【INTERVIEW】映画『地獄少女』に出演する楽駆。人気作のキャラクターを演じるその心境は。

【INTERVIEW】映画『地獄少女』に出演する楽駆。人気作のキャラクターを演じるその心境は。


11月15日公開の映画『地獄少女』では、地獄少女・閻魔あい(玉城ティナ)に付き従う“三藁”と呼ばれる妖怪のひとり・一目連を演じる楽駆(らいく)。刀の化身とされ、鋭い視線が印象的なキャラクターだ。11月1日に公開される映画『最初の晩餐』など話題の最新作にも出演し、着実に俳優としてのキャリアを積み上げる彼に、初の実写化作品への挑戦となった本作の魅力、そして俳優業への熱い想いを語ってもらった。

撮影/浦田大作 文/竹下詩織


――『地獄少女』拝見しました。オーディションで見事役を勝ち取ったそうですが、今回出演が決まった率直な感想は?

素直に凄く嬉しかったですし、光栄な事だと思いました。でも原作もとても人気のある作品なので、同時に凄くプレッシャーもありました。

――原作はもともとご存じだったんですか?

はい。高校生のころに読んでいて、凄く面白いなと。一話完結なんですが、大まかなストーリーは繋がっているんです。怖いという中にもちょっとギャグ的な要素が含まれていて、法では裁けない人たちを裁いてくれる、そんな爽快感があります。

――今回演じる上で原作に近づけたのか、それとも実写でしかできない表現も取り入れたのですか?

もちろん原作のイメージは大切にしつつ、でもあまり意識し過ぎないでやりました。脚本を読んだ時に、あまり原作通りにするとギャグっぽくなると思ったんです。衣装合わせで監督と会った時に、監督も原作を意識しないでほしいと仰って下さって、そこの意見が一緒で安心しましたね。その分、刀を使うキャラだから一番に「鋭さ」というものを大事にしてほしい、と。あとは表情とか動きで見せるのが多かったので、そこで空気が締まるような、そういう映像にできたらいいなと思って演じました。

――その表情や動きの部分で監督から何かアドバイスはありましたか?

白石監督はほしい画というものがはっきりされている方なのでその点では凄くやりやすかったです。ただ、そんなに多くは細かい演出というものを受けていないかもしれないです。

――今回妖怪という特殊な役を演じるにあたり、なにか他にも参考にされたことは?

他の何かを見て、とかはなく、とにかく一目連を調べたり、あとはずっとアニメを観たり。どういう役なのか、どういう過去があったのかを見ていきましたね。ある種感情がない役なので、自分自身もだんだん食欲とかそういう欲求がなくなっていきました(笑)。



――役に関しては毎回そうやって作りこんでいくんですか?

まずその人の人生を考えるというか、どうやって生きてどうやって死ぬのか。あとはどういう性格なのかをまず脚本などを読んで考えて、そこから初めて声に出して読んで、「あ、違うな」とか、「これしっくりきたな」とか。自分なりに役を考えてつくった上で声に出すという流れです。

――今回劇中では一目連の背景が描かれない分、難しいところもあったのでは?

難しかったです。映像で見せるところだけで表現しなきゃいけなかったので。

――特殊メイクはどうでしたか?衣裳やメイクで役へのスイッチが入るという役者さんもいますが。

それはあったと思います。僕はメイク1時間くらいだったんですけど、特に麿さんとかは凄く時間がかかっていましたね。特殊メイクをすると、何もしなくてもそう見えるじゃないですか。だからスイッチは入れなくても勝手に入っちゃう。衣裳も普段絶対着ないような着物でしたし。

――その再現度の高さも話題になっていますね。

玉城さんの閻魔あいは凄かったです。栃木ロケの時、僕がたまたま1日空いていたので撮影現場にお邪魔したんですが、「わー、閻魔あいだー!」って言いながら見ていました(笑)。

――その時、他の方の撮影を見て何か感じたことは?

素直に「いいな」と思う部分もありました。作品の中で僕は誰かとやり取りっていうのがあまりないんです。だからそこのやり取りがあるのを見ると、“あー人間いいなあ(笑)”って思う部分はありましたね。誰かと会話したいなあ、とか(笑)。

――では、自分なりに撮影の現場でなにか気を付けたことや、監督に提案したことはありましたか?

ひとつだけあります。森七菜さん達がオーディションで歌を歌うシーンがあるんですけど、僕達三藁は歌わないんですよ。でも実は本番前に三藁もみんな歌っていて、カットされてるんです。そのシーンの撮影が始まる前に、僕は監督に「2パターンもってきました」と提案して、そのうちのひとつを実際歌わせてもらったんですけど、「監督どうでしたか?」って聞いたら「いや、アフレコで」って言われて(笑)。駄目だったんだ、と…(笑)。それは、そこで僕達三藁が歌ってるのを見せるとギャグっぽくなり過ぎるから、という理由でした。

――共演者の方もそれぞれ個性的なキャラクターですが、一緒に演じた感想は?

