【前編】テレビ、CM、メディアで話題沸騰!<br>芸人&パラデル漫画家・本多修さんにインタビュー

【前編】テレビ、CM、メディアで話題沸騰!
芸人&パラデル漫画家・本多修さんにインタビュー


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BOOKOUTジャーナルとは

知られざる想いを知る―。
いまいちばん会いたい人に、
いちばん聞きたいことを聞く、
ヒューマンインタビュー。
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撮影/長谷川梓
文/キンマサタカ

「パラパラ漫画の中のキャラクターが紙の外に飛び出す!?」……子供のころ、教科書の隅に書いて遊んだパラパラ漫画に、工夫を加えて作り出された唯一無二のコンテンツが人気を呼んでいます。その名も「パラデル漫画」。初めて見た人はみなその世界観にビックリ! 画期的なアイデアで話題沸騰のパラデル漫画の作者であり、コンビ芸人「魂の巾着」の本多修さんに、お話をお伺いしました。
この人に会いたかった!

2Dから3Dへ! 紙面から飛び出る「パラデル漫画」

 

――パラデル漫画って何なんでしょうか。

「最大の特徴は、一言で言うと、パラパラ漫画のキャラクターが紙から飛び出して実世界で動き出すという動画作品です。言葉で表すよりも、実際の作品を観ていただけたら、世界観なんかがわかると思います」

本多修さんのYouTube
https://www.youtube.com/watch?v=BlQRLKLp9yM

――2次元と3次元が行き交う、すごい作品です。絵はずっと描き続けてきたのでしょうか?

「昔から絵を描くのは好きでしたが、仕事にしていたわけではないんです。僕は芸人をやっていて、『魂の巾着』というコンビで活動しています。23歳でNSCに入ったので芸歴は12年になりますが、売れているとは言えません。でも、養成所にいた頃はすごく期待されてたんですよ。同期や先輩からも一目置かれていたし、1年目でM-1の3回戦まで進んだのも僕らだけでした。ネタを披露する授業では先生や先輩たちに『天才だ』と手放しで褒められたこともあるんです(笑)」

――その時披露したのがどんなネタだったかとても気になります。

「『ナナメを知らない』というネタでした。ボケの相方が最近「ナナメ」という概念を知ったという設定です。縦・横・上・下しか知らないで、その通りしか動けなかったら苦労するじゃないですか。数メートル前に落ちているものを拾う時は、まっすぐ歩いてまっすぐしゃんで取るということをずっとやってきたと。漢字の『八』を書くときは、紙を回して直線を2本書き、『炎』という字さら大変で…という内容がウケたんですね。」

――1年目でこのネタは書けないですね(笑)。

「当時はピースの又吉さんにも直接褒めていただきましたし、かなりちやほやされていました。でも、NSCを出てからは全然ウケない。愛されるキャラクターっているじゃないですか。最近だとひょっこりはんは、老若男女から人気ですけど、僕たちは彼みたいに誰からも愛されるようなキャラクターではないから、ネタの発想だけで勝負を続けていました。でも次第にいいものが書けなくなってしまったんです」

――期待された分、そのあと苦労されたんですね。

「10年くらい売れないまま芸人を続けていました。稼ぎなんてほとんどないのでアルバイト収入で生活をしていました。パラデルを思いついたのは1年くらい前。つい最近です」

――それはどんなきっかけで?

「実は謹慎処分を受けて、時間ができたんですよ。僕たち売れない芸人は舞台に出るのにチケットを買い取る必要があるんですが、それをすっかり忘れて劇場に出れなくなってしまいました。相方は家族がいるから、その間アルバイトで金を貯めると。じゃあ自分はどうしようか考えたときに、『お金はないけど、好きなことできるぞ。ラッキー』って思えたんです。あんなに作るのが好きだったネタもその当時は全然考えられなかったし、漫才に疲れていたのかもしれません。『11年やってこんなに売れてないんじゃ辞めるしかない』――そう思っていた時期でもありました」

――そこから絵を描こうと?

「いえいえ。幸い時間だけはあるから、まずはTwitterでどれだけリツイートをされるか頑張ったら楽しそうだなって思ったんです。昔から楽しそうなことがあると、すぐにそっちに行っちゃう性格なんです。それまではTwitterで面白いことを呟いたとしても 『20いいね!』がせいぜい。たくさんリツイートされるにはどうしたいいか研究を始めました」

――近づいてきた気がします。

「する『〇〇を踊ってみた』という動画が数字を稼いでいることがわかりました。でも、愛されキャラでもない僕が踊っても仕方ないでしょ(笑)。だったらパラパラ漫画を描いてキャラクターに踊らせてみようと思いついたんです」

――ついにパラデル漫画の誕生ですね!

「まずはパラパラ漫画の作り方をネットで調べました。最初の作品では紙に書いたキャラクターに人気アイドルの曲を踊らせました。ユーチューブで振り付けを調べながら描き始めたんですが、『うわ、描くの面倒くせえな』って思ってしまったんです」

――パラパラ漫画って、何十枚、何百枚と描かない気はするのですが?

「確かにそうなんですが、振り付けを全部きちんと描くのが面倒だったんです。そこで閃いたんです。『だったら途中でキャラクターの頭が取れて、紙の外に転げ落ちたらどうだろう』って。そうすれば途中の振り付けを描く手間が省けますし意外性もある。瞬間的に思いつきました。そうしたら350RT。周囲からも『あのアイデアすごい!』と大評判でした」

――まさに発想の転換ですね。

「でも、僕としては、『こんなに手抜きして作ったのに、こんなにいけるんだ』って思ったんですよね(笑)。あと、『そうか、紙の外に飛び出るのを売りにすればいいのか』と。次回作はこれまた人気アーティストの曲をパラパラ漫画に踊らせました。でも、本気で作り込んだにもかかわらず結果は150RT。『あれ、こんなに頑張ったのに』って、ガッカリしたのをよく覚えています」

――狙ったように数字が伸びなかった、ではどうされようと思ったのでしょう?

「もう、『踊ってみた』はいいやと。ここまで来たら自分が好きなことをやろうと開き直りました。その頃になると、紙から飛び出して、次に何をしたら広く受け入れられるか、その感覚もなんとなくわかってきましたから」

――そこで描いたのが……?

「はい。紙に描かれたキャラクターと僕自身が戦ったら面白そうだぞと。制作は2週間かかりましたが、その結果9万RT。数字を稼ごうとミーハーなことに寄せてもダメだったけど、自分が面白いことやろうと思ったらウケた。めちゃくちゃ気持ちよかったです!」

パラデル漫画を生み出した本多さんのユニークな人生と、かなり稀有な家庭環境は後編へ!

(→後編はこちら

本多修
パラデル漫画家、1983年生まれ。神奈川県出身。11人兄弟。
お笑いコンビ「魂の巾着」としても活躍(芸人時は“本多おさむ”)。
Twitterで「リツイート(RT)」を集めるため、特技の絵を生かして始めた「パラデル漫画」がTVやメディアで一気に拡散し話題に。最近では企業のCMに作品を提供するなど活躍の場を広げている。トヨタヴェルブリッツの2018シーズンは本多修によるパラデル漫画によるPVで開催。Twitter:@hondaosamu