【INTERVIEW】放送中のTBS日曜劇場『下剋上球児』に出演している絃瀬聡一。越山高校野球部の一員、紅岡祥悟を演じている。同世代の俳優が多くいる現場で吸収したことや、お芝居との向き合い方を聞いた。

【INTERVIEW】放送中のTBS日曜劇場『下剋上球児』に出演している絃瀬聡一。越山高校野球部の一員、紅岡祥悟を演じている。同世代の俳優が多くいる現場で吸収したことや、お芝居との向き合い方を聞いた。


鈴木亮平主演のTBS日曜劇場『下剋上球児』。高校野球を通して、現代社会の教育や地域、家族が抱える問題やさまざまな愛を描く、ドリームヒューマンエンターテインメント。オーディションを経て出演を勝ち取った絃瀬聡一。紅岡祥悟の役どころや、撮影での日々など本作についてたっぷりと話を聞いた。

撮影/浦田大作 文/太刀川梨々花

――約半年に亘るオーディションを経ての出演でしたが、オーディションの日々を振り返ってみていかがですか。

「とにかく凄く大変なオーディションでした。野球経験でいうと、僕は小学生のころに3年間しかやっていなくて、でも実際にオーディションを受けてみたら周りには高校生までやっていた方ばかりで野球だと敵わないなと正直思ってしまって。なので、何か一つに特化して、『ここを見せよう』というのを決めて挑みました。例えば、野球ではドラマになる上でフォームや見栄えが綺麗になるように意識しました。あと、僕は中学、高校のころに陸上をしていたので、走る場面がある時に備えて走りの練習もしました」

――高校球児という役どころもあって、体づくりや食トレなども大事になってくるのかなと思いますが、具体的に何かされましたか?

「僕は凄く細身なのですが、野球とかスポーツをやっていると自然と筋肉はつくものです。バッティングをする上での足腰、上半身、腕、胸を一回り大きくつけられるようにジムには通っていました。僕が演じている紅岡祥悟という役は、野球経験が浅いのと、チャラチャラしていてフワフワしているキャラクターなので、体がガッチリしていると紅岡のイメージには合わないんじゃないかなと思って食事に関しては、意識していることは特にないです。標準よりは少し大盛を食べていたくらいです(笑)」

――現場に入ってみて、紅岡に対するアプローチの仕方は変わりましたか?

「変わりましたね。脚本を読んだ時の印象はヤンキーまではなれていない、少しチャラついているような子だと思っていたのですが、根はみんなに優しい。現場に入ってみて、学校は楽しいし、みんなのこと好きだし、野球のプレーシーンではかっこいいところを見せたいと思っている紅岡もいて、紅岡のことがもっと好きになりました。パッと見で偏見をもたれるようなキャラクターかもしれないですが、関わってみると凄く愛されるキャラクターだなと感じました」

――物語は野球についてだけでなく、南雲先生が抱えていた問題などシリアスな部分も描かれていて、今後の展開が気になるような凄く面白い作品ですよね。絃瀬さんは脚本を読んでどんなことを感じましたか。

「南雲先生がしていたことは、まず普通じゃあり得ない、それでも色んな生徒から信頼を得ているのには何らかの理由があるんだろうなと思いながらずっと読んでいて。実際に現場に入ってからも南雲先生を見ているだけで勝手に信頼出来て、やっぱりこの先生好きだなと思いました。教員免許を持っていないこととか生徒間でのストーリーや家庭のことなど全て詰まっていて、シリアスな部分はリアルな人間ドラマですよね。それから、地域みんなで協力していく感じが僕は凄く好きです。最初は教師なんて口だけだって思っていた、僕ら生徒もどんどん考え方が変わって成長していく姿が見られるのが素敵なドラマだなと思いました」

――現在放送中(取材時では4話まで放送済み)ですが、リアルタイムでご覧になっていますか。

「もちろん見ています! 僕、福岡出身なので今回の三重弁がとても難しくて苦戦していたんです…。4話まで見て、上手い人は凄く上手くて自然です。でも、僕のお芝居は何か足りないな、三重の方々に「三重ってこれだ」という親近感をもっと感じてもらいたいと思っていたので、三重弁でのお芝居や、野球のプレーももう少し綺麗に出来たら…と思ったり、そういうところは反省点でした」

 ――方言に関しては何かをみて勉強されたんですか?

「セリフのところを三重弁の音声データで送っていただくので、それを聞きながら練習しました。聞いたものをそのまま言っても自分の中で凄い違和感があって…。現場には関西出身の球児の子達がいたので、みんなと相談して、不安なところがあったら間違ってないか確認しながら一緒に作品を作っていました」

――今回の現場は、同世代の俳優が多くいますが、雰囲気など何か感じたことはありましたか?

「凄く明るい現場です。球児12人でいると、本当に自分達は今高校生かのような感覚で会話をしたり、誰かにちょっかいをかけたり、誰かが寝坊してしまった時のことをひたすら弄ったりとか、そういうノリがあって凄く明るいです。でも、みんなちゃんとやる時はやるっていうスイッチがあります。現場はとにかく楽しいですね」

――撮影中はアドリブも結構あったようですね。

「野球部ってこんな感じじゃないかっていうのをみんなで想像してやっていて。例えば、先生が話している時に聞いてない人は聞いてないし、後ろで喋っている人もいるしとか。練習中でもふざけている人もいるしという感じなので、台本のセリフに囚われず本当に自分が球児になったかのようにやっています。実際にお芝居をしている感覚があまりなくて、野球をしているところをたまたま撮られた感覚に近いです。撮影の仕方も凄く特殊で。テストから回していて、テストで撮っていたものがよかったらそのまま使われていることもあります。アドリブに対する、「いまこうだから、こうしよう」みたいな考えて持ち込むとかはあまりないです」

