二宮健監督の最新作『MATSUMOTO TRIBE』公開記念! 新鋭の映画監督4人による超スペシャル座談会! 【前編】

二宮健監督の最新作『MATSUMOTO TRIBE』公開記念! 新鋭の映画監督4人による超スペシャル座談会! 【前編】


 

演出について

――監督ごとにそれぞれ演出論があると思うんですけど、それは誰に影響を受けたものなんでしょう?

二宮:誰に影響を受けたというのはあまりない気がする。たとえば俳優との向き合い方が分からなくなった時に、監督のリーダーシップの本とかいっぱい読んだことはあるんですけど、そういうのは知識としては一応入って来ますよね。でも、根本的にやりたいことは自分の影響でしかない。

小林:自分のクリエイティブに影響受けてる映画監督ってことだったら、はっきりとこれ、というのはないかもしれない。まだ自分の演出もよく分かってなくて手探りなので。菊地さんはどうですか?

菊地:僕はここにいる四人の中でちょっと違うのは、助監督をだいぶ長いことやったということなんですよね。それこそ色んな作品の撮影現場で色んな監督のさまざまな演出を見てきました。これは僕の師匠に言われたことなんだけど、「演出は監督業のひとつでしかない」と。演出って色々種類があるんです。役者に現場で芝居を付ける時の演出もあれば、光の効果や視覚的効果で何を持って行くかみたいなこともあるし。言ってしまえばスタッフィングだってキャスティングだって演出にも入るし……難しい。細かく言えば、この部分はきっとこの人の影響、というのはたくさんあるんだろうし、元は映画ファンとしていろんな映画を観て「こういう映画作りたいな」というところから考え始めたんだけど、でもいろんな作品や人を観過ぎたために、ちょっと誰とは言いにくいですね。この部分は瀬々敬久さんの影響があると思うところもあれば、この部分は黒沢清さんや万田邦敏さんの影響だと思うところもあるし。もっと言えば、全体的なコンセプトでは、それこそ昔から好きな小津安二郎、成瀬巳喜男、川島雄三とか、もちろん自分が映画を撮ろうと思うきっかけになったレオス・カラックスの影響もあるだろうし。映画は小さい頃から観ていて、その頃はやっぱりハリウッド映画だった。でも高校生くらいの頃にレオス・カラックスの『ポンヌフの恋人』を観た時、今となってはおこがましいんだけど、「もしかしたらこういう方向性だったら自分も映画撮れるんじゃないか」と思ったんですよ。そういう色々がある。

小林:基本的には、自分で作りながらその時できなかったことや疑問に思ったことが次に継続されていくと思うんですよね。僕は長編映画を撮る前に、ZAZEN BOYSのレコーディングのドキュメントを撮ったことがあるんですけど、その時に感じたことや、向井秀徳さんの佇まいで場の緊張感が生まれる感じは、やっぱり面白いなと思いました。影響を受けてるかどうかわからないけど、ものを作る上で、憧れはあった気がします。

菊地:映画制作の場合、最初はやれることが本当に少ないんですよ。出演してくれる人も限られてるし、カメラも自分で回したりする。だから最初はできることだけやっているという感じなんです。機材は安いものしか使えない、すると音が拾えないからセリフが聞こえない、じゃあセリフ少なめにしようとか。ちょっと上手く喋れる人が周りに増えて来たら、じゃあセリフ増やしてみようとか。そうやってやれることが増えて行く中で、少しずつ選択肢ができる。憧れや初期衝動も当然あるんだけど、それができるようになるのは、始めてしばらくたってからなので。

――なるほど。それは他の芸術分野と大きく違う部分ですね。たとえば小説であれば、紙とペン、もしくはパソコン一台あればできるわけですから。

二宮:映画を撮ることは、本人の気合いだけでどうにかなる問題じゃないんですよね。

――松永監督はどうですか?

松永:僕は最初、役者として映画に関わろうと思ってたんですよね。もう亡くなられた方ですけど、最初の舞台に立った時の演出家が、平山一夫さんという方でした。その方が菊田一夫さんという演出家のお弟子さんだったんですよ。だから、僕は菊田さんの演出に影響を受けてると思います。菊田さんにはもちろんお会いしたことはないんですけど、平山さんが受け継いだ菊田さんの演出を役者としてがっつり受けた。だからそれが僕のベースですね。

 

<後編に続く>
次回更新は、4月7日(金)です。お楽しみに!


『MATSUMOTO TRIBE』
配給/Ashtray Arts 
4月15日(土)より新宿武蔵野館にて1週間限定レイトショー公開
(c)2017 Ashtray Arts

 

 


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