
【ペルー国境封鎖足止め日記】マーにも衣装
人生初の中南米一人旅の真っ最中に、新型コロナウイルスが蔓延。
国境は封鎖され、飛行機はキャンセルになり、異国の地でのロックダウン生活。
街中がパニック、一人心細く、早く帰国したいと願う毎日……になるかと思いきや、
彼女は「いっそのこと、ここに住もう!」と決め、ペルーで生活を始めた。
ペルーで暮らして、早3年。
現地からお届けする、予想外で刺激的な日々。
部屋を掃除していると、新年のお祝いグッズの黄色い首飾りが出てきた。
茶色い被毛のマーちゃんに似合いそうだとかけてあげると「可愛いーー!」と思わず声が出た。犬にコスプレする人の気持ちがわかってしまった。
ペルーでは、黄色は幸運の色とされている。幸せを運ぶ犬に見えたらいいなと、首ざかりをして散歩するようになると、道で声をかけられたり撫でられたりするようになった。写真を撮られたり、レストランではパンやお水を出してもらったり、わざわざ新しいペットボトルの水を出してくれるお店まであった。スーパーの警備員さんはマチルダの名前まで覚えてくれ、客待ちのタクシードライバーさんにもすっかり顔なじみ。
私が単独で行動していると、「犬いないの?」と知らない人にいきなり声をかけられたこともあった。私の気づかない所で、すっかりマーちゃんは覚えられているみたい。
マーちゃんは「linda(可愛い)」という言葉を何度も言われて撫でられてきたので、好意的な言葉として理解したようだ。知らない人から「linda」と言われると、立ち止まって相手の気の済むまで撫でさせたり、お腹を見せたりと、ファンサービスをするようになった。
△名前を覚えてもらうほど行きつけになったレストランTENEDORにて、リラックスしすぎなマーちゃん。
首飾りをしていなかった頃は野良犬感もあったし、「あっち行け、しっし」というように、あからさまに嫌悪感を示す人もいた。なのに、飾り一つでこんなにも対応が変わるなんて、馬子にも衣装ならぬ、マーにも衣装。
散歩していると「新年?」と声をかけられることが多いので、「毎日が新年なの♫(笑)」と、初対面の人を笑わせることが出来るようになり、散歩がより一層楽しくなった。
細い飾りだと長毛で隠れてしまうから、もっと派手に目立たせたい! そう思い、ハワイの人がしているような大きな花がついている物を探していると、旅先のコロンビアで見つけることが出来た。意気揚々とクスコに戻って「お土産あるよ」と見せても、マーちゃんはちっとも嬉しそうじゃなかったが(笑)。
犬と暮らす前は「一日2回も散歩に行くなんて大変だなぁ。やっぱり猫が好き」と思っていたけど、今は余裕で一日2回散歩に出かける。私の部屋では決して粗相しないので、外に行くために「baño(トイレ)」と話しかけて連れ出している。
一緒に外出できるのが、猫にはない魅力。猫より世話が大変だけど、育てている感覚が強い。
毎日ブラッシングして、被毛を拭く。歯を磨いて、爪を切る。公園で他の犬と仲良くできるかなと見守ったり、なんとか野菜を食べてもらおうと工夫したり、マーちゃんの体重は26kgで小学2年の女の子くらいかぁ、結構重いから抱っこするのも大変だ、と想像したり。子どものいない私にとっては新鮮な感覚で、人間の子育てがどれだけ大変なのかと、母なる方々を改めて尊敬した。
今月のスペイン語
*次回は6月9日(金)更新予定です。
イラスト・写真/ミユキ