いい男を紹介してもらえない女に捧ぐ「ビアンカ作戦」

いい男を紹介してもらえない女に捧ぐ「ビアンカ作戦」


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ここは夜更けの隠れ家的カフェ
「イチルノノゾミ」。
今夜も普通の恋ができなくてジタバタしてる女が、恋愛マスターのサブカルママ「めだかちゃん」に助けを求めに来ました。
めだかちゃんは自分のことを“恋愛の救世主”だと言うのですが…
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プリント


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sakana  

こより「ああ…またハズレが来た…」

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めだか「あんた、また合コン?年がら年中よくやるわね。働き者の漁師?」

「どうせ釣れない漁師よ」
「どうせまた大物だけ狙ってんでしょ。松方弘樹でしょ」
「クルーザーでメカジキ追いかけてませんから私。ハマチで満足ですから」
「贅沢な女ね。松方弘樹に謝んなさいよ」

「何なのこの流れ。あのね、今日は違うの。合コンじゃないの。紹介してもらってたの。いい男いるっていうから、気合入れてきたのに」

「ハマチ来た?」
「フナ以下だった」
「お似合いじゃない。あんたっておたまじゃくしみたいだもん」
「手も足も出てないのね」
「出てもカエルになるだけの女ね」

「何よ!元自衛隊員にフラれたくせに!」
「違うわよ!あたしが元自衛隊員なのっ! 屈強な男たちの世界にいたのよ」
「ゲイにとっては素敵な環境よね」
「多くを学んだわ…」
「ねえ、お風呂とかどうしてたの?」
「………」
「もういい。うっとりしないで」

いい男を紹介してもらう方法はある?

「ねえー…女ってさー。どうしていい男を紹介してくれないんだろうねー。大体何かしらの問題物件出して来やがんよねえ」

「逆にあんたがどっかの女に男を紹介してくれって言われたらどうする?」
「あ・・」
「ね」

「確かに紹介するの難しいかも。その後の付き合いもあるし…彼がいない女って何かと問題あるから迷惑かけそうだし…」

「くすっ」
「はっ!!てことは私も……!?」
「可哀想なおたまじゃくしね」
「うるさい!万年男日照りのくせにー!」
「何よ!あんただってカラッカラじゃないのよ!スーパードライじゃないの!」
「………」
「…今日会った男は何が気に入らなかったの?」

「んーまあ、いい人そうなんだけどね。面白くないのよね~。何か地元の高校の話とかどうでもいい事言ってるし、渋谷に出るには何線が近いとか、今時、女子アナの話とかすんの! もう終わってない? そういう話してくる男とかって……そうそう、あげくに少年ジャンプの話とかしてくるし。バカなんだと思う」
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「あんたは何の話したのよ?アイドル?K-POP?コンビニのスィーツが旨いとか?」
「うっ」
「深夜の通販にハマった話とか?」
「そこは我慢した!」
「最近、腰が痛いとか手足が冷えるとか、クソつまんない話してないでしょうね?」
「………」
「やっちゃったのね」
「…冷えるのよ、この季節は…」

いい男はビアンカを選ぶ

「それさ、上手く行ったかもしれないわよ」
「何でよ。同じ、つまんない話する連合って言いたいの?」
「違うわよバカ。ほとんどの男ってのはビアンカを選ぶって話」
「は?」
「あんたはブサイクなくせして、自分をフローラだって思って売り込んでんのよ」
「だから何言ってんのかわかんないんですけど!何よビアンカって?」

「ドラクエ5でしょーが!」
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「知らないわよ!!このオカマオタク!!」
「ドラクエ5は一般常識よ!こんなもん両生類でも知ってるわよ」
「いーえ!知りません!もうみんなスマホでしかゲームなんかしません!」
「なめこ育てるやつ?」
「それも古くない?」
「……」
「ハマってたのね…そのビアンカって何なの?」

「ドラクエ5の主人公の男の子と子供の頃から仲良しの女の子の名前よ」
「ふうーん」
「つまり幼なじみね。ビアンカってやんちゃで元気な女なのよ、ボーイッシュで」
「それで?」
「2人は1度別れて大きくなってから再会するの」
「いい女になってるわけね。ビアンカ」
「そう。でもね、ちょうどその時、主人公は大金持ちのお嬢様のフローラって女にも出会っちゃうわけ。そのフローラってのがまた清楚系アイドルみたいで可愛いのよねー」
「あらら。それってもしかして?」
「そう。主人公の男はその2人の中のどちらか1方としか旅に出られないわけ」
「選ばされるのね……つーか何そのゲーム。ひどくない?」
「ひどいのよ。そしてこのゲームを子供の頃に体験した男の子はみんなその、ひどい選択をさせられたわけ」
「へえー」
「そして、ここが大事なんだけどね」
「ふんふん」

