【INTERVIEW】富山県射水市を舞台にした映画『僕の町はお風呂が熱くて埋蔵金が出てラーメンが美味い。』で主演の酒井大地。射水市での撮影の日々や、俳優としての目標など話を聞いた。

【INTERVIEW】富山県射水市を舞台にした映画『僕の町はお風呂が熱くて埋蔵金が出てラーメンが美味い。』で主演の酒井大地。射水市での撮影の日々や、俳優としての目標など話を聞いた。


スターダストプロモーション主催の第1回「スター☆オーディション」で男子部門グランプリを受賞した酒井大地。今回、酒井が主演を務めた映画『僕の町はお風呂が熱くて埋蔵金が出てラーメンが美味い。』は、地元・射水市の危機を救おうと奮闘する男子高校生3人組の挫折と成長を描くハートフルコメディー。酒井は3人組の一人、明るくて情に厚く、地元が大好きなトオルを演じた。「やっぱり映画の撮影は楽しい」と感じたという射水市での撮影は酒井にとってどんな日々だったのか。

撮影/浦田大作 スタイリスト/飯田恵理子 ヘアメイク/南辻光宏 文/太刀川梨々花

――まずは、完成した映像をご覧になった感想から教えて下さい。

「まず最初に本当に映画が出来て良かったなと思いました。“このシーンにはこんな裏話があったな”、“このシーンの日は朝が早かったな”など、撮影の日々を思い出しながら観ることが出来て楽しかったです」

――撮影は昨年の夏にされたようですね。振り返ってみて、苦戦したところや印象的なシーンは?

「撮影に入る前はとてもプレッシャーがありました。方言であったり、どうやってセリフを覚えて表現するか、みんなとどう馴染んでいくかを凄く考えました。その中で、一番苦戦して印象に残っているのは、おじいちゃん(泉谷しげる)が亡くなって、町の医師(立川志の輔)にトオルが『じいちゃんはまだ死んだことにならんけ?』と言ったシーンです。ベテランの俳優さんの中で僕が沢山セリフを言う場面だったので、撮影前は想像したら緊張で食欲もなくなってしまい、ただひたすらセリフをぶつぶつ言いながら練習していました」

――トオルを演じるにあたって意識されていたことはなんでしょうか。

「おじいちゃんの『なんでもやってみなきゃわからん。すぐ無理無理言うな』という言葉があって。最初、トオルはやる前から“無理でしょう”ってネガティブから入ってしまうところがあったと思うのですが、おじいちゃんからのその言葉で、諦める前に出来ることを考えるようになるので、内面的な変化を意識するようにしました」

――おじいさんが怒るシーンも迫力がありましたが、泉谷しげるさんとのお芝居で感じることはありましたか?

「初めておじいちゃんから怒られたのが、トオル、アゲル、ヨシキが女子風呂を覗こうとするシーンでした。泉谷さんもふざけながら怒るところもありましたが、ちゃんと熱くなって怒るところは真剣に叱って下さり、メリハリというかON OFFが大事なんだなと感じました」

――今回の舞台である富山県射水市。市民の皆さんも多く出演されていますが、現場の雰囲気はいかがでしたか?

「とても楽しかったですし、斬新でした。プロフェッショナルで、なんでも知っている方々が支えて下さる現場が多いと思うのですが、今回の現場では地元の皆さんがボランティアで協力して映画のスタッフやキャストをやって下さり、撮影では学ぶことも多かったです」

――射水市を散策したり地域について深めていくことは出来ましたか。

「3週間くらい滞在したのですが、撮影がない休みの時でも僕と原(愛音)さん、宮川(元和)君、長徳(章司)君の4人でサイクリングや釣りに行ったりしました。あとはクランクインした日に映画にも出てきた、さんがの湯に行って僕と宮川君、長徳君、監督と4人で熱いお湯に入りました(笑)」

――劇中のお祭りのシーンは、実際に参加したお祭りですか?

「そうです。10月1日に開催された曳山祭りを撮影させて頂きました。実際に祭りをみて、こんなに大きい曳山が動くんだと圧倒されました」

――ほかにも劇中で出てきた場所で、思い出に残っているところは?

「トオル、アゲル、ヨシキの3人で銭湯に入っているシーンです。3人で頭を洗うシーンは、一緒に右手だけ洗って、このセリフが終わったら左手で洗って、このセリフが終わったら両手で洗うみたいな細かい動作も決めて演技をしていたので、銭湯で撮影したシーンが思い出に残っています」

――本多監督とはお芝居についてお話をする機会はありましたか?

「最初に監督から、この映画は男3人のわちゃわちゃした感じを映像に残したいからと言葉を頂いていました。なので、何があってもとにかく明るく。失敗が続いても3人のわちゃわちゃは続けようと決めていました。でも後半からわちゃわちゃしすぎて、ちょっと静かにしてってスタッフの方から注意されました(笑)。それもいいことなんじゃないと監督が言って下さったので、良かったなと思います(笑)」

――わちゃわちゃするシーンはアドリブもありましたか?

「そうですね。男3人で自転車で走るシーンの言葉は全てアドリブだったのと、エンドロールではしゃいでいるところも5分くらいアドリブで話していました。途中から何を話したらいいか分からなくなってしまいましたが、とにかく明るくニッコリ、わちゃわちゃしてる様子を見せられるようにアドリブでは意識していました」

――方言はどのように練習されましたか?

