【前編】一大ブームを巻き起こしている“ナゾトキ”の仕掛け人、松丸亮吾さんにインタビュー!


撮影/矢野寿明 
文/明道聡子

 

東京大学謎解き制作集団AnotherVisionの代表として団体を急成長させ、イベント、テレビ、書籍など、様々な分野で一大ブームを巻き起こしている“ナゾトキ”の仕掛け人、松丸亮吾さん。
そんな松丸さんが、今回、初の単独著書となる『東大 松丸式 数字ナゾトキ』を出版。
問題作りのこだわり、ナゾトキへの熱い想いからオフのときの過ごし方まで、伺いました!

今回、数字に特化した『数字ナゾトキ』を出すことにしたのはなぜでしょうか?

サイン会とかイベントに遊びに来てくれるお子さんから「ナゾトキをやってみて、勉強しようと思えました」という話を聞くことがあって、ナゾトキが勉強の入口になるんじゃないかと思ったんです。つまり、ナゾトキをするためには、そこに載っている漢字とか、ある程度の常識や知識が備わっていないといけないですよね。中には、漢字辞典を持ちながらナゾトキの番組を見ているという子もいるみたいで、ナゾトキで遊びたい、もっとやりたい、だから勉強しなきゃいけないというのも、きっかけとしてはいいなと思ったんです。

初の単独著書をどんな本にしようかという話の中で、今、けっこう数字嫌いな子とか、算数・数学に抵抗がある子がいるので、そういう子に向けて「数字ってこわいものじゃないよ」「算数ってもっとおもしろいんだよ」というのをナゾトキを通して伝えられたらと思いました。

幼い頃から算数が得意だったそうですが、いつ頃から勉強を始めたのでしょうか?

僕は4人兄弟の一番下なのですが、兄たちが家で計算カードというものをやっていたんです。表に「1+3」みたいな計算式が、裏に答えが書いてあったのですが、「僕もやりたい!」とやっていく中で、自然と足し算、引き算、掛け算、割り算ができるようになりました。それが4歳の頃だったと思います。兄たちに負けたくないというのが僕の勉強への入口でした。

もともと好きなことはとことんやるタイプだったので、そこから算数や数学に対して抵抗がなくなっていったように思います。

「数字の問題を作る」のも以前から取り組んでいたと伺ったのですが、いつ頃から始めたのですか?

問題を作るのは小学校3年生がスタートでした。算数が本当に好きだったので、小学校1、2年生のときに、その先で習うことも自分でやってしまっていて、こういう反復練習みたいな問題じゃなくてもっとおもしろいことができないかなと考えたんです。

例えば、教科書に載っている問題って、縦×横で面積が出ますっていうやり方に従えば解けるような問題ばかりじゃないですか。じゃあ、縦×横だけじゃうまくいかないようなトリッキーな問題を作れないかなというところから考え始めました。

(松丸さんが小学校3年生のときに作った問題。答えは後編で!)

これが小学校3年生のときに作った問題です。問題自体はすごくシンプルなんですがなかなか難しいと思います。
ヒントは「図形を切って、面積を求めやすい形に変える必要がある」ということです。

問題を作ると、必ず親とか兄たちに出して、解けなかったら「よし!」と喜んでいました。ここでも負けず嫌いがモチベーションになっていたと思います(笑)。

『数字ナゾトキ』の問題、やはり算数・数学が苦手な人には難しいのでしょうか?

本の中でも言っていることですが、大事なのは解けるかどうかではないんです。解こうとして考えたということと、あとは答えを見て「そういうことか」とか「もう少し考えたらいけたかも」と納得することがすごく大切なんです。
算数や数学が苦手な人は確かに苦戦すると思うんですけど、でも決して投げ出さずに1問1問じっくり考えながら、ページを進めていってもらえたらなと思います。

この本は「想像力」「多角的思考力」「発想力」「試行錯誤力」「説明力」と章分けされていますが、このように分けた意図はなんでしょうか?

これらは、数学的な思考力であるとともに、社会に出るすべての人に役立つ力なんです。
例えば「発想力」があれば、「オリジナリティーの高い商品・アイデアを生み出すことが可能で、市場の競争を避けることができる」「トラブルが起きても、別のやり方を柔軟に考えてトラブルに対処できる」など、将来のビジネスでも日常生活でもさまざまなシーンで生かすことができます。

今回、制作で大変だったことはなんですか?

納期ですね(笑)。
これは完全に僕の性格のせいなんですが、こだわりすぎてしまって……。

ナゾトキの問題って、一生に1回しか解けないんですよ。例えば、微妙な状態の問題を解いてしまったら、あとでその問題がアップグレードされてより良問になっても、答えを知ってしまっているので、改めて解くことはできないんです。だから、問題を出すという行為はけっこう責任が大きくて、僕は絶対に妥協しないと決めているんです。作るんだったら、最大限おもしろく、最大限凝ったものにして出したいなという気持ちがあります。
だから、今回大変だったのは、締め切りというものに「僕のこだわり」を間に合わせることでした。

制作で楽しかったことはなんですか?

これは大変だったことの反対で、こだわり抜けたことです。
今回、例題もいれて30問。全部新作の問題を作ったんですけど、本当に1問も手を抜いていないです。納得度、爽快感、とっつきやすさなどいろいろな面からおもしろくするために最大限の努力をしました。

特に思い入れがあるのは多角的思考力を問う「08」の問題ですね。ネタバレになっちゃうので簡単に言うと、実は、これらの数字の組み合わせしか、同じことをできる数字が存在しないんですよ。こういう法則が成り立つ数字ってないかな、と全通り書き出して分析していって…… たまたま1つの組み合わせだけ、奇跡的に存在していたんです。丸1日かけて見つけたとき、家で飛び跳ねて喜んじゃいました。
こういう計算って、僕ら制作者が決めるものじゃなくて、元から世の中にあったルールから、こういうものがありましたと見つける作業なんですよね。それが見つかった瞬間でした。すごく思い入れのある問題なので本の帯にも入れてあります!

 

松丸さんのオフのときの過ごし方、今後の活動については後編へ!

 

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松丸 亮吾:著

 

松丸亮吾
東京大学に入学後、謎解き制作集団AnotherVisionの代表として団体を急成長させ、イベント・放送・ゲーム・書籍・教育など、様々な分野で一大ブームを巻き起こしている“謎解き”の仕掛け人。AnotherVisionとしての著書『東大ナゾトレ』は、シリーズ累計100万部に迫る勢い(2018年9月時点)。現在ではクリエイターとしての個人活動も活発になり、その発想力を活かして謎解きのみならずドラマの脚本・トリック監修にも携わる。

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