【INTERVIEW】この夏、森崎ウィンがミュージカル『ジェイミー』で主演! 自身の人生と役柄をリンクさせ挑むという、「森崎ウィン」が演じるからこそのジェイミーに注目!

【INTERVIEW】この夏、森崎ウィンがミュージカル『ジェイミー』で主演! 自身の人生と役柄をリンクさせ挑むという、「森崎ウィン」が演じるからこそのジェイミーに注目!


森崎ウィンの活躍がめざましい。昨年は映画『蜜蜂と遠雷』で日本アカデミー賞・新人俳優賞を受賞、主演作『本気のしるし 劇場版』がカンヌ映画祭に選出、ブロードウェイ・ミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』では主役・トニーを演じるなど俳優としてのふり幅を見せてくれた。一方でアーティスト・MORISAKI WINとしても活動し、5月には1stアルバム『Flight』を発売。多彩な彼が次に挑むのは、8月から上演される、イギリス発の大人気ミュージカル『ジェイミー』だ。ドラァグクイーンに憧れ、周りと違う自分に葛藤しながらも、自分らしく生きる道を模索する主人公・ジェイミーを演じる。自身の経験とジェイミーの共通項を感じているという彼からは、新たに挑戦することへの期待や熱量が伝わってきた。

撮影/浦田大作 スタイリスト/小林聡一郎 文/浅川美咲

——昨年『ウエスト・サイド・ストーリー』に出演し、またミュージカルに出たかったと仰っていましたが、どんなところにミュージカルの魅力を感じましたか?

ナマモノというものに対して凄く魅力を感じました。元々音楽活動でライブなどもしていたので、生で、その場でしか生まれないものの美しさを改めて感じたり、『ウエスト・サイド・ストーリー』でもより一層その魅力を知れました。映像だと作って、編集があって数年後に公開という流れですが、ナマモノはみんなで準備をして、しっかり作って、その場で演じて見せていくという過程も魅力です。

——それでは『ジェイミー』のお話を頂いた時は是非という?

またミュージカルをやりたいと思っていたので是非! という感じでした。

——『ウエスト・サイド・ストーリー』の出演が、『ジェイミー』に生きてくることはありそうですか?

もちろんですよ。舞台での技術的なこともそうですが、舞台上に立った経験は凄く大きいなと思っています。役は全然違うので、直接的に繋がるかどうかというよりかは、おそらく自然とどこかで発揮されるんじゃないかなと思います。

——ミュージカルはお芝居をする以外に歌もあるので、意識しないといけないことが多そうです。

そうですね。今回はヒールを履くということもありますし…とにかくやることが多いとは思います。なので、入り込んでやりながらも俯瞰的に自分を見れる技術をつけなきゃいけないのかなとは純粋に思っています。というのと、単純に、芝居の合間に、急にぱっと歌わなきゃいけないので、喉の使い方については今一度、研究していかなきゃいけないなと強く思ってます。

——今回の楽曲を聞いてみてどんな印象を持ちましたか?

いい曲が多くてよかったと思いました。役の感情を歌ってるから、曲自体がいい悪いとかってことの判断をしづらいとは思うんですけど。でも、役に入る前に純粋に楽曲だけを聞いた時に、この曲かっこいいな、この曲いいなって思えてること自体が凄く幸せだなと思いました。

——歌の稽古に入られたそうですね(取材時6月上旬)。

僕は今日が初日でした。まずは音撮りのところから始まって。聞いてる時はかっこいいんですけど、実際に歌うとなると結構課題が多いなと思いました。声の出し方もそうなんですけど、スケールとかがブルージーにいったりとか、ブルーノートにいくようなところが結構多かったりするのですが、僕の中ではあまり染み付いていない音階に行くことが結構多くて。あとは、海外版でもみんなやっているんですけど、役として歌っていますが、全然最後フェイクしていいよって言われたりもするので、研究しながらやっていけたらなと。

——お話を聞いていて、熱量や凄くポジティブな感じが伝わってきます。

今は新しいことを学んでいるという感覚なんですよね。お金を頂いて公演するプロとしての立場で発言するべきことなのかわかりませんが…新たな自分に出会えるような気がしていて。こういう経験って今までしたことがないから、それを会得した時に楽しいんだろうなって。稽古期間でしっかり会得出来るように研究していきたいと思っています。

——5月には、日比谷フェスティバルで無観客配信を行なわれて。

純粋に楽曲だけ歌っていて、凄く楽しかったです。やっぱりいい曲だなと思いながら、逆にその前後の芝居が気になり始めて。

——脚本を読ませて頂いて力強い作品だなと感じましたが、森崎さんは『ジェイミー』をどのような作品だと感じましたか?

