今までのことを全部思い出しました。宮﨑優として初めてのことの連続で、大変なこともたくさんあったので、ドラムを叩きながらいろいろなことを思い出しましたし、最終話の朱音の気持ちとリンクするものがあって、演技か現実か、どっちか分からなくなるような感覚がありました。共演者のみなさんも素晴らしい演技をしているので、ぜひ見てほしいですね」
――そして、TENBLANKとしてのアルバム『Glass Heart』でCDデビューを果たします。
「はい。実感はまだないですが、タワーレコードさんなどにCDが並んだら実感するんだろうなと思います。今は発売前で(※取材は7月下旬)反響がないので、どこか他人事のような“デビューするんだ、すごいな”という気持ちです」
――アルバムの中で、好きな曲はありますか?
「『永遠前夜』ですね。エピソード9、朱音が“先生”のところに駆けて行く時にずっと聴かせていただいていた歌なので、すごく思い入れがあります。朱音への気持ちが表現されていると思いますし、演じている時も聴いていて助けになった曲で、すごく好きな曲です」
――改めて、「グラスハート」の見どころを教えて下さい。
「映像が美しくて、音楽面に関してフォーカスされていますが、ラブストーリーでもあるので。音楽好きの方にも、恋愛ドラマが好きな方にも、本当にいろんな方に愛される作品になってほしいなと思っています。朱音自身の、そして私自身の成長の物語でもあります。なので、何か悩んでいたり辛い思いをされている方にも見ていただいて、“宮﨑も頑張っているんだから、自分も頑張ろう”と思ってもらえる、そういう活力になってくれたら嬉しいなと思います」
――本当に力の湧いてくる作品ですよね。そして、宮﨑さん自身が今後挑戦してみたい役どころについても聞かせて下さい。
「白石(和彌)監督の映画『死刑にいたる病』に出させていただいた時にサイコパスの女性を演じたので、そういう役柄に興味がありますね。あとは真逆ですが、のほほんと見られるような温かい作品に出たいという思いもあります。情報にあふれている世の中で疲れてる人もいると思うので、見ると温かい気持ちになれるような作品、家族愛とか。普段から小さな幸せが大事だなと思っているので、日常のちょっとしたことをテーマにした作品に出たいです」
――最後に、宮﨑さんご自身が目指す人物像について教えて下さい。
「子供心を忘れない人になりたいです。目指しているのは、女優としても人間としても、どんなに嫌なことがあっても“面白いな”と思える人。俯瞰で物事を見ることができたら、いろいろな問題にも対処できると思うので、面白がることができる人でいたいですし、一度きりの人生を存分に楽しんでいきたいです。あとはさっきの話と少し似ていますが、小さな幸せを大切にしたり、面白がったほうがより幸せ度が増すと思うので、小さな幸せを感じることのできる人でいたいです」
●プロフィール
みやざき・ゆう
2000年11月20日生まれ、三重県出身。2019年にドラマ『高嶺と花』にて女優デビュー。以降、ドラマ『俺のスカート、どこ行った?』、『FLY! BOYS, FLY! 僕たち、CAはじめました』、『往生際の意味を知れ!』、『ライオンの隠れ家』などのテレビドラマの他、CMや舞台に活躍の場を広げる。他、映画『うみべの女の子』、『死刑にいたる病』、『まなみ100%』、『正体』に出演。
●作品紹介
Netflixシリーズ「グラスハート」
原作/若木未生「グラスハート」シリーズ(幻冬舎コミックス刊)
監督・撮影/柿本ケンサク
監督/後藤孝太郎
出演/佐藤健 宮﨑優 町田啓太 志尊淳 / 菅田将暉 他
デビューを目前に控え、所属するバンドをクビになった西条朱音(宮﨑優)。打ちひしがれる彼女を、“ロック界のアマデウス”と称される孤高の天才ミュージシャン・藤谷直季(佐藤健)が突然、新しく結成するバンドのドラマーに抜擢する。朱音、ギターの高岡尚(町田啓太)、キーボードの坂本一至(志尊淳)、そしてギター&ボーカルの藤谷による4人組バンド・TENBLANKは、瞬く間に世の中を席巻していく。しかし、快進撃を続ける彼らの前に、数々の壁が立ちはだかり―。
Netflixにて世界独占配信中