【電子書籍】異国ペルーの日常を切り取った実録エッセイが発売!【ペルー国境足止め日記】
2020年3月、コロナによる緊急事態宣言が発令され、国境が封鎖されてしまった……。
中南米旅行の途中、4日で帰るはずが計画外にペルー・アンデス山脈にある町、クスコへ滞在することになった、旅するグラフィックデザイナーのミユキさん。言葉・文化・暮らしがまるで違う国で、濃厚すぎる5年間を過ごした日々をつづった実録エッセイがついに電子書籍にて発売されました!
ここでは『ペルー国境足止め日記』(著:ミユキ)より、一部を抜粋・編集の上、特別にご紹介します。
4日で帰るはずが、5年もペルーに!?

ペルーは、日本から約15,500km(地球の円周の約3分の1)離れた南米にある国で、「マチュピチュ」や「インカ帝国」、「ナスカの地上絵」が有名です。ミユキさんが「足止め」されたペルーの町・クスコは、標高3,399m、アンデス山脈の中央に位置する都市。マチュピチュ観光の玄関口ともされている町で、多くの観光客が足を運ぶ場所です。

「チェックインし、眠りかけていた21時頃。突然ホテルのオーナーが部屋にやってきて、明日から国境が封鎖され、ロックダウンのため観光も出来なくなると告げられた。
(中略)
同じホテルに宿泊していたアルゼンチン出身の若い女子二人組は、帰国するためにダメ元でバスセンターまで行ってみると、ホテルを後にした。ホテルに戻ってこなかったので、ギリギリ出国できたみたい。
数日後にはフランス人のバックパッカー二人組が、これまたダメ元で空港に行くと言って出ていき、戻ってこなかったので、どうやら脱出が成功した模様。
そうして、次々とホテルから宿泊客が去っていき、気づけば私一人になっていた。」
『ペルー国境足止め日記』(著:ミユキ)より
コロナ禍で出会った犬が価値観を変えてくれた

「ついにか。
長引くコロナ禍で、滞在していたホテルが突然閉業することになった。ひとまずオーナーの実家が所有するビルの一室に引っ越すことになり、新居はビル一階の駐車場奥にある管理人室みたいな部屋だ。気に入っていた中心部から遠く、窓もない。クスコにも長く住んだことだし、早めに他の街に出ていこうと思った。
引っ越し作業をしていると、このビルで飼われている犬のマチルダが尻尾を振り回しながら部屋に入ってきた。リードで繋がれていないので、制御しようがない。へそ天からのしっぽフリフリと、人懐っこい犬だ。以前飼っていた猫のチンチラゴールデンと同じような毛をしていて、親近感が湧いた。」
『ペルー国境足止め日記』(著:ミユキ)より

最初は成り行きで、一緒に過ごすことになった犬の「マチルダ」。撫でると手が黒くなるほどだったため、絡まった長い毛を切ったり、食用の重曹でシャンプーを作って辛抱強く洗い続けたりと、手探りでお世話をすることに。すると次第に、ミユキさんが出かける時には必ずついてくるようになっていったと言います。
「こんなに寄り添ってくれる生き物との生活は初めてで、健気でかわいくて仕方がなく、結局ここで1年以上暮らした。
さらには街で見かける犬までかわいく思えてきて、いつもの景色が以前よりも優しい世界に見えるように。マーちゃんと過ごす、穏やかな毎日が幸せだ。」
『ペルー国境足止め日記』(著:ミユキ)より
いつでもどこでも踊るペルー文化

「ペルー人はよく踊る。隙あらば踊っている。
誕生日会やお祝いの場では必ずといっていいほど踊る時間があり、最初は驚いた。
初めて友人宅にお呼ばれしたときのこと。みんないい感じに酔っ払ってきたあたりで、スピーカーとトランペットを抱えた人が入ってきて、演奏が始まると突然友人たちが踊りだしたのだ。男女が手を取り合って踊っている。
友人は彼の奥さんのお母さん、つまり義理の母親と手を繋いで踊っている。その様子を見て、あっけに取られる私。自分の親とも手を繋いだ記憶がないのに、他人の親となんて……と思ったけど、逆にありなのかもしれない。」
『ペルー国境足止め日記』(著:ミユキ)より

