東村アキコ×山田玲司 豪華対談!【前編】漫画みたいな恋って本当にできるの…?とか言ってて彼氏ができない人は、すぐにこれを読んでください。

東村アキコ×山田玲司 豪華対談!【前編】漫画みたいな恋って本当にできるの…?とか言ってて彼氏ができない人は、すぐにこれを読んでください。


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おかげさまで1周年を迎えた当サイト。
これを記念したスペシャル対談企画を実施!

第一弾は、大人気漫画家

東村アキコ×山田玲司

少女漫画を読んで育った人、
大人になったら大好きな人が
勝手に自分のことを好きになってくれて、
とんとん拍子で付き合って結婚すると
なぜか本気で思っていた人。

でも現実の恋愛はなぜか上手くいかない!
彼氏ってどうやったらできるの?
幸せになりたい!!
と願う恋愛難民女子、必読です。

いま、一番恋愛話を聞きたい
豪華なお二人に語っていただきました。
聞き手は、少女マンガ研究者としても活躍する
トミヤマユキコさん

文/トミヤマユキコ
撮影/森 菜穂子

 

P5210064

アラサーにかかった呪いとは?

-「漫画みたいな恋って本当にできるの?」というのが今回の大きなテーマなのですが、東村先生は「漫画みたいな恋」についてどう思われますか?

東村アキコ(以下、東村):ドジでおっちょこちょいな女の子を、スペシャルな男の子が見初めてくれる、っていうのが少女漫画の基本ですよね。今はちょっと違うかもしれないけど、私が若い頃の少女漫画は大抵そうだった。

ドジであればドジであるほど、不器用であればあるほど、好きになってもらえると。それをまあ、みんなは高校生くらいまで信じてた。でも、そんなこと普通ありえないじゃん! スペシャルな子はスペシャルな子と付き合うじゃん! なのに、少女漫画だと、なぜかダメであればあるほどスペシャルな男の子が好きになってくれるっていう謎の構造になってて(笑)。

山田玲司(以下、山田):アキコは『りぼん』っ子だからな(笑)。

東村:そう、『りぼん』っ子なんで、私もはじめは普通に信じちゃってた。なんなら「美人じゃない方がいいのかな?」ってくらい捻じれてて(笑)。
でも、一条ゆかり先生の漫画とかを読むと、そんなことは描いてないわけですよ。それで「あれ?なんかおかしいぞ?」ってなってきて。大人っぽい作品を読むことで、『りぼん』的な恋愛観からは卒業できましたね。

山田:女の子たちはいつ『りぼん』から脱出すべきなんだろうか。

東村:小5ぐらいじゃない?

山田:11歳くらいってこと?早いな(笑)。でもそんなもんか?

東村:そんなもんじゃない?実年齢よりちょっと上のものを読んだ方がいいと思うんだよね。
あと、運がいいことに、私には弟がいて『ジャンプ』『サンデー』『マガジン』を買ってたことも大きかった。
そっちを読むと、男の子はクラスのマドンナしか好きになってないんだよ!

山田:そうだね。 

-やっぱり少女漫画に描いてある恋愛を鵜呑みにしちゃまずいんですね。

東村:そりゃそうだよ。ルポ漫画じゃないんだもん。少女漫画の恋愛って、言ってみればなんの根拠もないわけだよ。フィクションだからね。

山田:蜃気楼みたいなもんだよ、少女漫画の恋愛なんて。

東村:私は蜃気楼だって気づいたのが比較的早かったし、弟もいたしで、だいぶマシだった。

-周りの子たちがまだ『りぼん』の世界にいる中、イチ抜けしたわけですもんね。

東村:そうそう。当時、森田まさのり先生の『ろくでなしブルース』が流行ってて、真冬さんっていうキャラが人気だったのね。ヤンキーだし、ツンケンしてるんだけど、すごい好かれてて。でも少女漫画ではさ、いい子で、ドジで、ママともパパとも仲良しで、猫を飼ってて、「もお!プンプン!」みたいに怒る子が人気あるわけ。

恋愛観が全然違うんだよ。ヤンキー漫画では、ヤンキーの男蹴ったりしてる美人が人気あって、少女漫画では、クッキーを焼いて男の子にプレゼントしたりしてるような子が人気。それで「あれ、おかしいな?」って気づいた。

-その頃の先生は実際どういう男の子を好きになっていたんですか?

東村:学年で一番カッコいい、サッカー部とかバスケ部とかの男子とかを好きになってたのは、小学生くらいまでですね。中学生くらいからは、ちゃんと現実味のある感じ。手の届かない人を追っかけるみたいのはやんなかったなあ。

-じゃあ周りの子とはあまり好みがカブらない感じですかね。

東村:まだ牧歌的な時代だったから、現代の海外ティーンズハイスクールドラマみたいなスクールカーストとかはないんですけど、それでもやっぱり運動系と文化系ぐらいには分かれてて、私は運動系の男の子とは全く関わらなかった。別に嫌いでもないんだけど、なんか住む世界が違うっていうか、海の生き物と陸の生き物みたいな感じ。

それで私は「文化系で自分と気が合って趣味も合う男の子が好き」って思ってたな。
でも、周りの女の子はまだ「少女漫画の呪い」がガッチガチにかかっちゃってるから、もう、全然理想高くって、運動神経のいいカッコいい男の子を好きになってた。
私の世代は手作り文化があったから、男の子にクッキーあげたりしてるんだけど、私は男の気持ちもわかるから、手作りクッキーとか編み物とかキメェだろうな、って思っちゃって(笑)。でも、その時期ってそういう子ばっかじゃなかった?

-そうでした……。

山田:手作り文化ってあったね。

東村:先生ももらったでしょ?

山田:うん、もらってたよ。なんかさ、キモいっていうより「どうやって喜ぶフリをしたらいいのかな?」というのを考えるのに必死だった。だって、例えばマフラーの一編み一編みに何らかのものが籠ってるわけじゃない?もう大変ですよ。

東村:優しい!大人な中学生!

山田:いやいやいやいや(笑)。

 


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