夏の台所仕事
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美味しいもの、美味しいお店、旅やお買いもの。
食いしん坊のファッションライター・arikoさんが紹介する
暮らしを楽しくするヒント。
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夏の台所仕事
日が暮れるのが遅くなって、夕方6時を過ぎてもまだ明るいこれからの季節、茜色に染まった夕暮れの空を眺めながら台所に立って、蛇口から流れ出る水でじゃぶじゃぶと野菜を洗っているとなんだか幸せな気持ちになります。
今月は夏ならではの台所仕事のお話しをしてみたいと思います。
夏といえば野菜が美味しい季節。ぱりぱりとした歯触りの胡瓜、ぷちっと弾ける枝豆やとうもろこし、どう料理しても美味しい茄子やトマトに、茗荷や大葉、新生姜などの食欲をかき立てる香味野菜の数々。
この季節になると常に冷蔵庫に常備しているのが五味薬味です。
雑誌の連載でご一緒しているモデルの松本孝美さんから教えていただいたもので、その名前の通り、青ねぎ、大葉、茗荷、生姜、かいわれの五種類の香味野菜をそれぞれ細かく刻んでひとつかみずつボウルにたっぷりと。
さっと水にくぐらせてザルで水気を切ってから密閉容器に入れて冷蔵庫で4~5日は保存できます。
そうめんや蕎麦、うどんなどの冷たい麺や冷や奴の薬味にするのはもちろん、この季節ならではのカツオのたたきにたっぷりのせたり、釜揚げしらすや桜エビと合わせればおつまみにぴったりなおつな一品に。大根おろしと一緒にポン酢に加えれば、豚しゃぶや焼いた肉類がさっぱりと夏仕様に。フライものには刻みキャベツに合わせれば目にも涼しげで食感も心地よい。
とにかく何にでも合うので出番のない日がないくらい。一度頑張って用意しておけば面倒な刻み作業が少なくなるので気軽に薬味を楽しめてとても便利です。
冷蔵庫に用意しておくものとしてもうひと品。こちらは胡瓜、セロリ、茗荷、湯むきしたミニトマトをジップロックなどの密閉できるビニール袋に入れて、茅乃舎の和風ピクルスの素を注いで冷蔵庫に2~3時間冷やして作る浅漬け風のピクルス。
パリパリとした歯触り楽しく、お出汁がきいていて酸味もほどよいので、サラダ代わりにたっぷりと食べられる。
仕事が遅くなって何もできていない時、小鉢に盛ればとりあえずの一品に。辛いカレーに添えても夏ならではの味わいを楽しめる。
このピクルスの素はこれからの季節には多めに買っておいて、茅乃舎の野菜だしと一緒に友達へのちょっとした手土産にしても喜ばれます。
夏の台所仕事として外せないのがぬか漬け。実家では母が丹精して世話していたぬか床があって、それこそ夏場はほどよく漬かった胡瓜や茄子、古漬けになってちょっと酸っぱくなったものを刻んで生姜と合わせた「かくや」など、せっせとぬか漬けを楽しんだものです。
手入れの面倒くささや匂いなどが気になって、母が亡くなってからは食べたいと思いながらもなかなか実行に移せなかったぬか漬けを始める気になったのは、野田琺瑯で出しているぬか漬け美人というぬか漬け用の琺瑯の容器を見つけたから。
その名前の通りの清潔感のあるまっ白な琺瑯と冷蔵庫にもぴったりと収まる細長のスマートなフォルムにまずひと目ぼれ。密閉できるプラスティックの蓋が付いているのも購入する決め手でした。
いちからぬか床を作るのは面倒なので、すぐに漬けられる市販のぬか床を用意してそこに昆布や鷹の爪、粉辛子などを加えて準備はOK。しばらくは旨みが出ないのでビールなども加えて…。
捨て漬けを数回繰り返して、いよいよ本漬け開始。胡瓜や茄子、かぶなどに塩をまぶしてぬか床に埋める。
冷蔵庫の外に出しておくと朝漬ければ夜には美味しいぬか漬けが出来上がっているという具合。それからは美味しいぬか漬けを食べるためにとぬか床の世話をするのが楽しくて仕方がなくなったから現金なものだ。
シャキッとした歯ごたえを残しながらほどよく漬かったぬか漬けの美味しさは暑い時期にこその醍醐味。定番の胡瓜や茄子、かぶなどに加えてセロリやにんじんなども美味しい。
キャベツや胡瓜などを古漬けにして酸味を出し、刻んで生姜のみじん切りを合わせた「かくや」は息子の大好物。これがあれば白いごはんが何杯もいけると帰省を楽しみにしていた。冷蔵庫に入れておけば数日留守にしていても無事でいてくれる。
母の作っていたものにはまだまだ程遠いけれど夏の風物詩ともいえる手作りの味、母を懐かしみながら楽しんでいます。