東村アキコ×山田玲司 豪華対談!【後編】漫画みたいな恋って本当にできるの…?とか言ってて彼氏ができない人は、すぐにこれを読んでください。

東村アキコ×山田玲司 豪華対談!【後編】漫画みたいな恋って本当にできるの…?とか言ってて彼氏ができない人は、すぐにこれを読んでください。


ボーダーラインで苦しむ女たち
一体なにがそんなに苦しいのか?

-さっきの、美人で仕事もできて、でも不倫しちゃう人たちは、不倫が楽しいわけじゃないですか。でも、結婚もしたいから悩んじゃうわけですよね。「私は一生ひとりでいいし、子供も産まない。とにかく恋愛を楽しむ!」とまでは振り切れない。

山田:でもさ、それって別に二択じゃなくていいでしょ?状況ってつねに変わるわけですよ。相手も変わるし自分も変わる。何もかも変わっていくものだから。
「結婚するか、一生ひとりか」っていう、ものすごく単純な二択だから「この人と付き合わないとどうなるんだ私は。ひとりで死ぬのか」みたいな話になってしまう。

でも、そんなこと全然なくって。別に3人くらいの男を好きになってもいいじゃない?ってのもあるし。フランスみたいな恋愛もあるし、ステップファミリーなんてのもあるしさ。日本式の「理想の家族」なんかとっくに崩壊しているし、それができてる人なんて、そうそういないよ。まあ基本夫婦ってのは、破綻してるもんだから。その現実を踏まえた上で、もうちょっと自由に考えた方がいいんじゃないの?とは思う。そうしたら楽になるからね。

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-なるほど。

山田:紙切れ一枚で一生一緒にいられるわけないって話だよ(笑)。手を繋いでる時に手錠かけるのが結婚でしょ? 手錠はかけられるかもしれないけど、繋いだ手は離せるんだよ。

東村:いい例えですねーっ!

山田:手錠は邪魔になるし、痛くなるんだよ、(笑)

東村:血が出たりして(笑)

山田:そうそう(笑)。結婚した後に子供っていう手錠がかかることもあるし、その他の社会的なことでも手錠はかかる。でも、繋いだ手はとっくに離れてる。それが現実じゃない?

-つ、辛い……。

山田:だから考え方を変えちゃえばいいんだよ。明日になったら好きな人が変わったっていいし、好きになった人と一緒にいればいいじゃん、って。その都度、アップデートとか、バグの修正をしていけばいいんだよ。
それを「一生愛する!」って決めるからダメになる。長ぇっつの、一生は(笑)!

東村:そういう「一生愛する!」的な考え方って少女漫画にもあって、ほんとによくないところだよね。

山田:「シンデレラ幻想」があるんだよ。昔のディズニープリンセスがそう。でも『アナと雪の女王』とか観てると、そういう幻想が更新されつつあるのを感じる。『ズートピア』でもカップルは成立しなくて「ああ、次の段階に行ってるな」って思うし。これからの世代は変わって行くような予感がする。ほんと、タラレバ世代くらいが一番……

東村:一番「ボーダー」だよね!
昔ながらのシンデレラ・ストーリーと、新しい価値観が境界線上でせめぎ合ってる。

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-その話でいうと、私は東村先生の『主に泣いてます』がものすごく好きなんですよ。
シンデレラ幻想のその先を行っていると感じるんです。泉さんという超絶美人と赤松という美大生が出てきて「結局ふたりは付き合ってんの?どうなの?」みたいな感じで終わるじゃないですか。

しかもふたりが今まで住んでいたところから孤島に引っ越してるんですよね。

つまり、これまでのコミュニティとかこれまでの価値観とは無関係の場所に行って、誰からも意味づけられない自由な関係性を構築すると。それが恋愛かどうかはわりとどうでもよくて、両者にとって心地いい関係なんだから、周りはほっておけばいいんじゃねぇの?という結末になっていて「すごい!」と思ったんです。

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東村:ありがとう(笑)解って頂けてほんとに嬉しいよ。

-ふたりを安易にくっつけなかったのがほんとに最高で……。

東村:それは「老後」について考えてるからで。別に老後のために今を生きてるわけではないんだけど、例えば、うちにはアシスタントの男の子が一杯いて、自分の息子のような感じなんだけど、もしも老後になってふたりっきりだったら一緒に暮らすかもしんない。そういうことって、ありうるわけじゃん。

-はい。

東村:それはもちろん女同士でもよくて。女のアシスタントさんと二人で支え合って生きる老後でもいいんだけど、もし片方がもう片方のこと好きだったら、もっといいわけじゃん。たとえ両想いじゃなくってもね。そういうことを『主に泣いてます』では描いた。まあ漫画としてはヌルいんだけど。ヌルいんだけどその方が夢があるな、とは思いましたね。

