【INTERVIEW】U-NEXT制作『賭けからはじまるサヨナラの恋』で自身初、本格ラブコメの主演を務めた山崎紘菜。役柄や自身のヒロイン像について慎重に言葉を紡ぐ姿から見えてきたのは、芝居に対する真摯な想いと堅実さそのものだった。

【INTERVIEW】U-NEXT制作『賭けからはじまるサヨナラの恋』で自身初、本格ラブコメの主演を務めた山崎紘菜。役柄や自身のヒロイン像について慎重に言葉を紡ぐ姿から見えてきたのは、芝居に対する真摯な想いと堅実さそのものだった。


徹底した仕事ぶりと無愛想な振る舞いから“氷鉄の女”と呼ばれる一方で、6年間もの片思いをこじらせる超絶クールな妄想ヒロイン・吉永奈央。長年の片思いがついに動きだす…!という直球ラブコメかと思いきや、そのきっかけは優柔不断な恋のお相手・里村紘一(小関裕太)の取り巻きによって仕掛けられた“賭け”。偽から始まる恋に、切なくも一喜一憂しながら多彩な表情を見せる“愛されヒロイン”を、山崎紘菜はどう体現していったのか?

撮影/浦田大作 スタイリスト/道端亜未 ヘアメイク/上野祐実 文/田畑早貴

――1話を拝見しましたが、里村のことを好きすぎる奈央がもう愛おしくて。山崎さんの今まで見たことのないような表情もたくさん見られる作品になっていますね。最初に台本を読んだ時は、どんな感想を持たれたのでしょうか?

「今作の台本は原作のマンガにとても忠実で、セリフもそのまま引用されている箇所が多かったので、原作へのリスペクトを強く感じました。なので、原作の奈央を大切にしようと思いました」

――原作者のポルン先生が、山崎さんの奈央について“完全一致だ!”というような歓喜のメッセージを送られていましたね。私もうなずきが止まらなかったのですが……

「原作者の先生に喜んでいただけたのはとても嬉しかったです。実際に原作者の先生おふたりともが撮影現場にいらして、前向きな言葉をかけてくださって。凄く励みになりました」

――奈央を演じるにあたって、まずはどんなことを備えられたのでしょうか?

「本格的なラブコメ作品に、ここまでしっかりと携わらせていただくことが初めてだったので、まずはコメディの部分、どうしたら面白く演じることができるだろうということを常に考えていました。なので、コメディ作品をたくさん見て勉強しました。特に参考にしていたのが『ブリジット・ジョーンズの日記』。今作は奈央の心の声がモノローグとしてたくさん出てくるのですが、『ブリジット・ジョーンズの日記』でもヒロインの心の声が日記形式でナレーションとしてたくさん入っていて。主人公ブリジットの、不器用でどこか格好つかないところや、ちょっと抜けているところなどの可愛らしいお芝居も参考にさせていただきました」

――本格ラブコメの主演が初挑戦ということですが、撮影に臨む際はどんな気持ちでしたか。

「初めてのことや、知らないことは何事も怖いと思うので、初挑戦ゆえのプレッシャーみたいなものは感じていました。主演という責任も大きかったです。でもいざ現場に入ったら、奈央を演じるのが本当に楽しくて。毎日撮影に行くのが楽しみで仕方なかったです。それに奈央を演じていると、彼女の前向きさに引っ張られて自然と自分も明るい気持ちになれました」

――奈央は会社では一貫してクールで冷徹ですが、里村のことになると一転、その姿にひとり悶えていたり、脳内で甘い妄想を繰り広げたり…と里村への“好き”を(あくまで心の内で)大爆発させています。

「それこそ“推し活”みたいなことだと思います。里村を、好きなアイドルのように追いかけて応援する気持ち。私自身、“推し活”をしたことがないので、最初は奈央の言動を実感しきれない部分もあって。でも奈央を演じる上で一番大切な感情だと思ったのでどうにか理解したいと考えていた時に、私にとっては、飼っている猫が当てはまるのかなと思いつきました。私、自分の猫に対しては、ずっと観察していても飽きなくて、何をしても可愛くて。離れている時は会いたくなるし、写真見てニヤニヤしたりなんかは、もうそれこそ毎日しちゃってるなって(笑)相手が呼吸をしているだけで好き!っていう感情に気づいた時に、“あ、これなのかも”と思いました。作中に里村のことを『叱られたゴールデンレトリバーみたい』というセリフがあるのですが、それがヒントになりました。自分の猫愛が役に立ってよかったです」

――山崎さんは普段、役作りをされる中で何か共通していることはありますか?

