【INTERVIEW】ドラマ『ボイスⅡ 110緊急指令室』で存在感を見せた中川大輔。演技への想いとこれまでのキャリアを振り返る。
現在放送中のドラマ『ボイスⅡ 110緊急指令室』にて、捜査一課の捜査員・片桐優斗役で存在感を発揮している俳優の中川大輔。先輩にも物怖じせずキツい言葉を浴びせる、というこれまで彼が演じた役とはガラッと異なった役柄だったが、どのように演じたのか。ドラマの裏側や、主演の唐沢寿明さんからかけられた言葉についてなどに話がおよびながら、お芝居についての取り組みを、彼自身の芸能生活を振り返りつつ聞いてみた。
撮影/浦田大作 文/佐久間隆
――ドラマ「ボイスⅡ 110緊急指令室」に捜査一課の捜査員・片桐優斗役で出演されましたが、この役を演じてみていかがでしたか?
これまで自分が演じる役は、比較的明るい役が多かったんですけど、この片桐の役は、先輩にもガンガンキツい言葉も言うし、掴みかかったりもする。普段の自分とは真逆の人物だったので、現場に入ってからはスイッチを切り替えて挑みました。
――普段のご自身に近い役と、今回の片桐のようにご自身とは真逆の役、それぞれ演じ方は違うと思うんですが、やりやすい、やりづらいで言うとどちらでしたか?
自分と近い役と比べて、今回のような遠い役の方がやっていてワクワクする感じがありました。普段、相手に噛み付いたり、嫌なことを言う事が本当にないので、役に入り込みすぎて、多分アドレナリンみたいなものが出ていたと思います(笑)
――今回片桐を演じる上で心がけていたことってありますか?
これまで以上に演じる相手と視聴者に意識を向けたことです。セリフで相手に嫌なことを言う時は、本当に相手を怒らせたい。だから視聴者の方にも片桐の言うことでイライラしてほしい。そんな意識で演じたんですが、例えば唐沢寿明さん演じる樋口さんを怒らせようとしても、全然相手にしていない感じが返ってきたりとか、真木よう子さん演じるひかりさんに嫌なことを言って怒られるかと思ったら、悲しい表情が返ってきたりとか。自分の想像していたリアクションとは違って、それは凄く楽しかったし、勉強になりました。
――凄いプロの現場ですね、、、!
そうですね。出演者の皆さんはもちろん、技術の方々やスタッフさんも長年やられている方が多いので緊張感がありましたし、その分、いつもの力よりもっと凄いものを引き出していただいた感じがあります。
――役作りについて、どなたかにアドバイスをもらったりする事はあるんですか?
基本的にはマネージャーさんと一回読み合わせをして、相談します。今回も一度台本を読んでみて、こんな感じの役かなと自分の中で固めてからマネージャーさんと読み合わせして、そこでしっくり来たら、監督さんにも「こういうイメージで合ってますか?」と確認していきました。
――中川さんの演じる役は、「俺のスカート、どこ行った?」の須長役もそうですが、非常に印象に残りますよね。
ありがたいですね。少ない出演シーンだったとしても、反響をいただいたりするととても嬉しいですし、ファンの方からの言葉でも、かなり前の作品の「OOを見た時からずっと応援しています」とか言ってくださったりすると、見ている人は見てくれているなと改めて感じます。今回の現場で言うと、監督さんがシーンが終わるごとに、僕に限らず出演者に感想を言ってくださる方だったので、凄く嬉しかったです。感想をいただけると次に向けて気持ちを作っていきやすいということも感じることが出来ました。
――これまでの芸能生活で一番印象に残ってることはありますか?
今年の1月号でメンズノンノの表紙を、メンズノンノのモデル5人で飾らせてもらった事です。そこがひとつの大きな目標だったので、最初に「表紙だよ」と聞いた時はとても嬉しかったです。次は単独で表紙を飾れるように頑張ります。
――このお仕事をされていて、ご自身で転機になったなって思う出来事ってありますか?