「僕の地元の福井県と同じ北陸なので似ているのかなと思っていたのですが、イントネーションが全然違いました。富山県は語尾に「だっちゃ」などがついたりします。YouTubeで方言を調べて、こういうイントネーションなんだと理解しました。また雷鳥お姉ちゃんが撮影のない日も僕につきっきりで方言を教えて下さいました」

――撮影以外でも方言を使って、地元の方々と話してみたりしましたか。

「そうですね。富山弁を話そう話そうと意識していた訳ではないのですが、撮影の後半くらいには自然と「だっちゃ」が出てきて、馴染めているんだなと感じました。地元のキャストさんやスタッフさんから美味しいご飯屋さんの話や学校の話など沢山聞かせてもらいました」

――ちなみにトオルとご自身で似ているなと感じる部分は?

「福井県で過ごしていた時も自転車で走り回って、田んぼの間を走り回ったり、学校が終わったら近くの川に行って友達と水遊びをするような男の子だったので、わんぱくで地元が好きで、沢山アクティブに動くところはトオルと似ているなと感じました」

――射水市で3週間過ごして、クランクアップした瞬間はどんな気持ちになりましたか?

「僕は泣かないように頑張ったんです。でも宮川君が泣いている姿をみて、僕も若干泣きそうになりました。帰りの車で宮川君と長徳君に『本当に楽しかった、ありがとう』って長文のLINEを送っている時に僕も泣いてしまって。そのくらい楽しかった撮影で、ここにもっと居たいな、やっぱり映画の撮影は楽しいなと思いました。監督は最後、駅でお見送りをしてくれて。また東京で会おうなと言って下さって本当に優しい監督さんだなと思います」

――俳優業についてもお伺いしたいのですが、2019年に開催された「スター☆オーディション」へのグランプリが芸能界デビューですよね。俳優のお仕事を続けたいと思えたきっかけは何でしょうか?

「俳優を続けたいと思ったきっかけが1作目の映画『都会のトム&ソーヤ』です。元々、映画など何も知らない世界だったのですが、『都会のトム&ソーヤ』に出演してみて、スタッフさんやキャストさんの団結力あって作品は作られていくってことを知りました」

――今後はどんな役に挑戦してみたいですか。

「今までは、真面目な役やあざとい犬系の役、今回だと素の自分を出している部分も結構ありました。次はもっとアクティブに体を動かす役やってみたいです。スパイダーマンのようなバク転をしながら撮影したりしてみたいです。普段は洋画をみることが多く、ワイルドスピードやトランスフォーマーなどかっこいい系をみることが多いです!」

――お芝居をするために映画をみて勉強することもありますか?

「ありますね。“役作りはどうやっているんだろう”とか、“この場面はどうやって撮影しているんだろう”とか、裏側を考えながら観るようにしています」

――俳優としての目標は何でしょうか。

「目標としている方は『都会のトム&ソーヤ』で共演させて頂いた、市原隼人さんです。顔を近距離で撮影するシーンのときに、とても緊張していたのですが『ちゃんと俺の目をみて芝居しなよ』と優しく言葉をかけてもらい、そこで市原さんからお芝居の奥深さや向き合い方を教わりました。市原さんのような演技に対して熱い想いを持った俳優さんになりたいなと思います」

――最後に今回の映画の見どころを改めて教えて下さい。

「この作品は先程も話したように、おじいちゃんの『なんでもやってみなきゃわからん。すぐ無理無理言うな』という言葉の通り、なんでも諦めずに続けていたら、いつか夢は叶うんじゃないかなという気持ちを伝えたい映画だと思います。今、何か夢がある方や、今は夢がないけどこれから作っていきたいという方に、是非観て頂きたい作品です」


●プロフィール
酒井大地/さかい・たいち
2006年1月17日生まれ、福井県出身。2019年に開催された『スター☆オーディション』で男子部門グランプリを受賞。出演作にWEBドラマ『すべての恋は片想いからはじまるっぽい』(21)、映画『都会のトム&ソーヤ』(21)短編映画『日曜日とマーメイド』(22)など。今後は映画『おしょりん』が10月20日より福井先行公開/11月3日より角川シネマ有楽町ほか全国公開。


作品紹介
映画『僕の町はお風呂が熱くて埋蔵金が出てラーメンが美味い。』
製作総指揮/石橋冠 プロデューサー/大井紀子
脚本/西永貴文 監督/本多繁勝
出演/酒井大地 原愛音 宮川元和 長徳章司 金児憲史 澤武紀行 お姉ちゃん(雷鳥) 泉谷しげる 立川志の輔(友情出演)/ 丘みつ子

富山県射水市に暮らす男子高校生三人組のトオル(酒井大地)、アゲル(宮川元和)、ヨシキ(長徳章司)。家族や進路などの悩みを抱えながらも、同級生の花凛(原愛音)と会話を弾ませ、大好きなラーメンを食べ、熱いお風呂に浸かり、充実した毎日を過ごしていた。久々に開催される放生津曳山祭を楽しみにしていたが、開催前日、祭の会長を務めるトオルの祖父・松蔵(泉谷しげる)が急死してしまう。家に借金があることを知り、更に町のあちこちでリゾート開発会社への借金の声が響き、町は不穏な空気に包まれる。そんな中、トオル達は蔵で発見した「射水の埋蔵金」という巻物をもとに、埋蔵金を探しはじめるが…。

5月26日(金)~ユーロスペース、池袋シネマ・ロサほか全国順次公開
5月19日(金)~富山3館先行公開(TOHOシネマズ 高岡、TOHOシネマズ ファボーレ富山、J MAX THEATERとやま)https://www.ax-on.co.jp/sp/bokura/