第1回:夫にイライラ…不満だらけの夫婦関係をどうする?【前編】
7月発売予定の書籍「恋愛迷子に贈る しあわせのコンパス」に先駆けての特別短期連載。
多くの女性からの恋愛相談を受けてきた恋愛研究者・ANNAさんが、読者のお悩みにズバッとお答えします。容赦のない、しかし愛に溢れたアドバイスは、あなた自身にも当てはまる、かも…!
人気漫画家・はるな檸檬さんの描く臨場感あふれる相談の模様もお楽しみに。
今回は、恋愛関係の行き着く先……結婚生活でのお悩みに答えます。結婚して5年のミキさん(仮名・38歳)は、長い恋愛期間を経て結婚した夫に、愛情を持てなくなってしまったそう。何が彼女をそうさせたのか? そして、冷めきった夫婦関係を改善するためにANNAさんがアドバイスした、思いもよらない方法とは……!?
夫のココが嫌!ラブラブだった夫婦が今は「一緒にいたくない」
ANNA ご結婚されてからのお悩みということですね。どういうご夫婦なんですか?
ミキ 私も夫も同い年で38歳。元々専門学校の同級生です。付き合って12年目で結婚して、それから5年経つのでトータル17年ですね。3年前に女の子を出産して、3人家族です。
ANNA お付き合いが長かったんですね。
ミキ 恋人期間が長くて、籍を入れてからもあまり関係は変わりませんでした。大きく変わったのが出産後。彼はいつも仕事が忙しくて、夜遅く帰ってきたり、繁忙期には1週間くらい帰ってこなかったりするんです。それでも夫がお金を出してくれてるならいいのかもしれませんが、うちは収入が同じくらいなので支出も同額。そのうえ育児も家事も私が多くやっているから、え、あたし負担多くない?って。仕事に復帰してしばらくの期間が一番キツかったです。
ANNA いつ復帰されたんですか?
ミキ 生後6ヶ月です。保育園に入れて、完全復帰。ホルモンバランスの崩れなのか情緒不安定になって、夜動くことも多い仕事だったので辛くて……泣いてました。泣いて、辛いから助けてって夫に訴えたら、一応わかってくれて、育児とか家事をやれる時はやったりするんですけど……すぐ忘れちゃうんです。
ANNA なるほど。
ミキ 掃除は気にならないみたいで全然やらない。そうするとこっちはイライラが募って、余裕がないからついキツく言ってしまって。夫は見た目は優しそうなんですけど……怒鳴るんです。DVまではいかないけど、カーッとなると抑えられない。結婚前からそうでした。
ANNA どういうことを怒鳴るんですか?
ミキ 大したことじゃないんです。例えば夕食を「先に食べてて」と言うと、「なんで一緒に席につかないんだよ!!」とか。基本さみしがり屋なんで、かまって欲しいみたい。あとは、触れて欲しくないところに触れられると、変なスイッチが入ってキレちゃう。
ANNA 感情が出る時に声も大きくなるということ?
ミキ そうです。
ANNA 怒鳴るのは、頻度としてはどれくらいあるんですか?
ミキ 月1回あるかないかくらいですかね。子供も3歳でわかるようになってきましたし、「次にまた怒鳴ったら出て行って欲しい」と話したら、最近は減りました。でも、改善する素振りを見せて、何も言わないと戻っちゃう、の繰り返しです。家事も負担が大きいし、愛情もなくなってきちゃって……。私も彼も子供はすごく可愛がってるんですけど、この子が大きくなって巣立ってしまったら、え、2人になっちゃうの?って。今ですら2人でいるのが嫌なのに。
ANNA 子供がいるからなんとか繋がっているけど、子供がいなくなったら2人を繋ぐものがなくなると。
ミキ そうです。2人きりの時間をどう過ごせばいいのか、想像もできません。基本的に私たちは趣味も違ってて、夫はミリタリーオタクですけど、私は舞台を観に行ったりしてる方が楽しいんです。最初は夫の顔がタイプで、子供を産むまでは、周りにも本当にラブラブだよねーって言われてたくらいでした。悪い部分があっても、それをカバーできるくらい好きだったんですが、今は悪い部分ばかり見えてきちゃって……。
ANNA 顔がタイプってだけで12年も付き合えるんですかね。波長が合ったり価値観が合ったり、一緒にいて楽じゃないと厳しくないですか?
ミキ 一緒にいて楽っていうのはあったと思います。
ANNA でも今は楽じゃないんですか? 一緒にいて。
ミキ 楽じゃない。いないとホッとする。一度、夫が海外出張に行ったときに、娘と2人で自由に楽しくいられて、すごく自分が解放された感じがしました。それで、夫の存在がこんなにストレスだったんだと気付いたんです。いなきゃいないで、相手に「やってよ」とか思わなくていいのも楽で。
ANNA ご主人にミキさんの気持ちは伝わってるんですかね?
