南インドカレーに目覚める

南インドカレーに目覚める


齢50にして突然目覚めたものがある。それはカレー。
カレーといえば家で作る市販のルーを使った具材をトロトロに煮込んだ家カレーがほとんどで、たまに食べていた濃厚なバターチキンやほうれん草とカッテージチーズのサグパニールをナンにつけて食べるインドカレーは美味しいけれど、一度食べるとしばらくはいいかなと思う程度で正直、あまり関心がなかった。それがこの夏体験した南インド料理によってイメージがガラッと変わってしまった。

きっかけは食いしん坊仲間のひとりが連れていってくれた千歳船橋にあるカルパシというインド、ネパール、スリランカなどの国々のカレーを食べさせてくれるお店のバナナリーフミールスを食べたことだった。

青々としたバナナの葉をお皿にして、何種類ものカレーやサンバルやラッサムという辛みと酸味が効いたスープやチャツネ、ヨーグルト、魚の揚げものなどが湯取りで炊いたバスマティライスとともに盛りつけられたミールスは南インド式の定食スタイル。毎日食べるものではなくかの地でも特別な日にだけ食べられる料理なのだそう。

清浄とされるバナナの葉の上のすべてのものを少しずつ混ぜ合わせて自分流に食べるのがなんとも楽しくて美味しい。辛み、酸味、甘味、旨み、スパイスのほのかな苦み…etc. 口に入れるごとに五感が刺激されるのがわかる。食べ進んでいくうちにスパイスの効果のせいか汗が噴き出してくる。
食後はまるでサウナに入ったかのような爽快感。さらりと食べられるのに完食したあとはお腹がいっぱい。もうこれ以上食べられないまさに腹パン状態に。それなのに二時間もすればなぜかすっきりもう食べたくなっているから不思議で仕方がない。そしてなぜか元気になっていることにも驚かされた。

日本人にもかかわらず、この店のご主人が作るカレーの数々はスパイスを巧みに駆使して作り上げる逸品ぞろい。予約が取れないことで知られる名店であるのはその後に知ったことだった。

衝撃の出会いにより、急に目覚めたものだから、それからがさあ大変。ミールスが食べたくて仕方がないのだ。アラフィフの覚醒は始末に負えない。
渋谷で撮影ランチとなればdancyuで見つけたエリックサウスマサラダイナーに押しかけ、フィッシュカレーのミールスを食べて大満足。

カレー上級者に連れていってもらったのは虎ノ門にあるナンディニという南インド料理店で不定期に開催されているバナナリーフミールスの会。
その日は三部制にするほどの大人気のイベントで、夜の九時半からの最後の部になんとか潜り込んだ。南インド出身のシェフたちが入れ替わり立ち替わり、スープ状のもの、炒めもの、揚げものなどの数種類のスパイス料理、湯炊きしたインド米などを手に手にまわって来ては、テーブルにセットされたバナナの葉の上にどんどん配っていく。

さあ食べましょとまわりを見回せば、本格的に指で混ぜ合わせながら食べているツワモノばかりではないか。しかもほとんどが日本人なのだ。
すごい! カレーを指で食べるシーンをまさかこの日本で見ることになるとは…。テーブルにはアイスに付いているような簡略スプーンとフォークが付いていることは付いているのだが…。
一緒に行った上級者は果敢にも指を使って混ぜ合わせたミールスを口に運びながら、なんだか自分のなかの何かが変わったと言いだす始末。さすがにカレー初心者の私は日和ってしまい指を使う勇気は出なかったのだが。もう少ししたら勇気が出るかもしれない。

こうしてカレー熱が高まっている頃、定期的に通っている小堀紀代美先生の料理教室でもタイミングよく、ルーを使わないで作る本格的なカレーのレッスンが開催された。油で数種類のスパイスを炒めて香り高く仕上げるチキンカレーと豆のカレーの二種にスパイスオイルを混ぜ込んだヨーグルトやフルーツの入ったサラダ。インド米の湯炊きの仕方も教えてもらった。


お皿に盛り合わせたものすべてを混ぜれば混ぜるほど、複雑に味わいが増していく。自宅でもこれまでとは違う本格的なカレーを食べられるようになるなんてうれし過ぎると心の中でガッツポーズしてしまった。

帰り道にふと立ち寄った代官山蔦谷書店で開催されていたカレーフェアで見つけた小さなカレー入れが並ぶインド式のシルバーのプレートセットを買おうかどうか真剣に悩んでいる。

*次回は10月8日(月)更新予定です。

 

『arikoの食卓』

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Written by ariko
ariko

CLASSY.、VERY、HERSなどの表紙やファッションページを担当する編集ライター。日々の食卓をポストしているInstagramが、センスあふれる美味しそうな写真と食いしん坊の心を掴む料理で話題に。現在、フォロワー数は98000人を突破。Instagram@ariko418

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