齋藤孝先生が伝授! 今こそ身につけたい『大人の対応力』


キレる、不機嫌になる、場の雰囲気を壊す、デリカシーがない、グレーゾーンがない。
社会には、そんな大人気ない人が溢れかえっています。

そんな現代にこそ求められる、“軽やかでユーモアのある大人”になるための極意を40のシチュエーションごとに紹介した、明治大学教授の齋藤孝先生の新刊『大人の対応力』。「為になる」「考え方が変わった」と、多くの反響をいただいています。

書籍の発売を記念して、今回は書籍に載っていないシチュエーションの「大人の対応」を教えていただきました。

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Q.近しい人の知人に出会ったときの、大人の対応とは?

家族の同僚や上司、また同僚の家族など、自分とは直接かかわりのない人に出会ったとき、「お世話になっております」の後に続くよい言葉が思い浮かびません。

どんな話をするのがよいのでしょうか。

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◇大人は下調べを欠かさない!

 初対面の人、しかも何の情報も持ちえない人と話すということは、いくらコミュニケーションに自信がある人でも、なかなか難しいものです。誰もが、なるべく避けたいシチュエーションかもしれませんね。 
 しかし、たとえ「自分とは直接かかわりのない」人物であっても、その人に関して、あなたが何らかの情報を持っていると仮定してみてください。それらの中から“ポジティブな”話題をピックアップし、「そういえば、犬を飼っていらっしゃると伺いました。私も犬が大好きなんですよ!」「お母様は園芸がご趣味なんですって? どんなものを育てていらっしゃるんですか」というように話しかければ、あっという間に会話が成立することでしょう。
 つまり、あらかじめ簡単な下調べを行い、たとえば「犬を飼っているらしい」「園芸の趣味を持っているらしい」などと、事前にいくつかの情報を入手しておくことで、スムーズな会話が成立するわけです。
 したがって、その人に近しい共通の人間(家族、同僚など)から、「どんな人なの?」「何か、知っていることある?」と、あらかじめ2〜3個程度の情報を聞き出しておくようにしてください。そうすることによって、そもそも「自分とは直接かかわりのない人」「まったく知らない人」といった前提からのスタートではなくなります。

 

◇共通の知人の話題を振ってみる!

 あるいは、初対面の方の話題ではなく、とり急ぎ、共通の近しい知人に関する話題を持ち出すのもよいかもしれません。立場上、私は学生の親御さんと話す機会が多くありますが、当然、ご家族に関する情報は持ち合わせないケースが多い。ですから、学生さん自身についてお話するわけです。「息子さんが、先日の授業で面白い発表をしてくれましてね。クラスの受けもよく、とても素晴らしかったんですよ!」。当然、ご家族は喜んでくださいます。このように、まずは共通の知人の話題を振ってみる、というのも一つの手でしょう。
 そういえば、以前、こんなこともありました。私が地方で講演会を行った際、突然、知人のご両親が訪ねていらしたのです。もちろん、その場に知人はいませんし、ご両親とは初対面です。突然の来訪ですから、下調べもできません……。
 ところが、知人との楽しいエピソードをお話しするうちに会話は非常に盛り上がり、結果、ご両親にはとても喜んでいただけました。話がのってくると、「先生については息子からよくお話を伺っております」などと話自体が膨らんでいきますし、会話に勢いがつけば「で、お父様はどういったご趣味をお持ちで?」など、初対面であっても当人同士の話に発展させていくことも難しくありません。
 このときは本当に話が盛り上がり、初対面にもかかわらず、また、講演前の慌ただしい時間にもかかわらず(笑)、気づけば30分以上も話してしまいました。

 

“ポジティブな”話題をセレクトする意味は?

 したがって、「自分とは直接かかわりのない人に出会ったとき」には、可能であればあらかじめ簡単な下調べをしておく、それが難しい場合には、とりあえず共通の知人の“ポジティブな”話題を振って雑談に変える、ということが「大人の対応」のポイントです。
 もちろん、地方で出会った知人のご両親には、二度と会わないかもしれません。しかし、ご両親を安心させるような“ポジティブな”情報を提供し、会話を盛り上げることによって、今後も継続的な関係性を続けていくであろう知人との仲が、堅固で良好なものになることは、言うまでもないでしょう。
 つまり、近しい人との良好な関係性を望むのであれば、一見「自分とは直接かかわりのない人」とであっても、“ポジティブな”話題をセレクトし、楽しい会話を持つことの意味が、自ずと見えてくるはずです。なにより、あなた自身が、楽しい時間を過ごすことが出来るでしょう。このような場合、マイナスでネガティブな会話では、誰のためにもなりません(笑)。くれぐれもご注意くださいね。

 ぜひ、“ポジティブな”大人の対応で、軽やかに乗り切りましょう!

 

大人の対応

・あらかじめその人にまつわる情報を2~3個程度集めておく
→「そういえば、犬を飼っていらっしゃると伺いました。私も犬が大好きなんですよ!」
 「お母様は園芸がご趣味なんですって? どんなものを育てていらっしゃるんですか」

・共通の知人のポジティブな話題を振ってみる
→「息子さんが、先日の授業で面白い発表をしてくれましてね。クラスの受けもよく、とても素晴らしかったんですよ!」

NG対応

「この人と話すことなんてないよ……」と、沈黙してしまう

 

齋藤先生の新刊『大人の対応力』は全国の書店、ネット書店にて好評発売中。
ついイラッとしてしまいそうになる状況でも、軽やかでユーモアのある返しをする。
大人の対応を身につければ、自分を守ることもでき、今よりもっと生きやすくなるはずです。

 

文/国実マヤコ

 

大人の対応力』(齋藤孝 著)
1,300円+税