「全く同じ人生を歩む人間がいないように、役によって生まれた場所や経験してきたことなど、バックグラウンドが全然違うので、役作りも同じではいけないと思っています。ただ、自分と役との共通点は役を理解する上で大切にしています」

――役との共通点は、例えばどんなところに見つかることが多いでしょうか。

「どんなに理解できないと思うような役でも、共感できる小さな種を見つけて、その種を自分の中でどんどん大きく育てていくイメージを持っています。もちろん役に降りかかった出来事を、そのときの状況も含めて全く同じように体験することはできないけれど、 “あの時のあの感情だったら、この出来事に近いのではないかな?”と自分の経験に重ね合わせることはできる。なので、なるべくたくさんの感情と出会えるように普段の生活の中で色々な経験を積むことを心がけています」

――自分自身の経験や気持ちをリンクさせて共通項を探していくって、結構なカロリーを使われるのではと想像してしまいます。

「俳優業はカロリーを使うべき仕事だと思っています。誰かの人生を、自分が体現することは、もの凄く責任が伴うことだと思うので」

――役の感情を日常生活に引きずったり、抜け出せなくなったりはされないですか。

「“自分、今役が抜けていないぞ”と実感したことはまだなくて。でも、奈央を演じている時に普段の生活の中でも自分がちょっとだけ明るくなっていることに気が付きました」

――奈央のあの明るさを生活に受けるって素敵ですね。

「奈央はとにかくポジティブで前向きなところが素敵なので、役から良い影響を与えてもらったなと思います」

――本作のモノローグでもある奈央の心の声は、アフレコとしてまとめて撮ったのでしょうか?

「全て撮影現場で録音していました。まず最初にお芝居の段取りをして、そのあと録音できる静かな部屋を探して、そこで奈央の心の声を撮り、その場で録音部さんが実際のモノローグの形にフィックスしてくださる。そうしてできた音声を本番のお芝居に合わせて現場で流しながら映像を撮影する…という撮り方をしていました。本当に録音部さん様々というか、負担をおかけしてしまったなと思うのですが、そのおかげで長いモノローグでも心の声と合ったお芝居をすることができました」

――まさか、同時に撮っていたとは驚きました。会社での徹底した無表情と、里村への恋心からくる豊かな表情、振り幅がある奈央のお芝居のスイッチは、どんなところにあったのでしょうか。

「スイッチを切り替える作業のような意識は持っていなくて。奈央は会社の人に対して、過去の出来事から意図的に壁を作っているので、会社の空間と、そこに居る人に対する距離感を意識していました。例えば日常生活でも電車に乗っている時、隣にいる知らない誰かに急に友達の距離感で近づいて喋りかけることはないですよね。その延長で、奈央が持っている人に対する距離感を注意深く考えていました」

――奈央の恋心を演じていて、心が動いたシーンはありますか?

「みんなでキャンプに行く4話で、里村に対して奈央が、自分では思いもしなかった行動を咄嗟にとってしまうところがあって。奈央は心の声が最初から溢れているので、“こう思っている”というのが割と明確なのですが、そのシーンは彼女が考えるよりも先に衝動的に動いてしまったところだったので、印象に残っています」

――山崎さんは、もともとラブストーリーはよくご覧になられますか。

「ラブストーリーは好きなのでよく観ます。海外のラブコメとかも大好きです」

――ラブストーリーで思い描くヒロインのイメージや、山崎さんの理想のヒロイン像などはありますか?

「ラブストーリーに限らずとも色々なヒロインがいますが、やっぱり愛されることがヒロインの絶対条件かなと思います。特に今作の奈央は、応援してもらえるような、愛してもらえるようなヒロイン像を自分の中で目指していました。奈央の恋が実ってほしいなって、観ている方々が応援して味方になってくれるような」

――愛されるヒロインを体現していく中で、それってこういうことかな?みたいな気付きや、奈央を演じながら考えられていたことはありますか?

