【後編】テレビ、CM、メディアで話題沸騰!
芸人&パラデル漫画家・本多修さんにインタビュー
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BOOKOUTジャーナルとは
知られざる想いを知る―。
いまいちばん会いたい人に、
いちばん聞きたいことを聞く、
ヒューマンインタビュー。
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撮影/長谷川梓
文/キンマサタカ
「パラパラ漫画の中のキャラクターが紙の外に飛び出す!?」……子供のころ、教科書の隅に書いて遊んだパラパラ漫画に、工夫を加えて作り出された唯一無二のコンテンツが人気を呼んでいます。その名も「パラデル漫画」。初めて見た人はみなその世界観にビックリ! 画期的なアイデアで話題沸騰のパラデル漫画の作者であり、コンビ芸人「魂の巾着」の本多修さんに、お話をお伺いしました。
この人に会いたかった!(→前編はこちら)
――昔から芸人さんになりたかったんでしょうか?
「実は僕、芸人になりたかったわけではないんです。高校を出てすぐにフリーターになりました。最初は専門学校に通っていたんですが、すぐに飽きてしまってママチャリで日本一周を始めます。自分探しというより、ただ、それが楽しそうに思えてしまって」
――いいですね。芸人さんらしいスタートのような気がします。
「神奈川から出て、まず北上して北海道に行き、大阪、四国、九州へ。その後はフェリーで沖縄へ……結局2年間近く日本を回っていました。知らない人に恵んでもらうことはやめておこうと思っていましたが、若いから結構話しかけられましたね。『うちに来なよ』って、そのまま家に泊めてもらうこともありました」
――そのまんまテレビ番組のようです。
「確かに楽しくって。でも次に日本海側に行こうかなと思っていた矢先に沖縄でママチャリを盗まれてしまったんです。そしたら一気に冷めちゃったんですよね。で、親父が迎えに来てくれて、最後は飛行機で帰りました」
――やさしいお父さんですね。家族構成はどうなんでしょうか?
「僕は11人兄弟の3番目で、大家族で育ったんです。だから家にはいつも誰かがいました。18年間で11人生まれた計算で、小さい頃はお母さんのお腹はいつも膨らんでいた記憶しかありません(笑)」
――すごい!ビッグダディも顔負けですね。バタバタとしていそうです。
「家で遊ぶことも多かったんですけど、僕は昔から絵を描くことは好きでしたね。一番影響を受けたのは『ドラゴンボール』。写し紙をしいてトレースしていたんですが、次第に写さずに見て描くほうが面白くなって。『ろくでなしブルース』やジャンプの漫画はたくさんマネしました。とにかく一人遊びが好きでした」
――パラデル漫画にもその世界観が生きているんですか?
「はい。人形同士や文房具と戦わせるのも好きでしたね。セロハンテープだったら、シールで相手の動きを封じるだろうとか、セロハンなりの戦い方を考えるのが楽しかったんです。面白いことを考えたりやったりするのは、大人になっても好きですね。日本一周の後、大阪に滞在した時期に漫才を見る機会が増え、『芸人も楽しそうだな』と思い立ってNSCに入ったくらいですから」
――先ほどからお話を伺っていて、とても穏やかそうな性格にお見受けします。
「確かに、性格は穏やかかもしれません。怒ったりするのも苦手なんです。でも、ずる賢いところもありますよ。ただ、そのネガな部分はパラパラ漫画のキャラクターに投影しています」
――なにを考えながら描いているんですか?
「絵を描いている時間はいつも無心になっています。僕の作品は、特にオチは決めてないんです。描いているうちに勝手にキャラが動き出すと言えばいいんでしょうか。作っているうちに、『こっちの方が楽しそうだな』って思ったらそっちに変更する。僕にとって『楽しい』と自分が思えるかどうかが大事なキーになっているのかもしれません。これをこうやったらどうなるんだろう。もっと楽しくなるだろうか。それだけを常に考えています」
――楽しそうなことを見つける達人なんですね。
「基本的にはポジティブな性格だと思います。暗いよりは楽しい方がいいじゃないですか。そう言えば、以前ネタを書こうと思ってカフェに入ったらほぼ満席だったんですね。店内を見渡したら一つだけ席が空いていて、そーっと入って座ろうとしたら、横に座っていたおじさんが僕の太ももをを叩いて、『なに俺にケツ向けて入ってきてんだよ!!』って怒られたんです」
――突然?穏やかではないですね。
「その場は『すいません!』って謝ったんですけど、ふと『お尻を向けないで入ったら、この人はなんて言うんだろう』って。だから僕はわざわざ一回席を立って、もう一度、今度はそのおじさんの方を向きながら座席に座ったんです。そうしたら、また脚をパンパンと叩かれた」
――え?
「そしたら『やればできるじゃないか!』って褒められまして(笑)。最初はもちろん怖いな、嫌だなって思いましたよ。でも、そこで怒ることは簡単じゃないですか。でも興味が湧くとそっちにフラフラと行ってしまうんです」
――パラデル漫画には本多さんならではの視点が存分に盛り込まれているんですね。
「鉄拳さんと似ているけど、全然違うねって言われることがあります。僕は鉄拳さんみたいな作品を作ることはできないと思ったんです。だって、とにかく面倒くさいから(笑)。画力も、角度も、背景も、あの人の作品の労力はすごいんです。僕は面倒臭がりなので、楽な方法を生み出そうってすぐに思っちゃう。でも、そのおかげでいいアイデアが浮かぶことがある」
――面倒くさがりがいいアイデアを生む?
「とはいえ、実際には300〜500枚くらい描いているから、大変は大変なんです。でも。僕の中で楽したいって思うのは発想を転換するきっかけになる。自分の中で『楽をしたい』と思うのはとてもいいことなんです』
――楽をすることはいいこと。とても勇気をもらえる言葉です。
「昔は、紙の外に飛び出しまくっていたときがありました。それがウケるとわかっていたので、紙から飛び出して、ついには街に出て撮影をしていました。でもその時に『あれ、これは違うな』って思ったんです。これじゃただのアニメだ。これだったらもっともっとすごい人がいる、自分はここで戦っちゃダメだってすぐに気がつきました。パラパラでもないアニメでもない、それが「パラデル漫画」。机の上に紙があって、その周辺の小さい世界で起きる出来事を面白くしなくちゃいけない。ようやく「自分の戦える場所」がわかったんです」
「その場でBOOKOUTに直筆漫画を描いて頂きました!最初に描いたものに、『やはりもっと描き足していいですか?』と丁寧に仕上げて頂きました。作品にこだわっているのがわかります」
――今後の夢があれば教えてください。
「キャラクターにはパラオという名前がついていますが、今後はどんどんキャラクターに肉付けしないと。11人兄弟という設定もいいですね。海外からの反応も良くて、もしかすると、顔がない没個性な点がいいように作用したのかもしれない。でも、目を描いた方が可愛くできるし愛されるという意見もあるので……悩ましいところです。コンビの仕事は全然ありませんが、芸人も続けたい。相方も相方で、最近紙芝居の学校に通い始めた。『おい、俺と被ってるよ』って(笑)。でも、もしかすると相方のやる気に火をつけたのかも。それにしても、これまで金も稼げないで、よく芸人をやっていたと思います。でも、漫才でいいネタを作ってウケると嬉しいんです。僕の中ではどれだけ時間がかかっても、面白いネタができればそれでオッケー。あまり大きな声では言えませんが、パラオは相方よりもいい動きをしてくれる(笑)。これからも楽しい作品を作っていければ幸せだと思っています」