――鈴木亮平さんと黒木華さんとはお話する機会はありましたか。

「グラウンドのベンチで待っている時にお話させて頂く機会があったのですが、やっぱり亮平さんと黒木さんのお芝居をみて尊敬する部分が沢山ありますし、僕らを引っ張って頂いている感覚があります。お二人が野球のプレーシーンではみんなに引っ張ってもらってると言って下さるのが凄く嬉しくて、更に気合いが入りました。7話の冒頭で、僕ら2年生の代が引退する試合があるのですが、撮り終わったあとに亮平さんから握手をして下さって、『お疲れ様。ナイスゲームだったよ』と言葉を頂けたのが凄く嬉しかったです。作中では、僕ら2年生は南雲先生に野球を教わるシーンがあまりなくて、山住先生の代というか、南雲先生がいない間に公式戦がきて挑んでいたので、南雲先生にもっと教わりたかったなという思いと、山住先生にはもっといい試合をして勝ったところを見せたかったなと凄く思いました」

――今回の作品を通して、発見や気づきはありましたか?

「球児達はオーディションの時から長い間一緒なので、最初のころと印象が大きく変わりました。静かそうな子が意外と結構お喋りだったとか、色んなギャップを感じました。それがお芝居になるとまた変わって、「この人がお芝居をするとこうなるんだ」という新たな発見でした。それこそ、日沖壮磨役の小林虎之介君はこの12人の中で最年長なんですが、実際に接していると、凄く可愛らしいところがあって愛されキャラなので、僕からすると4つも上なのですが、弟に見えてしまうようなかわいらしさがあるんです。でも、役に入ると、壮磨として凄くかっこよくて、こういう表情になるんだとか。自分のお芝居でもどういう風に映っているのか意識するようになった気がします」

――ドラマは終盤に差し掛かってきます。改めて注目してほしいところを教えて下さい。

「最後の最後まで野球シーンにはやっぱり期待してほしいです! 僕ら2年生は引退試合が終わって、OBになるので最初は嫌な先輩やっていたかもしれないですけど、それでも後輩のことが好きだし、心配だし、応援にも行きます。そして、地域の温かさを最後まで感じてほしいです!」

――ご自身についてもお伺いさせて頂きます。絃瀬さんが芸能界に興味をもったきっかけは何ですか?

「TikTokです。最初は見ているだけだったのですが、友達とノリで撮ってみたんです。実際に撮ってみた動画の中で、バズりにバズりまくったのが一つあって。当時は、地元の高校に通っていて、芸能活動とは程遠い世界だったのですが、今の事務所のホリプロさんから『オーディション受けてみませんか?』というメッセージが来ていたんです。今までお芝居はやったこともなかったですし、ドラマとか映画も見るだけで、凄いなこの俳優さん、凄く良い映画だなという感覚でいた田舎の僕が目指せるんだって思った時に凄くやってみたい、挑戦してみたいって思ったのがきっかけです」

――その時のオーディションはお芝居もあったんですか?

「その時に初めてお芝居をして凄く変な感覚でした。ずっと緊張していたのを覚えています。当時は17歳で、ずっと中学、高校と陸上をして過ごしていた僕が、お芝居をしているから変な感覚で。でも一緒に受けていたオーディションメンバーも大体僕と同じで初めての子もいたので、負けたくないなっていう気持ちがありました」

――今後やってみたい役どころや、表現してみたいものなどありますか?

「アクション系の映画が大好きなので、体を使ったお芝居をしてみたいです。喧嘩シーンや凄く迫力があるものに出演してみたいと思います。『今日から俺は!!』が凄く好きで、学園ものやコメディーにも挑戦してみたいです」

――今後の俳優としてのビジョンや理想の俳優像みたいなものがあったら教えて下さい。

「先の話をすると僕は韓国語が出来るので、韓国語でのお芝居をしてみたいです。あと、英語も少しずつ勉強している段階で、全然まだ喋れないですが、英語も極めて、英語でのお芝居、韓国語でのお芝居に挑戦してみたいです。最終的な目標は、海外でも活躍できるような俳優になりたいなと思っています」


●プロフィール
絃瀬聡一/いとせ・そういち
2001年6月11日生まれ。19年、ドラマ『集団左遷!!』で俳優デビュー。現在は、ドラマ『下剋上球児』に出演中。


●作品紹介
日曜劇場『下剋上球児』
原案/菊地高弘「下剋上球児」(カンゼン刊)
脚本/奥寺佐渡子
演出/塚原あゆ子 山室大輔 濱野大輝 棚澤孝義
出演/鈴木亮平 黒木華 井川遥 生瀬勝久 明日海りお 山下美月(乃木坂46)きょん(コットン)/松平健/小泉孝太郎 小日向文世 ほか

南雲(鈴木亮平)が監督に復帰して1年。越山高校野球部は“日本一の下剋上”を目指し、夏の大会で34年ぶりにベスト8に進出していた。地元の後押しを受けて準々決勝も突破した部員たちだったが、どこか緊張感を欠いており、南雲と山住(黒木華)は不安な思いを抱えていた。迎える準決勝で対するは賀門(松平健)率いる強豪・星葉高校。南雲にとっては教員免許の一件以来決別した賀門との師弟対決。甲子園出場へ重要な一戦の先発に、南雲はエースの翔(中沢元紀)か、成長著しい根室(兵頭功海)にするかで頭を悩ませていた。そんな中、練習中に山住に打球が直撃するアクシデントが起こる。動揺する部員に、山住は「南雲にはこのことを言わないように」と釘をさすが…。
毎週日曜夜9時~TBS系にて放送中。