ミキ 伝わってるのかな……あ、でも、こないだ酔っ払って帰ってきた時に、「俺もバカじゃないからさ、わかってるよ、言いたいことあったら言ってよ」とか言い始めて、その時は笑って終わったけど、不満があるってことは伝わってるのかも。
離婚したくはないけれど……恋もない、尊敬もない
ANNA 生活費は、折半なんですよね。金銭的にはご主人がいらっしゃる方が楽ですか?
ミキ 1人より絶対楽ですね。同じ口座に同じ額を入れてそこから家賃とか光熱費とか、子供のお金とかを払ってて、残りのお金はそれぞれ好きに使います。娘もお父さんのことが大好きだし、家も買ったばかりでローンもあるので、離婚は考えてないです。
ANNA 恋心はもう消えちゃったんですね。
ミキ 太ったのもあると思う。衰えていくし。キラキラがなくなっていくと、あれ、この人性格悪くない?って……。
ANNA 言うつもりはまったくありませんが、もしも私が「一度、夜の生活を行ってみてください」と言ったら、できます?
ミキ え……? 想像できない。いや、やっぱり無理。無理無理無理。できません。
ANNA でも、ここからが人と人としてのスタートですよね。だって肉体的にはお互い衰える一方ですから。50、60歳になっていったら、あとはもう人間的な信頼とか、尊敬とかでつながるわけでしょう。
ミキ 尊敬はね、出来ていないかもしれない。私、男の人を尊敬で好きにならないし、自分にないところを持ってる人に惹かれるんです。私は感情の起伏がそんなにないんですけど、彼は喜怒哀楽が激しくて、そこがいいと思ってました。だけど、それが今は怒鳴るっていう悪い方に出ちゃってて。彼のあまり考えないで動くところも、自分と逆だからいいと思っていたのに、結婚生活になると「考えてから動けよ!」って思っちゃう。考えないから、自由になるお金は全部使っちゃうし、ルーズだし、クレジットカードが止まったりもして、またイラッと。
ANNA 結婚して何年も経てば恋心は薄れて当然ですけど、人間としての尊敬や信頼がないとちょっと厳しいですよね。でも共通の生活費はちゃんと出してくれているんですよね。
ミキ 出さない時もありました。1回、2回くらい。「はぁー、この人は将来のことを考えないんだ。不安じゃないんだ」って思っちゃって。お金の話になって、これにいくら使ってこうだから貯金全然ないよ、とか言っても、わかんないよ!って感じでキレちゃうんですよ。で、時間がたったら忘れちゃうし。
ANNA ご主人にとってはどうでもいいことなんでしょうね。お金は何に使っているんですか?
ミキ 多分食べてるんだと思う、太ってるのを見ると(笑)。ルーズなのは治らないとも思っていて。でも、怒鳴るのは許せない。怒鳴るのが一番嫌。冷めちゃうんです。すっごい嫌なのが、お店で、店員の態度とかにキレる。
ANNA え、外でも?
ミキ 外でも。レストランで「あっちの席よりも、こっちの方が先に頼んだだろ!」みたいな。大っ嫌い、そこは。軽蔑になる。
ANNA 尊敬どころではないですね。付き合ってる時からそれはあったんですよね。でも今は、冷めちゃう。顔が好きだったのに、今はデブのおじさんだから許せない。
ミキ そう、デブのおじさんだから(笑)。でも、やってかなきゃいけないから、どうしようって感じです。
「心の中のツッコミ」が増えるほど気持ちは冷める
ミキ ちょっと前まで、この人が死んでも泣けないな、と思ってて。この先好きになることはあるのかなぁ。感謝もないし、仲良くなりたい気持ちも特にないし、どうしたらいいのか、モヤ〜っとしています。今の我が家はシェアハウスみたいです。夫のことを見ないようにしてる。顔とかも、見てない。
ANNA 向こうもミキさんを見てないんですか?