「ペルーの踊りといえば、無形文化遺産に登録されている南米三大ダンスの一つ、マリネラがある。男女ペアになり、ハンカチを持って踊るのが特徴だ。
友人の子どもが踊るというので、同行させてもらった。衣装もメイクもため息が出るほどかわいい。幼いのに堂々とした立ち振る舞いで、回転するとスカートが美しい放物線を描き、見ている私まで心が弾んだ。
友人宅では団体芸のようにみんなでハンカチを持ち、マリネラを踊っていることもあった。
こんなにも踊る文化が根づいているなんて!
観光では見ることの出来ない暮らしを見せてくれた友人たち、スペイン語があまり話せない私が混ざることも苦にしないで誘ってくれる優しさ、ありがとう。」
『ペルー国境足止め日記』(著:ミユキ)より
愛にあふれるペルーで出会った人たちとの縁

「ペルーでは50歳になる女性を“ゴールデン”と呼び、お祝いするのが一般的らしい。日本で還暦を祝うようなものだろうか。
(中略)
結婚式ばりの大きな会場は、ゴールドを基調とした装飾が施されている。正装したほかのゲスト達の姿を見て、最大限におめかししてきてよかった……と一安心。用意された席に座り、誕生日会が始まるのを待つ。」
『ペルー国境足止め日記』(著:ミユキ)より

「この盛大な誕生日会は子ども達を、若き日の両親の結婚式に行ったような気分にさせてくれるのではないだろうか。子ども達が育ててくれたことへの感謝を込めて泣きながらスピーチし、親族や親しい人たちが大勢集ってお祝いする50歳の誕生日会には、愛が溢れていた。
年を重ねる度に「自分の誕生日なんて鬱陶しい」と思っていた私は、なんて卑屈なのだろうか。
ペルーで知り合った人たちは、いつも私に“家族っていいな”と思わせてくれる。」
『ペルー国境足止め日記』(著:ミユキ)より

『ペルー国境足止め日記』では他にも、「不法滞在で強制送還の危機⁉」「ピクニックのつもりが標高4800m級の山をトレッキング」「月の生活費7万円、歯科治療は9万円?」など、異国ペルーで“帰れなくなった”ミユキさんの“静かで騒がしい”日々をまとめています。
旅行ガイド本では知ることができない、異国ペルーの日常を切り取った本書をこの年末年始に楽しんでみるのはいかがでしょうか。
\好評発売中!/
『ペルー国境足止め日記』
著:ミユキ
※本書はウェブマガジン「WANI BOOKOUT」にて2022年6月~ 2025年3月まで連載された「ペルー国境封鎖足止め日記」をもとに加筆・修正を加え電子書籍化したものです。
ミユキ
旅するグラフィックデザイナー、イラストレーター
広島出身、武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒、在学中よりフリーランスとして広告、ロゴ、エディトリアルデザインなどを手掛ける。ロンドンに2年間の語学留学、オランダ・セントヨースト・マスターグラフィック卒業後、個人事業主ビザを取得しアムステルダムに12年居住。ヨーロッパ全域を含む訪れた国は50カ国以上、旅先では美術と食を軸に、ダイビングや運転もする。
主な作品:ギリシャ・クレタ島の大壁画、ハイネケン Open Your World、モンスターズインク・コラボイラスト、豊島復興デザイン等、15年前からのリモートワークで、世界のあらゆる場所で制作。本書が初の著書となる。
HP http://miyuki-okada.com
X(旧Twitter) @curucuruinc
Instagram @curucuruinc
note https://note.com/miyuki_okada








