【INTERVIEW】現在放送中のドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』に出演中の楽駆。今作では、初の夫婦役に挑戦。バーテンダーの吉井太平を実に伸びのびと演じている。
2025年は、ドラマ『東京サラダボウル』、『イグナイト -法の無法者-』、『能面検事』、映画『遺書、公開。』と出演作が続いている楽駆。放送開始から共感の声が上がり話題沸騰中のTBS系火曜ドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』では、ヒロイン・鮎美を支える美容師・渚の夫の太平を演じている。自身の役どころや作品にかける思いを聞いた。
撮影/中野修也 スタイリスト/Motoki Ogata ヘアメイク/三田あけみ 文/平井晶子

――最初に、原作を読んだ感想を聞かせて下さい。
「ドラマのお話をいただいてから漫画を読ませていただきました。まず、僕の地元・大分が出てくるところに縁を感じましたし、タイトルもすごくいいなと思いました。読んでいくうちに男女の価値観の変化というか、そこが説教くさくなく描かれていて面白いなと思いました」
――ご自身の役について、意識しながら読まれましたか?
「そうですね。事前にいただいたプロットにも演じる役の人物像が書かれていたので、照らし合わせながら読んだりしました。漫画の持つポップなよさもありますが、そこを実写ではどう表現しようかと考えたりしました」
――ドラマの脚本を読まれた時はどう感じましたか?
「原作が素晴らしいのはもちろんなんですが、安藤(奎)さんの脚本が素晴らしかったです。とにかく勝男が面白くて。勝男みたいに生きたいと思ってもそう生きられない人って結構多いと思うんです。あまり言いたいことを言えないというか。それに、(意見を)言ったら言ったで言い返されたりもして。勝男がうらやましく思える部分が多々ありました」
――テンポのいいやりとりもドラマの魅力のひとつになっていると思いますが、脚本には細かく指示が書かれているのでしょうか?
「わりと具体的に書かれている部分もあれば、余白も持って書かれている部分もありました。やっぱり動いてみないとわからない部分はあると思うので。でも、すごく緻密につくられた脚本だなとは思いました」

――吉井太平というキャラクターについて、事前に説明などはありましたか?
「太平は“仏のような夫”と書かれているんですよ。だから、一番フラットな人間なのかなと思いました。あとは、妻役の(ラランドの)サーヤさんとのバランスが大事だなと思ったので、そこはずっと探っていました。ドラマの年齢設定では、吉井夫妻より勝男と鮎美のほうが少し年上なんです。ですが、『ふたりより少し上に見えてほしい』ということは、クランクインの時に言われていました」
――どのような部分で年上感を出したのでしょうか。
「突拍子もないことはしないようにしようと思いました。キャラクターの印象づけとして、もっといろいろやりたいなと思っていたんですけど、あまりやると幼く見えてしまうなと思ったので。あと、原作を読んでキャラクターとして渚のほうが濃いのかなと思っていたので、それより上にいくのは絶対に違うなとは思っていました」
――夫婦としてのバランスも意識されたのですね。
「そうですね。サーヤさんがわりと自然な感じで演じられていたので、そこに合わせつつという感じで演じていきました。自分も出るところは出ようかなと思いつつ、最初はその塩梅を探っていました」
――太平の職業はバーテンダーですが、そのあたりはいかがでしょうか。
「僕もバーには行くことがあるので、お店の人を参考にしたりしました。あとは、どういうお客さんが来ているのかなと、エキストラの人を見たりして。老若男女幅広い層がいらっしゃったのでわりと自由な空間なんだろうと。選り好みをせず、いい意味でこだわりのないお店だなと感じたので、どっしり構えていようと思いました」

――太平の人柄について、ご自身ではどのように感じていますか?
「太平はめちゃくちゃバーをやりたかったのかと言うと、多分そうではなかったのかなと思っていました。お店に通っていく中で、『ここやってみない?』『あ、いいっすよ』くらいの感じで始めて。続けていくうちに人が集まるようになった気がします。あんまり欲がない人間だと思うので、それはそれでうらやましい部分です」
――ゆったりしつつ、ちゃんと芯があるところが太平の魅力にもなっている気がします。
「そうですね。自分から話しかけに行くタイプではない気がするんですけど、どんなところでも緊張しないんだろうなって。個人的には物語の後半で、太平がもっとグイグイ前に出ていったらいいのになと思っています(笑)」
――太平と渚は恋人のような夫婦関係ですが、サーヤさんとはどのようにつくっていったのでしょうか。
「わりと自由だった気がします。太平は、渚の言動に対して反応するような感じで、受けのお芝居が多いんです。アドリブなどもサーヤさんから来るので、そこに対して返すような感じで進めていました」

