【4刷重版!】W杯決勝トーナメント前に読みたい! サッカーの裏側を地政学で読み解く話題作
ボールが動けば世界が動く――。
今夜の一戦を見る前に、サッカーを“もう一段深く”楽しんでみませんか。
・なぜ日本が急激に強くなったのか
・なぜ特定の国でスターが生まれるのか
・なぜW杯は政治を揺らすのか
日本が決勝トーナメントに進出し、ブラジルとの決戦を迎える今夜。試合をさらに楽しくする一冊『サッカーと地政学』(著:木崎伸也)より一部を抜粋の上、ご紹介します。
サッカーと地政学とは?
2022年W 杯で日本代表がドイツを倒したあの瞬間、日本のサッカーは新たなステージに突入した。
現地ハリファインターナショナルスタジアムにいたほとんどの人がドイツの勝利を確信する中、先制されてからの逆転劇。アディショナルタイムを含めたラスト約30分間、ドーハの空気はまるで〝ホーム〟のように日本一色に染まっていった。
異国で響いた声援が、間違いなくあの勝利を後押しした。
だが、歓喜を生み出したのは、ピッチに立っていた11人だけではない。リザーブメンバーや監督、スタッフ、そして数十年にわたり環境を整えてきたサッカー関係者たちの努力の結晶だった。
さらにその奥には、国、企業、国際政治、育成システム、移民政策といった見えない〝力〟が働いていた。
実はその正体こそ、この本のテーマである地政学だ。
地政学を、ここで手短かに説明してみよう。
たとえばシーソーを思い浮かべてほしい。一方が重くなれば、もう一方は自然に浮き上がる。乗る人が変わればバランスも変わる。地政学とは、この〝世界のシーソー〟で、どこに重さが集まり、どの国が押し上げられるのかを読み解く視点だ。
では、それがサッカーと何の関係があるのか?
サッカーは世界で最も動員力を持つスポーツだ。観客動員数、視聴者数、経済規模、文化的影響力……そのどれもが桁違い。だからこそ、世界ではそれが〝外交カード〟であり〝産業〟であり、ときに〝国の運命〟すら左右するのだ。
「セレソン」の名で知られるブラジル代表は国のブランドそのものを押し上げ、カタールやサウジアラビアはイメージアップと石油依存脱却のためにサッカーに膨大な資金を投じている。かつてスペインでは独裁者フランコがバルセロナを抑え込み、フランスでは移民二世たちの成功が国家の自信に変わり、ドイツでは敗北が教育改革や育成方法の改革を生んだ。
日本も例外ではない。
30年前まではW 杯に出るのも夢のような話だった。しかし現在、日本代表はドイツやスペインを破り、優秀な選手が続々と欧州のクラブで活躍している。その裏には、J リーグ誕生、W 杯招致、アジアの競争力、移民受け入れ、国内リーグ改革といった〝見えない地政学〟が確かに存在する。
この本は、そんなサッカーのもうひとつの側面──「ボールの外」で動く世界の物語に光を当てる試みだ。
まず、地政学的な視点から「なぜ日本代表が急激に強くなったのか?」を解き明かすことに挑戦した。そこで見えてきたのは、4年ごとに生まれた新たな対立構造を乗り越え続けてきたチーム力学の成長史である。
さらにW 杯、強豪国のナショナルチーム、サッカー界の英雄たち、サッカーマネーの動きに潜む力学を、地政学的視点で解説することを試みた。
なぜ2026年W 杯は北中米3カ国で開催されるのか、スター選手がなぜ特定の国から生まれるのか、移籍金や代理人ビジネスに何が起きているのか、さらにはオイルマネーや国際政治がどう絡んでいるのか。すべては偶然ではない。
ピッチの外で国と国がせめぎ合い、そこで動いた力がピッチに影を落とす。サッカーは世界を映す地図であり、地政学はその地図の読み方だ。ボールが動けば、世界が動く。ひとつのゴールが国の空気を変えることさえある。
この本を閉じる頃、あなたの中で世界は今より少し立体的になっているはずだ。さあ、サッカーが世界と接続するダイナミックな裏側へ、一緒に旅に出よう。
なぜJリーグはブラジル人が多いのか―受け継がれたサッカーの血脈
ヨーロッパのサッカー関係者からたびたび聞かれる質問がある。
「なぜJリーグの外国籍選手はブラジル人ばかりなのか?」
Jリーグの公式サイトによると、2025年シーズン(1月23日時点)における外国籍選手は177人。そのうちブラジル出身は91人、韓国35人、スペイン6人、タイ5人だった。つまり外国籍選手の過半数(51%)がブラジル人というわけだ。
移籍サイト「transfermarkt.com」によるとプレミアリーグの25−26シーズンにおける外国籍選手は388人で、内訳はフランス40人、オランダ36人、ブラジル31人、スペイン21人、ドイツ15人、ポルトガル14人、アルゼンチン14人。
ブラジル人は8%にすぎない。
なぜJ リーグはブラジル人の割合がこれほどまでに高いのだろうか?