僕は脚本を読んだ時に、凄く勇気をもらったなというのが第一印象でありました。本当に今の時代にぴったりの、今の時代だからこそ伝えるべきメッセージが凄く詰まった題材です。自分が演じる側として、こういう言い方をするのはあまりよくないかもしれませんが、あえて言うと、この作品と似ているような作品ってあると思うんですよ。ただ、ドキュメンタリーから生まれてる作品は聞いたことがなくて。ドキュメンタリーだと生々しかったりしてしまう部分があると思いますが、それをちゃんとエンターテインメントに落としています。伝えたいポイントが明確ですし。それに、“自分らしくいていいんだよ”ってことを、主役が直接的に言わなくてもそれを体現していく。色々な変化を越えていく中で、ポジティブに越えていく彼がいるんですよね。そこに大きな勇気をもらうなと思います。ジェイミーの昔の辛かったことも、もちろんちょっとは描かれますが、収まりきらないものも多分たくさんあって。それを想像させられたような気がしています。だけど、苦しんでもいいんだなってことを感じましたし、苦しんだその先にはきっと、ポジティブにとらえて前に前に進んでいくことで得られることってあるんだなと改めて感じさせられたような作品です。

——この作品とご自身の人生と重ね合わせた部分はあったのでしょうか?

“自分らしくいていいんだよ”というメッセージは、色んなミュージカルや色んな作品で伝え継がれているもののひとつではあると思いますが、いざ自分がやるというのは、ほぼほぼ初めてです。今回はティーンエイジャーを題材にしていますが、この想いは、ティーンだけの特有のものではないと僕は凄く感じていて。僕は30歳になってそれでも新たな自分を探しています。今は、自分らしくいることの難しさを余計にわかってきましたが、自分らしくいれるような環境もちょっとずつ増えてきている。だけどまだまだ自分を探し求めているってことに関しては、ジェイミーと重なる部分がたくさんあるなと思います。今回、ジェイミーを演じることで自分と向き合って、また人間としても大きく成長…と言ったら凄く大きなことになってしまいますが、それぐらいの覚悟でやりたいです。

——ジェイミーを演じるにあたり、役の広げ方はどのようにされましたか?

稽古自体はこれからなので今後もっと作り上げていきますが、台本に書かれてることだけから想像すると、僕自身はドラァグクイーンに憧れた訳ではないですが、誰しもが持つような家族問題だったり、周りとの関係性だったり、自分だけ何かが違うという違和感を感じるなど…僕自身凄く通ってきたところもあるんです。なので、ジェイミーという新たな人物を作るというよりかは、自分自身の人生を辿って、それをジェイミーに投影しながら、ジェイミーの言葉で吐いていくとちょっと面白くなるんじゃないかなと思っていて。僕の人生との接点をどんどん作ってそれを引き出してみたいなと思います。

——なぜこの時に、この作品や役が自分のところに来たんだろう? と考えるそうですね。

昔、先輩に『作品との出会いって縁だからね』と言われたんですよ。その時の僕はイマイチ理解出来てなくて。でも今になって、作品や役が来るのはきっとなにかの暗示なんだと凄く感じる瞬間があるんですよね。今回『ジェイミー』のお話が来て、台本を読んだ時にめっちゃわかるなあって思う部分が多くて…。それに今年に入って、自分の家族と一回向き合おうと決めた瞬間があったんです。それはマイナスなことじゃなくて、プラスに。年齢も年齢ですし、こういうコロナの時期だからこそ、今後の家族の方針だったり、離れて暮らしているので、今まで以上に連絡をとったり。そういうことをしていこうと決めた瞬間でもあって。それから『ジェイミー』の台本が来て、読ませてもらって、面白いくらいになにか色々繋がっているなと感じたんですよね。そういうこともあって、今回は凄く作りこまなきゃというよりは、今の自分や過去の自分、これからこうしたいなと思う自分を役に投影していくのもひとつの手段になるんじゃないかなって今回初めてそう思ってます。