――笑顔で優しく渚を見守っている太平の姿が印象的です。
「今回サーヤさんとは初共演で、僕自身、初の夫役になるんですが、サーヤさんが真っ直ぐで素敵な方なのでとても演じやすかったです。太平は、渚がワ―っと話しているのをいつも“うんうん”って頷きながら聞いているんですけど、多分、太平自身が一番楽しんでいるんだろうなって思います。渚に対してうらやましい部分も実はあるのかもしれないですが、そこが一番いいなって思っているのが太平なんだろうなって気がしました」
――撮影現場はどんな雰囲気ですか?
「わりと同世代というか、スタッフの方も含めて年齢が近い方が多いんです。目的に対して楽しく進めつつも、締めるところはちゃんと締めるとても心地のよい現場です。夏帆さんや竹内(涼真)さんがそういう現場づくりをして下さったという部分は大いにあると思います。あと、サーヤさんがいるとすごく現場が明るくなるんです。誰が何を言ってもツッコんでくれるという部分があるからかもしれません」
――ドラマが話題になっていますが、ご自身でもそう感じることはありますか?
「そうですね。『見てる』って言われることがすごく多いので。『勝男面白いよな』って声はやっぱり多くて、すごいなと思います」
――太平については何か言われましたか?
「『本当に高円寺にいそうだね』とかは言われます(笑)。太平のビジュアルなどは、プロデューサーの方と話してこだわった部分でもあるんです。原作に合わせる形で、初めてヒゲも生やしましたし、こんなに髪が長いのも人生で初めてかもしれません」

――反響の大きさを受けて、今どのように感じてらっしゃいますか。
「嬉しいですね。このような作品に出られたことも、本当に感謝しかないです。以前、『埼玉のホスト』というドラマに出演したんですけど、その時のプロデューサーの方が今回呼んで下さって。そこから繋がっていると思うと、ありがたいなと思います」
――このドラマの魅力はどんなところにあると思いますか?
「相手を通して自分を見つめ直すというところは、一番の醍醐味なのかなと思います。自分も同じことをしていたんだなとか、相手の立場になってやっとわかることもあると思うので。それこそ、『じゃあ、あんたがやってみろよ』というか、そう思っている方はたくさんいると思います。批評するだけは簡単だと思いますが、それをつくることが難しいので。そこが嫌味なく描かれている。それがヒットしている部分でもあるのかなと思います」
――最後に、この作品を通してご自身の学びになったこと、得たことがあれば教えて下さい。
「本当に国民的なドラマに出ているんだなという実感はあります。だからこそ、もっと上にいきたいなと思いましたし、太平という役を通して、“なるようにしかならないんだな”とも思うようになりました。考えることはもちろん大事ですけど、考えても正直そこまで変わらないというか。考えているだけじゃ何も変わらないので、間違っている、間違っていないにしろ、自分を信じることは大事だなと思います。見ている人は必ず見てくれていると思うので」
――太平から多くのことを学ばれたのですね。
「そういうことにしましょう(笑)」
衣裳協力:ジャケット¥35,200、Tシャツ¥7,700、パンツ¥26,400(すべてF-LAGSTUF-F/instagram:@f_lagstuf_f)、シューズ¥57,200(DELUXE/03-6805-1661)
●プロフィール
らいく
1996年11月30日生まれ、大分県出身。2017年より本格的に俳優活動をスタート。2019年の映画『最初の晩餐』で第34回高崎映画祭最優秀新人男優賞を受賞。2025年は、映画『遺書、公開。』、ドラマ『東京サラダボウル』『イグナイト -法の無法者-』『能面検事』に出演。
●作品紹介
火曜ドラマ『じゃあ、あんたが作ってみろよ』
原作/谷口菜津子『じゃあ、あんたが作ってみろよ』(ぶんか社『comicタント』連載)
脚本/安藤奎
音楽/金子隆博
出演/夏帆 竹内涼真 中条あやみ 青木柚 前原瑞樹 サーヤ(ラランド) 楽駆 杏花 池津祥子 菅原大吉 他
“恋人ファースト”ゆえに自分を見失ってしまった彼女・鮎美(夏帆)と、“料理は女がつくって当たり前!”な亭主関白思考な彼氏・勝男(竹内涼真)。大学時代から交際し、まもなく結婚すると思われていたふたりだが、彼氏のプロポーズ直後に別れてしまう。“当たり前”と思っていたものを見つめ直し成長していく、ふたりの再生ロマンスコメディ。
TBS系火曜夜10時より放送中。TVer、TBS FREEでは第1話~第3話と最新話を無料配信中の他、U-NEXTでは全話配信中







