はじめての「メルカリ」

はじめての「メルカリ」


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これは、いろんなものを手放し、
身も心も身軽になったミニマリストが、
「やりたいこと」に挑戦していくお話。

ぼくは明日死んでしまうかもしれない。
だから「やりたいことはやった」
という手応えをいつも持っていたい。

いざ、心の思うままに。

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メルカリだぁ~?? 

あれやろ女子大生がMOUSSYやらマーキュリーデュオやら交換してキャッキャウフフしとるやつやろう!! 男は黙ってヤフオクで1円出品たい!

みたいな偏見があった。

 

偏見だった。

モノの手放し方でたびたびメルカリのことを話題にするのだが、自分で使ったことがないのに紹介するのも気が引ける。まず自分がやってみなければ。

 

メルカリは本当にいろいろなものが今は出品されている。中古車まで売っている。(読書感想文や現金まで出品されていて一時期問題になった)。女子大生がEMODAやら、ROSEBUDやらを交換してるだけではないのだ! おっさんが参加してもいいのだ!!

 

最初に出品したのは、引っ越しでいらなくなったシーリングライト。照明です。

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丁寧に説明文や型番を記入する。このへんはメルカリだと雑にやっている人が結構いるので、ちゃんとするだけで高ポイントよ!!

 

写真は3枚だけの掲載。スマホで撮って、ポチポチと選択。あっという間に出品できた。。。。 なんだこの手軽さ。「き、君ねぇ…」と、あとで運営に呆れられるんじゃないかというぐらい、なんか抜けてる気がするけどこれで大丈夫。

そしていざ出品。まあ「ちょうど私、引っ越したばかりで照明が欲しかったんですぅ~」という女子大生なんてレアだろうから、気長に待つか……そう思った矢先、コメントが入る。

 

「買いたいと思うのですが、こちらの商品は値引きは可能ですか?」

……きたぁ!!

これがメルカリ噂の「値引き交渉」ってやつか!!

 

この照明は使用期間も短かったので、かなりキレイだった。新品で買えば8000円ほどの品を、4000円で出品。それでもメルカリに出してなければ、粗大ごみに出していたかもしれないし、買ってくれるという意思だけで嬉しい。……1000円ぐらいの値引きならいいかな。そう思った矢先、俺のなかに利根川が降りてきた。

「……つくづくのクズッ!! そうやってほだされ、骨までむしゃぶりつくされてようやく自分が地獄の釜の底にいることに気づく。救いようもなく羊っ!! 誰かに従うだけのッ、羊っ!!

 

いかんいかん。この小さなことがきっかけで初心者の俺はなめられはじめ「あいつ、チョロいよ」などという噂が広まり、最終的にはペリカ的なもので支払いをする状況にまで追い込まれてしまうのだ!!

 

意を決して、値引き交渉に立ち向かう。

「お安くしていますので、こちらの金額のままでお願いできますか?」

 

言ってやったぜ。しかし短い達成感の次にやってきたのは不安だった。

でも、照明だよ。「あ、俺、今照明欲しいかも!!」って思うのは、人生に2回ぐらいしかないんじゃない? 貴重な機会を逃してしまったのかもよ?

 

それは杞憂に終わった。すぐさま別の人が値引き交渉をすることもなく、購入してくれた。出品から1時間もたっていなかったと思う。なんか、運営の人が初回だから気を利かせてくれて裏で手を回してくれたのかと思ったわよ。

 

気を良くした俺は、リュックも出品する。

1年半前に2万円で買った品を1万5000円で出品。人気のブランドでもあり、15分後ぐらいに売れた。

なんというスピード感。さすが5000万ダウンロード。見ている人もスマホだから、絶対的に見ている数が多いんでしょうな。

 

「俺のこと、ずっと見ていてくれてたっていうのか」

部活を影で支えてくれていた、女子マネの気持ちにようやく気づいたときみたいになってくる。(そんな経験は当然ない)

 

ちゃんと「モノが売れた」というのは達成感もあるし、自分が認められた気にもなる。そして、コメントを通して人とのコミュニケーションも楽しめる。値引きをお願いする理由も嘘でも気が利いてると面白いんだって。その辺がメルカリの成功のポイントらしいですよ。

 

お金になるだけではなく、つまり売買すること自体が楽しいと。

 

配送は「らくらくメルカリ便」

売れるとスマホに、QRコードが配布されて……

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それを郵便局で見せると……

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兵庫にもらわれていく、ということより先は細かい配送先も知ることもなく、つまりそれを書き込む手間もなく発送されてゆく。。。

さっき出品したのに、もう発送まで完了したよ、母さん。

メルカリは海外進出もしていて、アメリカでは2500万ダウンロードだってよ。

すごい、便利! まさに革命!と思いもし、震撼もすることもあった(興味がある方は、「ぼくたちに、もうモノは必要ない。」で検索して無限スクロールをお楽しみください)。もはや「所有」という概念が揺らいでいるのだ。

 

間もなく、リュックは兵庫に到着。「思った以上にきれいな品で嬉しいです~」というコメントが。嬉しいこといってくれるじゃねぇか。もらわれていった大切な品に乾杯だ。

 

いてもたってもいられなくなった俺は、愛車の2002年式ロードスター MVリミテッドのレザーシートに身を滑り込ませ、なじみの高瀬川沿いのバーへと走らせる。

 

口ひげまで真っ白なマスターが、金縁眼鏡ごしの目で微笑み、いつものように俺を出迎えてくれる。

「マスター、グレンリベット。トゥワイスアップで」

俺は一連のメルカリのできごとをマスターに話した。

「なぁ、マスター。すごい時代だと思わないか」

「私にはよくわかりませんが、佐々木さんがそう言うならそうなんでしょうなぁ」

「時代は変わってるんだよマスター。でもこの街も店も何も変わらない。それも安心するんだけどね。……今度はその16年物、もらおうかな」

「いいんですか? せっかくお小遣いが入ったっていうのに」

「いいんだよ。あぶく銭は全部ウイスキーに変えることにしてるんだ

 

みたいな、ロードスター以降は全部妄想だし、飲酒運転フラグが立っているけど、とにかくそんな気分になったっていう話!!

 

【メルカリのコツ】

・めんどうなときは「値引きしません」と最初に書いておきましょう

・極端なものは売らない、買わない。

・商品説明は、デメリットも含めて正直に。丁寧に。


Written by sasaki fumio

作家/編集者/ミニマリスト 1979年生まれ。香川県出身。出版社3社を経てフリーに。2014年クリエイティブディレクターの沼畑直樹とともに、『Minimal&Ism』を開設。初の著書『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』(小社刊)は、国内16万部突破、22ヶ国語に翻訳される。新刊「ぼくたちは習慣で、できている。」が発売中。

»http://minimalism.jp/

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