【他人やSNSに流されない!】「自分の意見」を持っている人になるための思考法「5ステップ」を、注目の哲学者が解説


「会議で自分の意見が言えない」「企画のアイデアがまったく浮かんでこない」「人の意見に流されてしまう」……こうした悩みはセンスの問題ではなく、思考のきっかけとなる「問い」が足りないだけ——そう指摘するのは、哲学者で、山口大学国際総合科学部教授を務める小川仁志(おがわひとし)先生。

大学で課題解決のための新しい教育に取り組む傍ら、全国各地で「哲学カフェ」の開催、数多くの著書やメディアで哲学の普及にも努め、現代を生きる私たちに「考えることは問いから始まる」という、極めて重要なメッセージを投げかけています。

ここでは、小川先生の新刊『なぜ、何も思いつかないのか? 自分の頭で考える力がつく「問い」の技術』より一部を抜粋の上、他人の意見に流されず「自分の意見」を持つための思考法について、ご紹介していきます。

 

「問い」がないから「意見」もない!

「これについてどう思いますか?」

一通り話をした後、授業の中でそう問いかけると、たいていはシーンとしてしまいます。そこで仕方なくもう一度ポイントをかいつまんで話し、再度尋ねます。そうすると、今度は何人かが答えてくれます。なぜ最初に答えられないのかというと、決して理解力が悪いわけではなく、受動的に話を聞いているからです。つまり頭の中に意見が形成されていない状態といえます。言い換えると、意見がないわけではなく、意見を出すために聞いていなかったというだけのことです。

では、なぜ二度目は答えることができるのか? それは答えるために聞いていたからです。

二度目の私の話は、「これについてどう思いますか?」という問いを前提としています。学生たちは、自分の中でもその問いを反芻し、自分自身に対して「どう思う?」と問いかけながら話を聞いているわけです。その場合、私の話のすべては問いに答えるための素材となり、情報が頭に入るごとに整理されていくでしょう。その結果、話し終えると同時に意見が作られるのです。


(イメージ:イラストAC)

ここからわかるように、「意見がない」と思うのは、問わないからです。もし最初から自分の中で「どう思う?」と問うていれば、一度目で意見が出たはずです。

これは普段から私たちが意見を出し合う場でも起こっています。会議の場で、講演会の質問の場で、常に同じことが起こっています。そして質問を含め、意見が出るのは、決まって問いをもって話を聞いていたときです。人間は、「どう思う?」と問われれば、なんらかの思いを抱く生きものです。あとはそれを言語化できるかどうか。ここでうまく言語化できれば、それが意見になります。できなければ思いだけで終わってしまう。そのせいでモヤモヤすることもあるでしょう。


(イメージ:イラストAC)

最近はよく言語化が大事だといいます。一般的には自分の思いを具体的な言葉にする技術という意味ですが、私が重視するのは、技術の前に「とにかく思いを言葉にすること」としての言語化です。そしてそれは、問うことによって可能になります。つまり、自分の言葉は問うことで初めて手に入れられるのです。

 

一番“厄介”なのはSNSのインフルエンサー?

それにしても、どうして私たちは日頃あまり問うことがないのでしょうか? これにはいくつか原因があると思います。1つは日本には問う文化がないからです。学校教育を見れば明らかなように、日本の勉強とは受動的に話を聞いて知識を身につけることであって、問いを投げかけることではありません。むしろ答えが求められているのです。その結果、質問をする習慣が身につきません。また社会では、質問するのは野暮なことであるかのような風潮が蔓延しています。以前アメリカの小学校を視察したり、アメリカの大学で授業をしたことがあったのですが、彼らの態度は真逆です。

日本だと質問は最後の5分程度と決まっていて、手を挙げる人もちらほらですが、アメリカでは小学校から大学まで、みんなが終始質問し続けます。こっちがまだ話しているのに、手を挙げたり、不規則に質問したりしてくる。まさにカルチャーショックを受けたのを覚えています。

さらに最近では、もう1つ厄介な原因が拍車をかけています。SNSです。SNSで目にする他人の意見は、とても刺激的で影響力があります。とりわけインフルエンサーたちの意見は、あたかも正しいかのように思ってしまいがちです。そうすると答えを教えてもらえるので、わざわざ自分で考える必要がなくなってしまいます。


(イメージ:イラストAC)

もちろん、彼らは最後に「あなたはどう思う?」と問いかけてくるので、コメント欄に意見を記入できますが、説得力のあることをいわれたら、「そのとおり!」としか思えないのではないでしょうか。現にコメント欄で議論が白熱するなんてことはまれです。普通はその投稿を肯定するだけのコメントで埋め尽くされます。