答えるためには、サッカーとは一見関係のない、「日本とブラジルの100年の移民史」をさかのぼる必要がある。
すべての始まりは1908年、サンパウロ州のコーヒー農園へ781人が渡航した「笠戸丸移民」だった。
当時の日本は人口増加と食糧難を抱えており、1924年以降、移民政策を国策として強力に推進する。1933~34年には年間2万人がブラジルへ渡った。
戦争で一時停止するも、1952年に移民事業が再開され、1993年まで継続した。現在、日系ブラジル人は約270万人いると言われる。海外の国別日系人ランキングでトップの数字だ。
のちに、このブラジルとのつながりが、地理的に不利な状況に置かれていた日本サッカーにとって計り知れない価値を持つようになる。
そう、日系ブラジル人選手の獲得だ。
第一号は1967年に誕生する。早稲田大学を卒業した釜本邦茂がヤンマーディーゼル(現セレッソ大阪)に入団し、同球団の山岡浩二郎部長は釜本へパスを出せる選手が必要だと考えた。山岡はブラジル・サンパウロにあるヤンマーの系列会社に連絡し、日系ブラジル人選手の発掘を依頼した。
選ばれたのはサンパウロの日系2世のアマチュアリーグでプレーしていた19歳のネルソン吉村。日本リーグ初の外国籍選手である。
ネルソン吉村と釜本の活躍によってヤンマーに黄金期が訪れる。1969年1月の天皇杯優勝を皮切りに、天皇杯優勝3回、準優勝5回、リーグ優勝4回、2位4回という圧倒的な成績を残した。
ネルソン吉村の成功を受け、他クラブも日系ブラジル人を獲得し始める。その中にのちに解説者として有名になるセルジオ越後がいた。
日系2世のセルジオ越後はコリンチャンスのユースからトップ昇格を果たし、プロの世界でプレーした経験があった。1972年に藤和不動産(湘南ベルマーレの前身)へ入団し、日本リーグ初の「プロ経験がある外国籍選手」として話題になった。
日本に個人技を重んじるサッカー文化が生まれたのは、ネルソン吉村やセルジオ越後ら日系ブラジル人選手の存在が大きかったと言われている。
本書では、「日系移民がつくったサッカーの系譜」「日本代表を救った闘莉王の〝魂〞」と続き、日本とブラジルの100年に渡る絆がつないだ、日本サッカーにとっての大きな財産について語っています。
他にも、日本代表の快進撃、W杯招致の舞台裏、スター選手の移籍、FIFAの腐敗と癒着、オイルマネーによるイメージ・ロンダリング──など、そのすべての背景に潜む国家の思惑や経済、移民、人材育成といった“見えない力”を「地政学」という切り口で読み解いていきます。
試合をもっと面白く、ニュースはより立体的に見えてくる、サッカーファンにも、世界を知りたい人にもおすすめの一冊です。
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『サッカーと地政学 -ゴールの先に世界が見える-』
著:木崎伸也
木崎伸也(きざき しんや)
1975年生まれ、東京都出身。中央大学大学院理工学研究科物理学専攻修士課程修了。
2002年日韓W杯後にスポーツ紙の通信員としてオランダへ移住。2003年から拠点をドイツに移し、日本代表FWの高原直泰の担当としてブンデスリーガを取材。2006年ドイツW杯では、現地在住のスポーツライターとして記事を配信した。2009年2月に本帰国し、現在は『Number』『BRODY』『footballista』などに寄稿している。
著書に『2010年南アフリカW杯が危ない!』(角川SSC新書)、『サッカーの見方は1日で変えられる』(東洋経済新報社)、『直撃 本田圭佑』(文藝春秋)、共著に『勝利へ』(光文社文庫)、『蹴球学 名将だけが実践している8つの真理』(KADOKAWA)がある。
X(旧Twitter) @skizaki








