【イベントレポ】『それでも女をやっていく』ひらりさ×蟹ブックス店主・花田菜々子 対談!(後編)


オタク文化、美意識、浪費など、「女」にまつわるさまざまな文章を執筆されている、文筆家・ひらりささん。そんなひらりささんによる、WANI BOOKOUTの人気連載「それでも女をやっていく」が、待望の書籍化となりました。

書籍の刊行を記念して高円寺にある本屋・蟹ブックスにて行われた、蟹ブックス店主・花田菜々子さんとのトークイベントの様子を、前編に引き続き、お届けしていきます。

 

あえてグレーの部分の話をしていきたい!

花田:“些細なことに思える体験”も身を切りながら書いていったという本書ですが、いわゆる「自分語りエッセイ」と取られかねないエピソードでも、ひらりささんの文章には、独りよがりではない、しっかりとした奥行きを感じました。

ひらりさ:ありがとうございます。「何について書かれた本か?」と問われたら、案外、カテゴライズするのが難しい本だなと思うんです。フェミニズムという言葉も、意識的に多くなりすぎないようにしていますし。また、正論ばかり書いても「口ではいくらでも言えるよね」ということになりかねない。ですから、フェミニズムにしろ、セクシャリティにしろ、あえてグレーの部分の話をしていきたい、という気持ちがありました。

花田:なるほど。ちなみに私自身、たとえばSNSなどで論争が起きたときなど、必ずしもフェミニズム側の立場にいるというわけではないので、どちらかといえば、ひらりささんの(本書に対する)マインドに近いものを感じています。

ひらりさ:フェミニズムとの付き合い方とは別に、SNSとの付き合い方というのは本当に難しいですよね。わたしに関していえば、過去にはSNS上の告発やヘイトに対して連帯を表明するためにハッシュタグを利用したこともあったのですが、ここしばらくは控えています。その代わり、DMなどでサポートを求められたときにできる限りでアドバイスに乗ったり、政策に関する署名や物理的なデモには顔を出すなどはやろうと決めています。もちろん、いろいろと意見を出したネット記事も書いていますから、そういった意思表明に関連する責任は取るべきシーンもあると思うし、求められたらネット上での発言もしますけれど、あくまでその“ライン”は自分で引いていきたい。

たとえば、アートを通じてフェミニズムに関わる人もいるわけですし、すべてをインターネット上の言葉で、しかもスピードを伴って発信することに全振りするのではなく、自分にとって“持続可能”なスタイルを模索しないと、と考えるようになったんですね。もちろん緊急性のある論点もたくさんあるので、具体的でスピードのある言葉でそうした問題に関わっている人で尊敬しているアカウントもたくさんあります。わたしもできるときはそうしたい。でも、速度にしろ、距離感にしろ、いろいろなスタイルが許容されて然るべきだし、他人に強要したりされたりはしたくないとも思います。ここ数年ソーシャルメディア上の世間と、自分の生活の距離がうまくとれずにメンタルを崩していたところもあったので、現時点ではそういう考えです。この考えから、今回の本が生まれた部分もあると思います。


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