【イベントレポ】『それでも女をやっていく』ひらりさ×蟹ブックス店主・花田菜々子 対談!(前編)


 大反響を呼んだ「東京“男子”大学」の記事

花田:ひらりささんは非常に明晰な方でいらっしゃるので、そういう方がご自身を語るとこんなに面白くなる!というのも、まさに本書の読みどころのひとつだと感じます。もちろん、ひらりささんと同じように女であることに葛藤があったり、依存体質の人が、「うわ、これ自分じゃん……」というハマりかたをするケースが一番多いと思うんですが、そうでない人が読んでも、先ほどの爆笑ツイートのように、「ああ、(頭の中が)こうなっているんだ」と、面白く読めるんですよね。とはいえ、当のご本人からすると、ご自分の内面を吐露していくのは、大変な作業だったのでは?

ひらりさ:2年間にわたる連載という形をとっていたわけですけれども、じつは、一番反響が大きかったのは、初回に書いた大学時代のエピソードだったんです。簡潔に言うと、東京大学は「東京男子大学」みたいだったと、大学で受けたホモソーシャルの洗礼を回顧したものなのですが、予想以上のPV数があったらしくて。もちろん当時のわたしにとっては辛いエピソードですが、現在のわたしにとっては、初回エピソードに選ぶ程度には消化できている話ではあったんですね。あと、「女と女」という点でいうと、このエピソードの最後に出てくる、同級生の女の子との関係性に触れたくて書いたことだったんです。それで「書いちゃうか〜」くらいの気持ちで書いたら、思いのほか共感したり怒ったりしてくださる人が多くて、わたしも驚きました。

そして、この大学の話を書いたからこそ、やはり、自分が実社会で恥ずかしく思ったり落ち込んだりしてきた体験が、どれも「女性らしさ」がうまく表現できていないことと紐づいているような気がしてきて。連載前はいかに「女と女」の関係性にフォーカスするか考えていましたが、そういった、いわゆるフェミニズムにまつわる話題を(連載で)取り上げることが大事なのでは、と思いまして。ですから、必要性を感じる場面では、ある意味、身を切るかたちで書きましたね。それが、たとえ些細なことに思える体験だったとしても、じつは、大きな社会構造に繋がっていることもあるはずだと。したがって、わたしが率先して書くことで、これまでじっと黙っていた人たちが、気軽に話せるようになったらいいよね、という思いがあったんです。少々、こじつけみたいになっていますけれど(笑)。

*後編は3月9日(木)の更新予定です。

\好評発売中!/
それでも女をやっていく
著:ひらりさ

ひらりさ

文筆家。1989年東京生まれ。オタク女子ユニット「劇団雌猫」のメンバーとして活動を開始後、オタク文化、BL、美意識、消費などに関するエッセイやインタビュー、レビューを執筆する。単著に『沼で溺れてみたけれど』(講談社)。劇団雌猫としての編著書に、『浪費図鑑 ―悪友たちのないしょ話―』(小学館)、『だから私はメイクする』(柏書房)など。
Twitter @sarirahira

花田 菜々子

1979年、東京都生まれ。書籍と雑貨のお店『ヴィレッジヴァンガード」に12年勤めた後、『二子玉川蔦屋家電』ブックコンシェルジュ、『パン屋の本屋』店長、『HMV & BOOKS HIBIYA COTTAGE』店長を経て、2022年9月に高円寺に「蟹ブックス」をオープン。自らの大変をつづった『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』はベストセラーになり、2021年にWOWOWでドラマ化もされた。
蟹ブックス
HP https://www.kanibooks.com/
Twitter @kanibooksclub


1 2