「見たくないもの」に蓋をする人生の末路/シークエンスはやとも
“あなたがもしかすると見えていない世界”を、
視えすぎ芸人シークエンスはやともが毎月お届けしていきます。
プロローグ「現代は、一億総ネタバレ社会」はこちら
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第1回「「おとなこども」ってなんだろう?」はこちら
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「異世界転生モノ」に逃げる現代人
みなさんは、ご自分の人生に満足していますか? 「職場の人間関係がうまくいかず八方塞がり」「パートナーの浮気が発覚して大揉め中」「子どもが学校で問題を起こしてしまった」……生きていると、あらゆる立場・場面で、不条理なこと、腹の立つこと、思い通りにいかないことに遭遇しますよね。
それでも僕たち大人は、そんな“うまくいかないこと”にも、なんとか折り合いをつけて生きています。頑張っていればかならず辿り着けるユートピアがあると良いけれど、どうやらこの世界ではそう簡単にいかない仕組みになっているらしい——そんなことを理解しつつ日常を歩んでいく。本来、それこそが人間の営みであり、社会というものなんです。
ところが昨今、ここに破綻が生まれつつあることに、みなさんはお気づきでしょうか? 本来あるべきユートピアを目指しても、なかなか人生はうまくいかない。だったら臭いものには蓋をして、逃げたらいい! そんな“臭いものには蓋”精神の行き着いた先が、昨今大流行中の、いわゆる「異世界転生モノ」と呼ばれるコンテンツだと思うんです。これには、厳しくなりすぎたコンプライアンスの弊害もあるかもしれません。つまり、何をやってもハラスメントになったり思い通りにいかない世界ならば、「妄想だけでもユートピアへ行ってしまえ!」というわけです。
とはいえ、鑑賞者の願望を叶えることは、芸術表現における大切な役割。ですから否定はしません。ただ、社会が欠落しはじめていることも否めないと思います。かつてはユートピアを目指していた人たちが、社会に絶望し、放棄し、逃走しはじめた結果として「異世界転生モノ」の大ヒットへと繋がったと、個人的には考えているからです。
「みいちゃんと山田さん」アニメ化は“悪”なのか?
そんななか、マンガ『みいちゃんと山田さん』(講談社)のアニメ化に関する報道が、連日のようにSNSを炎上させることになりました。大ヒット中のマンガなのでご存知の方も多いかと思いますが、夜の街・キャバクラで働く「山田さん」と、同じキャバクラに新人として入ってきた、何をやっても失敗ばかりの「みいちゃん」(注:マンガでは明記されていないものの、知的障害・発達障害・パーソナリティ障害などを抱えているキャラクター)を中心人物とした、さまざまな意味合いで苛烈な現実を読者に突きつける、可愛い絵柄ながら重いテーマを扱った作品です。
いわゆる夜職や風俗など、社会の闇とされるものと、みいちゃんの抱える障害をリアルに描いているため、「これをアニメ化するのはよろしくない」「子どもの目に触れさせてはいけない」「偏見や差別を助長する」といった議論がなされたわけですが、あくまで個人的な見解としては、正直「また、世の中が臭いものに蓋をしはじめている」——と感じざるを得ませんでした。このままでは、現代を生きる若い人たちは、世間のコンプライアンス(倫理的配慮)に縛られて、「臭いもの=現実」に触れられぬまま生きていくことになるのではないでしょうか。
加えて、最近では山田さんやみいちゃんの仕事でもあるキャバクラに勤めている女性たちが煌びやかに並ぶYouTube番組も放送され、ショート動画が量産されています。地上波と動画配信サービスの垣根が崩れ去った今、それらが子どもたちの目に入ることは規制されず、『みいちゃんと山田さん』で描かれる闇の部分(臭いもの)だけは拡散すべきでないという世論に、どうしても僕は疑問を抱いてしまうんです。
念のために申し上げると、僕は職業差別をしているのではなく、夜職に就かれている人を悪いとも思っていません。しかし、彼ら彼女らは本来「夜職や性産業に従事するしか選択肢がなかった」という人が多いという現実があるにもかかわらず、華やかな一面だけを見せるので、今では「きれいなキャバ嬢さんになりたい」と夢を語る子どもさえいる。そこで必要なのが『みいちゃんと山田さん』なのかもしれません。世の中の暗部を、せめてフィクションでは摂取できるようにしておかないと、逆に、子どもたちの未来が危うくなってしまうのではないでしょうか。これは、あくまで世論とズレた考え方なので、なかなか言い出しづらいことでもあるのですが……。
「見たくないもの」を見るメリットがある
