【後編】ミニマリズムで自由を増やす「ミニマルライフコスト」とは?


2017年4月『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』アメリカ版『Goodbye,Things』の発売を記念した講演会がNYで開催され、盛況のうちに終演しました。

その講演会の様子を前後編にわたってお届けします。 

 

 前編はこちら

 

ミニマリズムを実践する中で得られたもの

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次に僕がミニマリズムを実践する中で得られたものをお話します。

まずは、時間が増えます。家事の時間は激減します。(会場笑)

掃除や洗濯の時間が減って、ゆとりのある時間が持てました。買い物の時間も減ります。今もモノが大好きなので、実際に買おうとすると機能やスペックを調べたりしてすごく時間がかかります。そんな時間も減ります。NYでもお土産を探す時間の代わりに、ゆったりした旅の時間を楽しもうと思っています。

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探し物の時間もなくなります。人は平均で1日10分ほどの探し物をしているそうです。それを一生に換算すると150日になります。なんだかもったいなくないですか?探し物や忘れ物を取りに戻る時間もなくなります。

僕の場合、労働の時間も減りました。収入を最大の目標にしなければ、自分の働く時間をうまく調節できるようになります。物を減らして時間が持つ価値についても考えるようになりました。

ある日、電車に乗り遅れそうになって走っている人を見て思いました。こういう人は東京には多くいるんですが、乗り遅れそうになって走っている人に幸せそうに走っているひとは一人もいないな、ということです。車で急いでいるのに渋滞しているときもそうでしょう。一方で、幸せそうに見える人、友達とカフェでコーヒーを飲んだり、旅行に出かけたりしている人は十分な時間の余裕があるはずなんです。コーヒーや旅自体も楽しいですが、ゆったりした時間、家事や労働に追われていない時間を楽しんでいるんだと思います。

人は忙しくなりすぎると人に優しくできなかったり攻撃的になったりします。幸せを支える根底の条件は、時間があることだと思っています。ウルグアイの元大統領、ホセ・ムヒカさんはこう言いました。「人はお金で物を買っていると考えているけれど、働いた人生の貴重な時間で買っているんだよ」と。

これは一日100ドル稼ぐ人が300ドルの物を買ったとしたら、お金ではなく3日という時間で買ったということです。時間の価値を考え直すと、物やお金に対する考え方も少し変わってくるかもしれません。 

ミニマリズムで、自由も増えたと思います。例えば、住む家の自由です。僕は20㎡のマンションに住んでいましたが、もっと小さくてもいいと思っていました。当然家賃は下がるので、住める場所の自由は増えていきます。大きな固定費である家賃が下がると、生活費全体が下がります。月に最低限これだけあれば楽しく生きていけるというお金のことを「ミニマルライフコスト」と呼んでいます。

僕の場合、月15万円くらいあれば十分楽しく生きていけると思っています。そうすると、あまりお金のことを考えずに済みます。生活を維持するために嫌いな仕事を続ける必要もないし、仕事にしがみついて都会にい続ける必要もなくなります。

このようにモノを減らすことから始まり、住む場所や職業の自由も増すこともある思っています。僕も実際に会社を辞めて東京から京都に引っ越しました。引っ越しの準備も30分もかからないので、いつでも気軽に引っ越すことができます。(会場笑)

今の家の家賃は月3万円。光熱費もWi-Fiも込みです。多少不便はありますが、自然が豊かな場所に住んで、自分の好きな仕事ができるようになりました。今は新しい生き方についていろんな試みがされていると思います。

人間関係も変わりました。物を減らしただけで、どうして人間関係が変わるんだと思うかもしれません。家はいつも簡単に片付くので、以前よりも多く旅に出たりアウトドアを楽しんだり、友人に会ったりすることが多くなりました。つまりお金は物を買うより経験に使うことが多くなったということです。

ミニマリストのコミュニティでもよく一緒に旅をしています。外に出かけることが多くなって、友人たちと過ごす時間がとても増えたということです。家にいても人間関係は変わると思います。物を減らして夫婦の仲が良くなったとよく聞きます。夫婦喧嘩の原因の1/4は整理収納に関するものというデータがあります。

男性ならコレクションしているもので怒られたり、服を脱ぎっぱなしにして怒られたり、心当たりのある方も多いのではないでしょうか? 家事が簡単になると、家事を夫が手伝ってくれるようになった、という話もよく聞きます。テレビを無くして、話す時間が増えることもあると思います。多すぎるものは人間関係も壊してしまうことがあるということです。

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ぼくはたくさんのモノを手放しましたが、本当に手放したのは、お金や物が一番大事だという価値観です。誰かに合わせた価値観や、人から自分がどう見えるかという価値観も手放しました。ミニマリストというのは、ずっと続けなければいけないものでもないと思っています。たくさんのモノに慣れていくように、モノの少ない部屋にも人は慣れていきます。本当に大事なものは、慣れないものです。ともに笑いあったり、慰め合ったりする人間関係に慣れるということはありません。

ぼくが本当に手に入れたものは、ミニマリズムを実践する中で出会った人間関係であったり、コミュニティだったのではと思います。モノが人を結び付けてくれることもあります。お金も必要です。全員がミニマリストになる必要はないと思います。しかし、多くの人が本当の幸せをもたらしてくれないものに時間やエネルギーを使いすぎているのではないでしょうか。もしそうなら、少し減らしてみる、これは一度試してみる選択だと思います。

 

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※本文は、2017年4月N.Yで行われた講演の一部を抜粋して掲載しております。