-ほんとに夢がありました! やっぱり恋愛漫画って、誰かにものすごく影響を与えちゃったりとか、それこそ一生不倫から脱け出せない人を作ってしまう、ある意味でとても罪深いものだと思うんですね。

でも、東村先生はそういう人を極力作らないようにしていると思うんですよ。恋愛を描くんだけど、単純なシンデレラ・ストーリーじゃない。幸せとひとくちに言っても、いくつものルートがあるじゃん!ということを、すごく丁寧に描いてくれる漫画家さんだと思うんですね。

東村:私、ブラックジャックとピノコが好きだったんだよね。高校生の頃とか、あの関係性になんかドキドキしてて。なんていうんだろう、娘であり妹であり恋人であり母親であり奥さんでもある。でも、実はそのどれでもない。そういう関係が一番美しいというか。

例えば、男女の関係性を一種類に決める約束をしたとしても、それって2年くらいで壊れちゃうわけだよ。
でも、約束をしなければ、壊れることもない。まあでも、そういう関係って、日本の文学では普通に出てくるよね。
でも、少女漫画って文学とは違うから、嘘をついちゃうわけじゃん。「永遠の約束が通用する」っていうさ。

-それこそ宗教ですよね。

東村:でもさ、文学みたいに、ずっと約束をしない関係でいて、それこそ大きな天変地異とかがあった時に、「ひょっとしてこの関係性、変わるかも?」みたいなのを志した方がモテるんじゃないですかね(笑)。最初から決めず、ガツガツもせず、みたいな。

 

彼氏がみつからない
=(イコール)お眼鏡にかなう人がいない…?!

東村:(ガッツリ恋愛の話をしたいからと、お父様の健一さんをお散歩へと送り出して)
……私の周りにいる人たちって、彼氏いない人も多いし「結婚できない!やばいやばい!」って焦ってるんだけどさ……なんていうかさ、いっっっくらでも独身の男の人いると思うんだけど?みんな周り見て?いっっっっくらでもおるよ! いっっっっくらでも! ざっくざく! 佃煮にするくらいいるのに!

山田:そうそう(笑)!本当そうだよね。そこら辺にいるじゃん。

東村:呑み屋とかにいれば、ざっくざくおるのに。

山田:いるね(笑)。

東村:この地球最大規模の人口過密都市で「彼氏が見つかんねえ」って、なーーーにをいってんのかな?って。ど田舎住んでるとかならまだわかるんだけどさ。自分のお眼鏡にかなう人がいないってことなのかな。

山田:男女両方が審査員席にいて、審査し合ってるからね。選択肢が増えると人は不幸になるって話があるんだよ。例えば20種類の缶詰を置いている店と5種類しかない缶詰の店があるとしたら、お客さん入るのは20種類の方なんだけど、売れるのは5種類しかないほうなんだよ。

アイドルだって同じ。昔はピンクレディが2人、キャンディーズが3人で「どれが好き?」って感じだったけど、今は48人のアイドルが各都市にいたりなんかして、どれを好きになればいいのかわからない。それで「世界は美少女で溢れている」と思って一歩外に出ると「いやそうでもないな」って感じのマジックにかかったりとかして、結果的に人生を台無しにしちゃうの。

東村:そうだね。

山田:だから、アキコの生存戦略はいいと思うよ。身近な人をちゃんと愛して、リアルな人間関係を作りつつ、アイドルも好きで。

東村:そうそう。私は「近くに2PMのチャンソンみたいな人いないかな?」なんてまっっっっったく思ってないよ。
漫画家としてイケメンを描くことがあるから、ショーは見るけど、現実と混同はしない。
でも、ほとんどの人が現実と混同しちゃうんだよね。

山田:幻想と現実のバランスだよね。

東村:さっき『主に泣いてます』の話が出たけど、やっぱり誰が・いつ・どのタイミングでカップルになるかなんてわからない、っていう気持ちで生きてないとダメだと思う。なんていうか、文化祭前夜みたいな。文化祭の前の日に、なんかくっついちゃうカップルっているじゃない? そのカケラだけでも取り入れた方がいいのかなと。
そういう子ってだらしなかったりもするけど、すぐ彼氏ができたり、すぐ結婚したりするじゃない。あのエッセンスはちょっと取り入れてもいいのかなって思う。

-じゃあ理想を求めすぎる人はまずいってことですね。

東村:うんうん、そうだね。何年も片思いしてる人とか普通にいるけどね。

-理想を求め続けて彼氏できない子、たくさんいますよ。

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