さらに困ったことには、SNSのアルゴリズムが、自分のお気に入りの情報ばかり表示するので、もともと納得のいく答えだけを見ている可能性もあります。そうすると、疑問を持つきっかけさえ与えられなくなってしまうのです。情報媒体の本来の意義は、考える素材を提供することです。新聞やテレビのようなマスメディアはそのために存在していましたしかし現在のSNSは、人を導くための素材を提供するのが存在目的であるかのようになっています。

その結果、SNSの意見がそのまま自分の意見にすり替わっているのです。しかもそれは思考のプロセスを欠いた弱い意見に過ぎません。人と議論すれば、すぐに言葉に詰まってしまうのではないでしょうか。そうならないように、問いを立て、思考し、自分のオリジナルな意見をいえる環境を作っていかねばなりません。そのためにはまず、問いを邪魔する教育やSNSに流されないこと。日常をスルーしない力を身につけることです。簡単なことではありませんが、不可能でもありません。私はそれを可能にするためのヒントを提示しています。

 

問いを立てるための「5ステップ」とは?

さて、すでにお伝えしたように、問いは思考法です。私はそれを問考法と呼んでいます。文字どおり、問いながら考える方法ということです。その具体的な方法を理解してもらうために、簡単に全体像を示しておきましょう。問いによる思考法は、5つのステップに分かれています。


(イメージ:イラストAC)

① 観察する

「観察」とは、問いの素材を見つけることです。問いを作るためには、そもそも何を問うのか決めなければいけません。実際にはよく観察していれば、勝手に決まっていくものなのですが。そのためには、日常をスルーしないことが必要です。このステップではそのための「スルーしないスキル」を身につけます。

② 想像する

対象を見つけたら、問いのあらゆる切り口を探すために想像を膨らませます。物事は切り口が10割。なんでもどう見るかで変わってくるということです。その対象を「どう見るか」考えるステップです。

③ 考える

ここからは徐々に「考える」パートに入っていきます。問いは単にクエスチョンマークをつければいいわけではなく、パターンやプロセスがあります。どの切り口で問うのか、さらに問いをきっかけにどう考えを深めていくのか、実際に思考実験をしながら進めていきます。

④ 言葉にする

頭の中で思考を深めたら、次に問いを形にしていきます。問いを立てるにしても、意見としてまとめるにしても、ほかの誰でもない自分の言葉が必要です。自分の言葉でしか世界は捉えられません。

⑤ 勇気を出す

何事も勇気なくしては成し遂げることはできません。勇気こそが問いに命を与えるのです。

いかがでしょうか? 全体像はつかめたのではないかと思います。あとは、問いながら考えるための各ステップをしっかりと実践するだけ。途中で迷ったら、ぜひこの全体像を振り返ってみてくださいね。

 

本書『なぜ、何も思いつかないのか? 自分の頭で考える力がつく「問い」の技術』では、ご紹介した、問いをたてるための「5ステップ」の細かな説明はもちろんのこと、課題が山積する現代で、自らの「考える力」と「感性」を磨き、自分にしかないアイデアを生み出せるようになる思考法について、あらゆるアプローチをご紹介しています。

みなさんも、世界を自分の言葉で「描き」かえてみませんか——?

\好評発売中!/
なぜ、何も思いつかないのか?  自分の頭で考える力がつく「問い」の技術
著:小川仁志

小川仁志

哲学者・山口大学国際総合科学部教授。1970年、京都府生まれ。京都大学法学部卒、名古屋市立大学大学院博士後期課程修了。博士(人間文化)。商社マン、フリーター、公務員を経た異色の経歴。徳山工業高等専門学校准教授、米プリンストン大学客員研究員などを経て現職。大学で課題解決のための新しい教育に取り組む傍ら、全国各地で「哲学カフェ」を開催するなど、市民のための哲学を実践している。専門は公共哲学、哲学プラクティス。
メディアでの哲学の普及にも努め、NHK・Eテレ「世界の哲学者に人生相談」、「ロッチと子羊」では指南役を務めた。近年はビジネス向けの哲学研修も多く手がける。ベストセラーとなった『7日間で突然頭がよくなる本』(PHP)をはじめ、『ジブリアニメで哲学する』(PHP)、『悩まず、いい選択をする人の頭の使い方』(アスコム)など著書多数。これまでに100冊以上を出版している。YouTube「小川仁志の哲学チャンネル」でも発信中。

公式HP http://www.philosopher-ogawa.com/
YouTube 小川仁志の哲学チャンネル
X(旧Twitter) @htsh1970