さて、みなさんは、『みいちゃんと山田さん』で描かれるようなリアルな現実を、知らないまま生きていくのと知って生きていくのとでは、どちらが良いと考えますか? いろいろな考えがあると思いますが、僕個人の意見としては、断然、知っておいたほうが良いと思います。たとえば、世の中にはさまざまな障害がありますが、困りごとを改善することはできても、基本的にはそれらを受け入れ、共存し、その上でサバイブしていく方法を考えるほかありません。これは、あなたご自身の場合でも、お子さんの場合でも同様です。
親御さんなら、お子さんが「自分なんかダメだ……」と落ち込んでも、知識さえ携えておけば「こういう世界もあるんだよ」「あっちの道だって素敵だよ」と、あらたな可能性という希望を与えることができるでしょう。一方で、問題なのは親御さんご自身が臭いものに蓋をするケース。新しいことを勉強する余裕もないし、見たくないものを見るつもりもない……。『みいちゃんと山田さん』アニメ化の件で「子どもが学校で“みいちゃんだ”といじめられたらどうするの?」というコメントも見かけましたが、誤解を恐れず言うならば、それはお子さんがかわいそうなのではなく、ご自身がお子さんを受け入れる余裕がないだけなのかもしれません。
ご自分が、あるいはお子さんが嫌な思いをしないためには、あらかじめ現実を見つめてあらゆる手段や対策を用意しておくしかありません。臭いものに蓋さえしなければ、その方の人生の選択肢は無限に広がっていくはずです。話が長くなるので簡略的な言い方になりますが、そもそも日本では障害を悪(臭いもの)とする風潮自体が異常に強く、それこそが根源的な問題なのですが……。
先ほどの親御さんのケースもそうですが、人間は自分が理解できないもの、安心できないものは「悪(臭いもの)である」と認識し、蓋をするほうがラクなんですよね。それは僕もよくわかります。でも、可愛いタッチの絵柄で「これくらいなら、どう?」と、人生のリアルを届けてくれるのが、実は『みいちゃんと山田さん』なのかもしれません。
今回はここまで。それでは、幸も不幸も楽しめる人生を!
ひらけ!視えない扉

まだまだ暑い日が続きますが、暦の上ではすでに秋。十五夜の美しい月を眺めるなど、次第に長くなる夜に自分と静かに向き合う機会が多くなっていくタイミングかもしれません。
夜が長くなると、どこか物寂しさを覚えるものですが、今、季節を問わず幅広い世代で“孤独”に対する漠然とした不安が強まってきているように感じます。スマホを手に殻に閉じこもっていては、孤独感はつのるばかり。実は、人と繋がるために便利だったはずのスマホが、逆に、リアルな対人関係を育む上では“邪魔”な存在になりはじめているんです。
そこで、みなさんにおすすめしたいのが「脱・スマホ」です。
人と目を合わせて会話をしたり、食事をすることの楽しさが身にしみればしみるほど、漠然とした不安は解消されていくはず。つまり、スマホから離れるほどに不安は減り、幸福度が上がっていくと言っても過言ではないでしょう。あくまでリアルな生活を補うものとしてスマホ(AIやSNSなど)がある、と捉えておくと良いかもしれません。
そこで「脱・スマホ」のために、今日からできる“おすすめアクション3選”をご紹介します。
1. サウナ
朝の散歩や、僕がハマっている筋トレもおすすめですが、もっとも簡単にスマホから離れることができるのがサウナです。サウナ室と外気浴の行き来を何セットかするだけで、強制的に1時間半はスマホを手にすることができません。
2. 神社巡り(御朱印帳)
さすがに「神社の中でスマホに夢中になってしまう」という人は少ないですよね(笑)。御朱印帳巡りは何箇所も廻りますので、特におすすめです。
3. お笑いのライブ
お笑いのライブはアイドルやミュージシャンのライブと比べて単価ひとつ安く、コスパも最高! しかも今は絶賛お笑いブームですから、劇場に立てる芸人の水準が高いんです。スマホなど忘れ、涙を流して「ああ、元気になれた〜」という体験ができるはず。
どれも「脱・スマホ」への第一歩としておすすめですが、特にお笑いライブは終わった後にも良い余韻が残りますし、「明日からまた頑張ろう」という希望がもらえるはず。推しができたら仲間も増えますし、まさに一石二鳥ですよ!
構成・文/国実マヤコ
*第5回は、9月30日(水)に配信予定です。
シークエンスはやとも
1991年生まれ、東京都出身。吉本興業所属。
子どもの頃、とある事件現場を目撃したことから霊が見えるようになる。芸人として活動開始後、先輩芸人などの霊視を行っていたところ、的中率の高さに霊視依頼が止まらなくなる。以降、“視えすぎ芸人”としてテレビ番組などに出演し話題を呼ぶ。著書に『ヤバい生霊』(光文社)、『霊が教える幸せな生き方』(KADOKAWA)、『霊視ができるようになる本』(サンマーク出版)など多数。YouTubeチャンネル『シークエンスはやともチャンネル〜1人で見えるもん。〜』の登録者数は50万人を超える(2026年3月時点)。
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