——このタイミングで、出会うべく作品に出会ったという。

絶対にそうですね。僕自身もこれはやる意味が大きくあると思います。

——森崎さんは俳優としても、アーティストとしてもご活躍中ですが、俳優でいる時と、アーティストでいる時の心境は違いますか?

違います。俳優としている時は誰かの言葉を代弁する、誰かが作った言葉、誰かが作った企画を僕の身体を使って、代弁してその役として表現して、そこから受け手が受け取るメッセージがある。重い責任もありますが、そういう感覚でいて。もちろんちゃんと理解して、自分の言葉として発してる瞬間は自然とありますが、脚本をもらった時の一番最初の印象としては、こういうストーリーなんだ! と、一視聴者として自分が観ているような感覚なんです。そこからその言葉達を自分の言葉になるように、自分が役に近づくのか、役を自分に近づけるのかという作業をしていきます。一方で、アーティストになると全てが自分の言葉になってしまうという感覚です。アーティストでいると、例えば僕のこの手の動きひとつも自分の意志で動かしているような感覚で…上手く説明が出来ないのですが…。

——そんな森崎さんの今後の目指す先は?

言葉にするとライトに感じるかもしれませんが、目標としては“森崎ウィン”って言うブランドを作りたいです。事務所の先輩を例にすると、山田さんは、“山田孝之ってこれだよね”っていうものがあると思います。だけど平坦にいかない部分もあると思いますし、でも彼は彼の信念をもって、しっかりやって、映画業界にもちゃんと自分が出来ることで恩返ししていて、凄く魅力的に感じるんですよね。僕がそれと同じことをやりたいというよりかは、“森崎ウィンはこうです”ということを、もっと提示していってもいいかなって思います。

衣裳協力:JOHN SMEDLEY、TIMONE、UNDECORATED


  ●プロフィール
森崎ウィン/もりさき・うぃん
1990年8月20日生まれ、ミャンマー出身。小学4年の時に両親と日本に移り住む。2008年、ダンスボーカルユニットPRIZMAX(現、解散)に加入。その後「MORISAKI WIN」としてメジャーデビュー。14年、映画『シェリー』で初主演。日本ミャンマー共同制作映画『My Country My Home』に主演し、故郷ミャンマーでもブレイク。2018年、スティーヴン・スピルバーグ監督の映画『レディ・プレイヤー1』のオーディションでダイトウ/トシロウ役をつかむ。『蜜蜂と遠雷』『妖怪人間ベラ』『本気のしるし』など話題作に次々と出演している。21年は映画『都会のトム&ソーヤ』(7月30日公開)、主演作『僕と彼女とラリーと 』(10月1日公開)を控え、22年にはミュージカル『ピピン』に主演・ピピン役で出演する。


    

●作品紹介

『ジェイミー』
日本版演出・振付/ジェフリー・ペイジ
翻訳・訳詞/福田響志
音楽/ダン・ギレスピー・セルズ
作/トム・マックレー
出演/森崎ウィン/高橋颯(WATWING)(Wキャスト) 安蘭けい 田村芽実/山口乃々華 
佐藤流司/矢部昌暉(DISH//)(Wキャスト) 保坂知寿 今井清隆 石川禅 ほか

<東京公演>
期間:2021年8月8日(日)~29日(日)
会場:東京建物Brillia HALL
チケット発売中

<大阪公演>
期間:2021年9月4日(土)~12日(日)
会場:新歌舞伎座
チケット発売中

<愛知公演>
期間:2021年9月25日(土)・26日(日)
ー9月25日(土)18:00
ー9月26日(日)13:00
会場:愛知県芸術劇場 大ホール
チケット発売中

衣裳協力:JOHN SMEDLEY、TIMONE、UNDECORATED