「ほとんどの男の子が幼なじみのビアンカを選ぶの」

「えーーーーー!」

「色々なメリットがあるのに、それでもあえて、自分との思い出があるビアンカを裏切れないのが男の子なのよ。女なら絶対に金持ちを選ぶけどね」

「ちょっと、そんなことないわよ」
「本心で言ってる?」
「………お金持ちの清楚系フローラを選んだ人はいないの?」

「もちろんいるわよ。でもね。そういうヤツはその後、重ーい何かを抱えて旅に出るのよね」
「俺はビアンカを裏切った…って(笑)」
「この思いに苦しんでいる30・40代の男って多いのよ」
「男って…」

見た目だけでは幸せになれない

「ねーねーそれってつまりどういう事?」

「まずは友達になって、2人の思い出を作れって話よ」

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「えーめんどくさーい。だって男って付き合う気のある女って結局最初の見た目で決めてるじゃん」
「バカ。そんなの当たり前の話!それで選ばれる女にはこんな話しないわよ」
「あ…」
「問題は、見た目がおたまじゃくしの女よ」
「しつこいんですけど」
「フローラ作戦が許されるのは、絶世の美女だけだから。髪だのメイクだのキメキメにするだけで、ブスがフローラになろうなんざ1億年早いわ」
「ブスって言うなー!!!じゃあどうすればいいのよ!!!」

「2人でスライムと戦うのね」

「スライムなんかいませんけど!」

「友達ミッションをでっち上げればいいだけよ」

「友達ミッション?」
「例えば、親戚のおばさんが来るんだけど、いい雰囲気で美味しい料理出すお店ないかな?みたいなね」
「おお!」
「で、男がすぐ食べログで片付けようとしたら、ねえ・・この格付って信用できるのかな?試しに行かない?なんて言って2人でそのお店を審査しに行っちゃうわけ」

「なにそのテクニック…」
「で、そのお店が良かったら、2人の勝利。ダメなら屈辱の思い出を抱えて、次の店を探そう…よ」
「2人で冒険してる…!」
「で、好きにならなかったら友達になればいいじゃない」
「こんなテクまで…自衛隊で?」

「あんた頭もおたまじゃくし並ね。ポイントはね。ビアンカって友達だった時代がある女なのよ

「彼氏、彼女じゃない時間があるのね…」
「そういう時間ってパートナーになる2人にとっては、案外大事な時間なのよ」
「ううっ」
「会う男を片っ端から第1次審査で落としまくってたら何も広がらないわけ」
「ノミネートはしろってことね」
「おたまじゃくしなりにね」
「……」

 

<山田玲司の解説>
「対戦プレイより協力プレイを」

確かに人生は「誰と結婚するか」で大きく変わります。
仕事ができて年中海外旅行に連れて行ってくれる旦那もいれば、酒に溺れて仕事もしないで妻を殴るバカ旦那もいます。
親の世代がその件で苦労をしているのを見てきた人は、どうしても「完璧な相手」を探したくなるのもわかります。

でも問題は、この「完璧な結婚相手を選ぶ」というミッションに真剣になればなるほど、相手の幸せや周囲の幸せなどが考えられなくなってしまうことです。

「私を幸せにしてくれる完璧な相手」を探そうと「あの人はあれがダメ」「この人のここがダメ」とダメ出しジャッジばかりしていると、外からは中々に「殺伐とした人」に見えるものです。
行き過ぎた「エゴ」は人を「醜く」見せてしまうのです。

そうは言っても、変な相手を選んでしまっては後悔します。
なので、とりあえずは、相手を最終審査に連れて行かず、何か2人で楽しめる事をしてみたらいいのです。

向い合って相手の弱点を探しては攻め合うような「対戦型のプレイ」は止めて、2人で協力して楽しむ「協力プレイ」をするところから始めるべきでしょう。
「従兄弟のお兄さんの結婚祝いを選ぶミッション」とか、小さなものでいいんです。
そして2人で「失敗」を楽しんでみて下さい。

「そんな時間はないんです!」という気分もわかりますけどね。こればっかりは焦っても良い相手は見つからないものなんで、まずは「人に優しく」です。

「戦いの様な恋愛」をしていると「戦いの様な結婚」が待ってますからね。

 

『おそらく彼は「もう1度話し合おう(涙)」 と来ます。でも実は、「しばらくほっておいたら、 どうにかなるだろ」と思っています。~男の本音を密告する「恋の男子更衣室」~』

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Written by yamadareiji

山田玲司(やまだ・れいじ)/漫画家
1966年東京都生まれ。20歳で漫画家デビューし、恋愛のマニュアル化を風刺した『Bバージン』で一気にブレイク。近年は“モテ”の絶対理論を語った注目作『モテない女は罪である』を発表。大人の恋愛サイト「AM」で様々なケースの恋愛相談を受けるなど、「いったい男は何考えてんの?」の問いに答えられる稀有な存在となる。著名人との魂の対談漫画『絶望に効く薬』シリーズや、『非属の才能』(本屋大賞、中2賞受賞)といった新書でも知られる。「山田玲司のヤングサンデー」(ニコニコチャンネル)、「スーパースーパーブルーハーツ」(クラブサンデー)連載中。

»http://yamada-reiji.com/

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