「奈央の凄く好感を持てるところって、一生懸命さだと思うんです。一生懸命な人を、やっぱりみんな応援したくなると思いますし。里村に対してただがむしゃらに、まっすぐにぶつかっていくことが大事なのかなと考えていました」

――山崎さんは現在(取材は7月中旬)完パケを2話までご覧になったと伺いましたが、実際に映像をご覧になっていかがでしたか。

「展開がわかっているのに、思わず笑ってしまうシーンがたくさんあって。自分のお芝居でクスッとしてしまったことに、驚きました。あと、個人的にこれから楽しみにしているのが、里村に嫌がらせをする先輩三人組のシーン。原作にはないドラマ作品ならではの彼らの物語も良いアクセントになっていると思います。私も彼らの筆頭にいる鈴木さん(坂口涼太郎)のファンになってしまいました(笑)鈴木さんのドラマにも是非注目してほしいなと思います」

――この記事が出るのは恐らく3話までが配信されている頃です。改めて、今作はどんな作品になりましたか。

「今作を通して、恋をすることっていいものだなと思いました。誰かを好きになる気持ちや、誰かを大切に想うことって凄く素敵なことだなって。そういうポジティブなエネルギーを、少しでも受け取ってもらえたらなと思います。それに、ひとりの人と両想いになるって本当に奇跡みたいなことだなとも思いました。今パートナーがいらっしゃる方は、相手をもっと大切にしようと思っていただけたら嬉しいです」

――俳優として幅広くご経験を重ねられている今、山崎さんにとってお芝居の魅力や原動力はどんなところにあるのでしょうか?

「自分の中の原動力って実は最初から変わっていなくて。私のお芝居を見てくださった誰かが少しでも前向きになったり、『自分はひとりじゃない』と思ってもらえたり、自分が携わった作品によって多くの方が救われたらいいなと思っています」

――現時点で、ご自身の未来について何か思い描かれているビジョンはありますか?

「二十歳ぐらいの頃は、何歳までにこれをするというプランを立てるのが割と好きだったのですが、思い通りに行かなかったことや想定外のことを、今は楽しめるようになりたいです。自分が遠回りだと思ったことが一番の近道だったりすることもあるし、それは後になってみないとわからないこと。こういうことをやってみたいな、という目標や夢はたくさんありますがリミットは決めていないです。自分がこうと決めたことで自分自身を苦しめないように。何事も継続することが成功への近道だと信じながらこれからも頑張っていきたいです」


●プロフィール
山崎紘菜/やまざき・ひろな
1994年4月25日生まれ。千葉県出身。2011年、第7回「東宝シンデレラ」オーディションにて審査員特別賞を受賞。12年俳優デビュー。デビュー以来映画・ドラマほか、モデルやナレーションなども務め幅広く活躍。20年米公開の映画『モンスターハンター』ではハリウッドデビューを果たす。近年の主な出演作として映画『LOVE LIFE』(22) 、NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』など。現在放送中のテレビ朝日系ドラマ『刑事7人』にも出演中。また、11月28日から公演予定の舞台『ジャンヌ・ダルク』に出演予定。


作品紹介
U-NEXT制作ドラマ『賭けからはじまるサヨナラの恋』
監督:有働佳史 住松拓三
原作:わたぬきめん(漫画)、ポルン(原作)『賭けからはじまるサヨナラの恋』(マイクロマガジン社刊)
出演:山崎紘菜 小関裕太 筧美和子 飯島寛騎 坂口涼太郎 優希美青 林和義 湯川尚樹 阿瀬川健太

クールかつ事務的に仕事をこなす姿から“氷鉄の女”と呼ばれるOL・吉永奈央(山崎紘菜)。ある日、奈央は先輩社員たちが自分を落とせるか賭けをしている場面を目撃してしまう。そこには奈央が長年片思いをしていた同期の里村(小関裕太)もいて…!?
U-NEXTにて毎週木曜18時に最新話配信中
https://video.unext.jp/title/SID0090204


衣裳協力:ロンドンジレ¥101,200、ツイステッドドレス¥64,900(ともにSATORU SASAKI info@satorusasaki.com)、イヤカフ(左右各)¥22,000、バングル¥88,000、リング(右手人差し指)¥40,700、リング(左手人差し指) ¥30,800(全てブランイリス/ブランイリス トーキョー 03-6434-0210)