ミキ 向こうはね、見てるかも。見られてるけど私は目をそらしてる。
ANNA 直視したくないということですか? 顔も中身も。
ミキ そうですね。見るとイライラしちゃうから、憎しみみたいになっちゃってて。
ANNA お聞きしてると、今のミキさんの状態って、真綿で首を絞められているようなモヤーッとした不快感とか苦しさが、ずっと続いてる感じですね。別れたくないけど、仲良くするつもりもない。
ミキ そうですね。
ANNA 「心の中のツッコミ」と私は呼んでいるんですが、ご主人に対して心の中だけでツッコんで本人に言えないことでいっぱいですよね。「あーあまた怒鳴ってるよ」とか「痩せろよ」とか。「心の中のツッコミ」が増えれば増えるほど、心の距離はどんどん離れていくんです。本当に仲のいいカップルとか夫婦って、「怒鳴んないでよ」とか「太ってるねー」とか思ったことを相手に言える、ツッコめるんですよ。言える間はすごく信頼があって仲がいいんです。
ミキ あー。なるほど。
ANNA でも、信頼がなくなってきて、どうせ言ったって怒るんだろうな、と思って「心の中のツッコミ」が増えてくると、気持ちがシラーッと冷めてくる。ミキさんもラブラブだった頃は、心の中のツッコミは少なかったはずですよ。
ミキ たしかに……そうでした。
「最低5回」……?こんな単純なことで夫は変わる
ANNA お伝えしたいのが、「人は変わる」ってことです。
ミキ はい。
ANNA 単純ですけど、人って何回も言えば結構変わるんですよ。ある専門家によると「大人は最低5回言わないと変わらない」と。子供は55回だそうです。つまり5回とか55回とか言わないうちに「この人は変わらない」って言うなってことだと思うんです。
ミキ へえー!(笑)
ANNA 私自身、夫に10年以上前から「出したものをしまえ」「電車の中で足を組むな」って何度も言われていて、10年経った今、全部なおっています。
ミキ あ、ANNAさんが言われる側なんですか。(笑)
ANNA 「なおさなきゃ!」って意識したわけじゃなくて、気がついたらなおってました。言われたその場でなおすと言いなりになっているみたいで悔しいから、シカトしたり不機嫌そうにしてるんですよ(笑)。だけど一人のときはちゃんと気をつけたりする。何回も言うってすごく単純ですけど、ポタポタと落ちる水滴がいつか岩に穴を開けるみたいに、言い続けてると人は変わる。
ミキ どのくらいのスパンで言ったらいいものなんですか? 言うとキレたりするんで。
ANNA その場合はスパンよりも、まず言い方が大事です。「片付けてって何回言えばわかるの!」とか「怒鳴るのやめてよ、バカじゃないの」とかの感情的とか批判的、軽蔑したような言い方だとケンカになります。別に明るくしたり機嫌をとる必要もなくて、淡々と「これ出したんだね。じゃあ、しまっておいてもらえる?」とか「もっと静かに話してくれると嬉しい」という落ち着いた言い方をするといいです。
ミキ あー、私はかなり嫌味っぽく言っちゃってますね。
ANNA 人って「変わらなくていいよ」という思いを感じたときに変わるんです。「お前はダメだから変われ!」と自分を否定するメッセージを感じると、変わったら自分が消えてしまいそうな恐れを感じる。すると無意識に自分を保とうとして、「変わるもんか」と意固地になってしまうんです。
ミキ 逆効果なんですね。
ANNA 言い方さえ気をつけていれば、あとは自分が言った回数だけカウントするつもりで淡々と言い続ければいい。サブリミナル効果みたいに、じわじわ効いてきます。
ミキ 掃除とかは、ちょっとずつ言うのは効果あると思うんですけど、怒鳴るのは……。こないだ子供にも声を荒げてて、すごい嫌だった。「最低!」と思ってしまいます。もうほんと嫌。
ANNA 怒鳴るのも、何度も言えば効果があると思いますよ。掃除に比べると、硬い岩でなかなか穴が開かないというだけで、無視していてもキレていても、ちゃんと聞こえていますから。
ミキ なるほど。心がけてみます。
ANNA さて……ととのいました。いよいよ本質的な解決法をお伝えします。
ミキ はい(笑)。
愛情を持てなくなってしまった夫を変えるには、淡々と繰り返し言い続ければいいことがわかりました。ミキさんがどのようにして夫との関係を改善するべきか、ANNAさんがお教えする意外な方法とは…!?
後編は、3月10日(金)です。お楽しみに!
~本日のひとこと~
恋愛と結婚は別、という言葉の見本のようなご相談ですね。相手を好きになった要因にトキメキが占める割合が大きい場合、外見や状況の変化によって気持ちが揺らいでしまいがちです。一生にわたる関係を続けるには、人間同士としての関係を一から築いていく覚悟と意志が必要でしょう。ミキさんはまだ、今のままではよくない、変えられるものなら変えたい、という意識があるので大丈夫。手を打てます。
私も結婚しているので、いろいろ考えながら聞きました。恋が終わった後の関係を、どうするか…そっちの方が長いんだよなあ。多くの既婚者の方の参考になる相談内容なのでは、と思います。
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