やはり役者を始めた事です。メンズノンノのモデルから役者になることは世間的には珍しくないイメージだと思うんですけど、本人に明確な意志がないと編集部の方も推薦してくれないんです。だから最初に役者をやるかどうかは凄く悩んだんですが、今その時だと想像もできなかった事を沢山させてもらっているので、やると決めてよかったなって思います。
――お話を伺って、中川さんって凄く真面目なんだなって改めて思いました。やる意思を見せたらやれる、って状況だったら、大体の人が「じゃあとりあえずやってみようかな」って思うんじゃないかなって。
それはやはり、中途半端な気持ちでやったら、推薦してくださった方にも、後輩にも申し訳ないなって思うので。
――素晴らしいですね。でも一度もお芝居の経験がないまま、役者のキャリアをスタートさせたってことですもんね。かなり大変だったのではないでしょうか。
そうですね、まず人前でお芝居をする、と言うことに対して緊張感をなくすまでが凄く大変でした。演技レッスンを受けた帰り道、電車で20分くらいのところに住んでいたんですが、終わったあとに色々考えたり反省したりすると電車で帰ることができなくて、2時間くらいかけて歩いて、その間ずっと考えながら帰っていました(笑)。
――なんかとてもグッと来る話ですね、、、!
だから最初はただただ目の前に来る事に対して、見ている事しかできない、そんな手応えだったんですが、「仮面ライダーゼロワン」の16話あたりで自分の中では突破できた感覚があって。
――16話と覚えてるのも凄いですね。
僕の役がフィーチャーされる話があったのが大きいですね。ライダーの現場自体も、本当自分的にはいいタイミングで参加させてもらったなって思っていて。ほかの出演者も僕と同じように、お芝居の経験がそこまでない方が多かったのと、ライダーの現場自体がそういう真っ白な人たちを教えていくのが上手なスタッフさんが多いんです。レッスンで習った事をすぐに実践できるし、本当に良い時間だったなと思います。
――ドラマ「ボイスⅡ 110緊急指令室」これが掲載される頃には大詰めですが、片桐は内通者だったんですね、、、
そうなんです……。
――すごく純粋な質問なんですけど、こういうネタバレ、例えば「片桐が内通者だった」みたいな事って、最初からご本人は説明されて、分かっていて演じるものなんですか?
今回は教えていただけないまま演じていました。ただ台本を読んでいて「じっと見つめる片桐」みたいな描写はあったので、じゃあちょっと内通者って気持ちで演じてみようと考えて。怪しさの度合いは編集でおまかせしようと色々な怪しさで演じてみました。
――それが当たっていたという事ですね。中川さん凄いですね……!
いえいえ、現場での空気感や台本に書かれていることを忠実にやっていただけです(笑)。8話の最後で内通者だという事がバレるんですが、そこでそれまでの片桐とは印象の変化をつけたいと凄く意識しました。というのも唐沢さんが以前インタビューで「若手俳優が同じ役で、どれくらい違う印象をつけられるか、というのを自分は見ている」という様なことをおっしゃっていて。それを読んだのはこのドラマが決まるずっと前なんですけど、それを思い出して、8話の最後の片桐は、これまでの「嫌な奴」だけじゃない、違う印象を見ている人につけられたらなと思っていました。
――いい話ですね! 唐沢さんから、お芝居について「良かったよ」みたいな言葉ってありましたか?
それはまだまだありませんが、注意はしていただきました(笑)。本当に現場では色々教えていただいています。全体を見てらっしゃる方で、「お前、そんな所いたら照明が当たらないだろ」など現場での居方についても教えていただいて(笑)。本当兄貴みたいに思っています。
――唐沢さんとしては、自分のインタビューの言葉を覚えていて、それを念頭においてお芝居するということを後輩がやってくれていたら、嬉しいんじゃないでしょうか。
伝わっているかどうかは分からないんですけど、ただ最後に「次はもっとガッツリやろうな」って声をかけてくださったのは、自分にとって一番の褒め言葉でした。僕の中では「また一緒にやろうよ」と唐沢さんに言っていただいたと解釈してまして……。凄く嬉しかったです。
●プロフィール
中川大輔/なかがわ・だいすけ
1998年1月5日生まれ。東京都出身。2016年、第31回メンズノンノ専属モデルオーディションでグランプリを獲得。モデル業を続けながら俳優業もスタートし、19年ドラマ『俺のスカート、どこ行った?』で初レギュラー出演。同年9月より放送の『仮面ライダーゼロワン』で迅役に抜擢され一躍注目を浴びる。21年はドラマ『監察医 朝顔』第2シリーズ新春SP、『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』、『カラフルブル~ジェンダーレス男子に愛されています。~』、『ボイスⅡ 110緊急指令室』、Vシネクスト『ゼロワン Others 仮面ライダー滅亡迅雷』など話題作への出演が続き、11月1日~『阿佐ヶ谷姉妹の のほほんふたり暮らし』が放送される。その他、ラジオ好きが高じてメンズノンノラジオに出演するほか、10/16(土)に渋谷・シダックスカルチャーホールにて初のファンイベントを開催する。