【ぽかぽか出演で話題!】齋藤孝先生が教える意味を間違いやすい日本語3選
フジテレビ系列にて毎週・月~金曜日のお昼に生放送されているバラエティー番組『ぽかぽか』。8月26日放送には、教育学者の齋藤孝先生がスタジオに生出演し、知っておきたい日本語SPと題して、MCやゲスト陣とともに間違いやすい日本語を問題形式で紹介されました。
明治大学文学部の教授である齋藤孝先生が、これまで出版した著書は850冊以上、累計発行部数は1000万を超え、その豊富な知識量でMCのハライチのお二人(岩井勇気さん・澤部佑さん)、神田愛花さん、月曜レギュラーの伊集院光さん、横澤夏子さん、松田元太さん(Travis Japan)らと軽快なトークを繰り広げました。
ここでは、齋藤孝先生の著書『二度と忘れない! イラストで覚える 大人の教養ことば』より、番組でも取り上げられた意味を間違いやすい日本語を少しだけご紹介します。
※本記事は、齋藤孝:著『二度と忘れない! イラストで覚える 大人の教養ことば』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。
時代劇でよく聞く「姑息なやつめ」は間違い?
「姑息なやつめ」というのは時代劇における定番の台詞ですが、ここで卑怯といった意味合いで用いられたことが、誤用が広がった理由の一つかもしれません。
「姑息」という言葉の中に入っている「息」とは、吸って吐く呼吸のこと。ほんの短いこの一息が「息をつく」ということですから、この「息」という字から「一息つく=短く一時的なもの・その場限り」と覚えるとよいでしょう。
余談ですが、私は呼吸法の研究をしていたことがあります。「息」とは面白いもので、吸っているときは命が高揚し、吐いていくと次第に心が静かになって、吐き終わったわずか一瞬、静かな空白ともいえる瞬間が訪れる――。私はこの“軽い死”とも思える瞬間を「出止(しゅっし)」と名づけ、「出止」の瞬間を見つめることこそが悟りへの道へ繋がると考えました。今、呼吸に焦点を当て“今この瞬間” を感じる「マインドフルネス」が流行っていますが、私の呼吸法研究と共通する部分が大きいように感じます。
あの「破天荒芸人」は、実は「破天荒」ではない?
「破天荒芸人」などの表現が広まったことで、豪快、大胆といった間違った認識を持っている方が多いように感じます。しかし、本来「破天荒」とは唐の時代に官吏の試験の合格者が一人も出ず「天荒」と呼ばれた土地に、初めての合格者が出たことで、「天荒を破った」と称したという故事によるもの。つまり、「この高校から、初めて東大に行った!」といった意味合いですから、本来は非常に真面目な人を指す言葉なんですね。
ちなみに、平成ノブシコブシの吉村さんとはテレビで共演させていただいたことがありますが、芸人さんの心意気とは素晴らしいもので「(破天荒の)本当の意味を聞いたけれど、今さら変えられない!」とおっしゃって、大胆にも全裸でスタジオ中を歩きまわる姿に、思わず感服したものです。とはいえ、裸になって歩きまわったり、脇で音を鳴らすような芸は、本来の「破天荒」ではありませんので、くれぐれも誤解なきよう。
「敷居が高い」=「高級なイメージ」という方程式は、今すぐ削除!
「一見さんお断り」という表現にも似た、どこか高級なイメージを持たれる方が多いのかもしれません。しかし、この言葉は相手に対して「不義理」があるという点がポイントです。たとえば借金があったり、長いこと会っていなかったりすると、「どうも、あの家は敷居が高くてねぇ」ということになります。
そもそも「敷居」とは、家や部屋に入るための出入り口となる開口部の下にある横木のこと。この「敷居」が相手との境目になっているのでしょう。ところが、最近では気軽に他人の家に行くことも少なくなり、この「敷居」という言葉自体が廃れつつあるように感じます。「こんなやつに、二度とうちの敷居はまたがせない!」といった台詞もすっかり聞かなくなりましたが、個人的には、できれば残したい日本語の一つです。そういえば、学生たちが「この前◯◯の誘い断ったから、フォローしてもブロックされるかもな~」とSNS の話をしていましたが、まさに現代の「敷居が高い」話なのかもしれませんね。
イラスト 小針卓己
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『大人の教養ことば』
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著:齋藤孝
イラスト:東元俊哉
『大人だからこそ忘れないでほしい45のこと』
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著:齋藤孝
齋藤孝(さいとう・たかし)
1960年静岡県生まれ。東京大学法学部卒業後、同大大学院教育学研究科博士課程等を経て、明治大学文学部教授。専門は教育学、身体論、コミュニケーション論。ベストセラー作家、文化人として多くのメディアに登場。著書に『大人の対応力』『大人だからこそ忘れないでほしい45のこと』『君は君の道をゆけ』(ワニブックス)、『声に出して読みたい日本語』(草思社)、『雑談力が上がる話し方』(ダイヤモンド社)、『大人の語彙力ノート』(SBクリエイティブ)など多数。著者累計出版部数は1000万部を超える。NHK Eテレ『にほんごであそぼ』総合指導。
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