
【ペルー日記】カラフルな山へ、楽な登山なんてない
人生初の中南米一人旅の真っ最中に、新型コロナウイルスが蔓延。
国境は封鎖され、飛行機はキャンセルになり、異国の地でのロックダウン生活。
街中がパニック、一人心細く、早く帰国したいと願う毎日……になるかと思いきや、
彼女は「いっそのこと、ここに住もう!」と決め、ペルーで生活を始めた。
ペルーで暮らして、早4年。
現地からお届けする、予想外で刺激的な日々。
クスコ近郊には有名な観光名所レインボーマウンテン以外にも、もう2つ魅力的なカラフルな山が存在している。ひとつは本連載のタイトルバナーの背景になっている山「Palccoyo(パルコヨ)」、もうひとつが、今回の目的地のPallay Punchu(パライ プンチェ)だ。
Pallay Punchuは、2020年にコロナ治療のため、山に薬草を探しに来た若者が、その美しい景色をSNSで拡散して一気に有名になった。ガイドをしている友人が「歩くのも楽だし、一番のオススメ」と言っていたので、街中の旅行会社に問い合わせるも「そんな山は知らない」「プライベートツアーのみで約3万円」とのこと。
同じ地域のレインボーマウンテンツアーが食事送迎ガイド付きで約2,000円で楽しめるのに対して、観光地化されてないとはいえ、値段が違いすぎる。一人で登山なんて危ないだろうし、興味がありそうな友人もいない……。後ろ髪を引かれる思いで諦めようと、4年が経過した頃、近郊の村へお祭りの誘いがあったことで、山に呼ばれた気がした。
google mapのレビューに詳細な行き方が書かれており、このルートなら一人で行っても大丈夫か、事前に友人のガイドに確認しておいた。
一人登山の危うさはわかっているつもりだ。万が一、無言の帰宅になっても恥ずかしくないように部屋を大掃除しておいた。というのも、パタゴニアの登山道で一人の女性が流血して倒れていたのを助けたことがあり、彼女の顔が頭をよぎったのだ。
シクアニからアグアス・カリエンテス・ラ・ラヤ(お湯という意味の温泉)行きのミニバスに乗り、途中の登山道入口で降ろしてもらった。看板には5.4kmと書いてあり、2時間半程で楽勝かな、なんて思いながらスタート(後にこの楽観が大誤算となった……)。
△トレッキングルート入口付近の墓地と、小さな闘牛場。
あらかじめダウンロードしておいたオフラインマップを見ながら山道を進んでいく。車道と小川沿いなので給水はできるが、標高4000m超なので、すぐに息があがる。し、しんどい、誰ともすれ違わない……。こんな所で一人で何やってんだろう、と怖気付きそうな時に、アルパカや犬が現れては元気付けてくれた。
何度も諦めて引き返そうかと思いながら、ヘロヘロになって山頂に着くと4時間半も経過していた。
ネットで見た憧れの景色が目の前に広がっていて、感動で全身が震えてくる。カクカクした形と配色がカッコイイ!!! 対岸にはマーブルの柄の山や湖が広がっており、風が強く雲の動きと光が瞬間ごとに違う表情を与えてくれるので、見飽きることがなかった。挑戦してよかった、登山でしか味わえない達成感だ。
山頂付近まで車でやってきたプライベートツアーの軍団がいて、挨拶を交わすと一気に安心感に包まれた。車で来ると楽だろうけど、自力で登るとアルパカや高山植物に遭遇できる楽しさがある。ちなみに、ガイドの友人の言う「楽だよ!」は車で来た場合のことを指していた。先に言ってよ(笑)。
復路は下り坂なので2時間半程だったが、車道じゃない所をショートカットすると、草ボウボウの道なき道で、小川にはまって泥だらけに。コけて足首を捻挫して半泣での下山となった。策に溺れるとはこの事だ。車道ルートを選ぶのは、時間はかかるが歩くには安全なのだ。
登山の疲れを癒すべく、終点地の温泉に行こうとバスを待っていると、同じ目的地へ行くおじいさんが「一緒に!」とヒッチハイクに誘ってくれた。車に乗せてくれたカップルにチップを渡そうとしたら、必要ないよと言われたが無理やり手に押し込んだ。
入場料は200円、水着マストでの混浴。ぬるいのからアチアチなのまで9箇所ある。温泉にお酒は持ち込めないとの事で、露店で缶ビールをがぶ飲みしてから入浴。
平日の夕方だったので人も少なく、1つの湯船を独占できた。夕日を眺めていると鳥群が何度も上空を通り過ぎていき、素晴らしい。宿泊施設もレストランもあるので、一泊するとより最高だろう。近くに住みたいと思いながら家路に向かった。
翌日からは未知なる程の筋肉痛で撃沈。3万歩は歩いていた。怖かったり面倒くさかったことを最高の体験に変換できたので「全て良し」である。
初めてだった南米旅行にも言えることだ、最初は何だって怖いけど、そこを超えていった先の面白さたるや。
今月のスペイン語
*連載は今回で最終回となります。これまでご覧いただき、ありがとうございました!
今後もnote(https://note.com/miyuki_okada)にて発信していきますので、ぜひチェックください。
イラスト・写真/ミユキ