凄く光栄な事でしたし、三藁の3人でいる事が多かったので、純粋に楽しかったです。麿さんは、「最近どうなの?」と気にかけてくださったり、帰りも一緒だったりしたのでずっと話してました。橋本さんはお姉ちゃんみたいで、なんでも答えてくれるので凄く話しやすい方だなあって。だからついつい喋りすぎちゃって(笑)。魅力的な方でした。

――作中の三藁とはまた違い、裏側では和気あいあいとしていらっしゃったんですね。

そうですね。あと波岡さん! 凄く面白い方で、ご一緒するシーンはあまりなかったんですが、控室ではずっと橋本さんと波岡さんと3人で話してました。あと森七菜さんとは映画『最初の晩餐』でも一緒だったのでもともと仲がよく、同じ大分県出身というのもあってめちゃくちゃ話します。仁村紗和さんともたくさん話しましたね。玉城さんは、そんな多くは喋っていないんですが、居心地のいい方だなって思いました。

――玉城さんは主演としての風格も感じられたのでは?

本人は人見知りだと仰ってましたけど、ただ単に凄く周りに気を遣っているだけで、本当はとても優しい方なんだろうなと思いました。常に周りを見て動かれていて、素敵な方でしたね。

――それだけ同世代の方が多い現場だと、刺激にもなりますか?

なりましたね。もっと頑張らなきゃ、というのもありますし、先輩方を見て学ぶ事と、同世代の方とでは違った刺激があります。同世代を見るとより奮い立たされます。

――そういった撮影を経て、実際自分で完成したものを見た感想はいかがでしたか?

純粋に映画として面白かったです! ホラーというホラーでもないというか、人間ドラマに近いですね。あとは僕達が支えるだけだと思いました。エピソードが十分あるのでホラーが嫌いな人でも楽しめると思いますし、是非観て頂きたいです。

――今回の作品を観て客観的に感じた自分への課題や、逆にもっとこんなことがしたい! と思ったことはありますか?

もっと見せ方を工夫したいなと思いました。今回音響などに助けられている部分が多かったので。細かい部分の見せ方や、カメラにどういう風に映ったらよく見えるのかという部分はこの作品を通してもっと考えないといけないと感じました。今までがむしゃらにやってきただけという感じがあって、それも大事なんですが、もっとカメラのある場所を意識したり、立ち振る舞いなど見せ方を考えなきゃいけないと思いました。

――では、楽駆さんご自身のこともお伺いしたいと思います。俳優になろうと思ったきっかけはなんでしたか? 事務所のワークショップを受けたそうですが、そこに至るまでの経緯をお聞きしたいです。

僕が中学3年の時に、塩屋俊さんという大分県出身の監督がいて、僕の父親と知り合いだったんです。その方が大分で1日だけワークショップをやるから来てよ、と誘って下さって。それが凄く楽しくかったんです。もともと俳優には興味があったのですが、高校3年まではサッカーをするって決めていたので、高校卒業と同時に上京して、色々受けましたね。ちょうど今の事務所がオーディションをやっていたんですが、それを知ったのが締切の3日前で(笑)。ぎりぎり応募して、そしたら書類が通ってオーディションを受けて、拾ってもらったという感じです。受かった時は飛び上がるくらい嬉しかったですよ。やっとスタートラインに立てたと思いました。

――では、俳優業をやる前と今で、この仕事の印象は変わりましたか?今現在、お芝居をする楽しさはどんなところに感じていますか?

役に入り込んでスーってなる時とか、周りが何も見えなくなる時があって、そういう時は楽しいです。逆に俯瞰して見ちゃう時とか、どんなにやっても答えにたどり着かない時もあります。でもやっていて今は凄く楽しいですし、僕ずっと普段DVDのメイキングとかも観ていた人なので、現場ってたくさん周りに人がいるじゃないですか。初めてそれを目の当たりにした時は、凄いなあって思いましたね。こういう風に出来ていくんだって、その過程が見られるのが楽しいです。

――楽駆さんは自分と似てる役か、まったく違う役か、今後やりたいと思うのはどちらですか?

似てない役をやりたいですね。自分は比較的暗い性格ではないと思っていて、もちろん暗い部分もありますけど、明るい方だと思います。なので今は暗い役というか、自分とかけ離れた役に挑戦したいです。

――具体的にはどんな役がやりたい?

例えば『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』というドラマの、高良健吾さんが演じていた練くんみたいな、本当にどうしようもなくて、でも心が優しくて、ああいう役をやりたいです。心が締め付けられるじゃないですか。僕、坂元裕二さんの作品が大好きなんです。この作品も大好きで、今でもサウンドトラックとか聴いてます。

――映像だけでなく、舞台など活躍するフィールドに関してはいかがですか。

舞台もやりたいです。以前出演した『女の機嫌の直し方』では、周りに舞台を経験されている方が多くて。話を聞くと、いつかはやってみたいなって思いました。絶対成長できると思うんです。でも今はとにかく顔や名前をたくさんの方に知ってもらいたいですね。いつかは絶対、舞台にも挑戦してみたいと思います。

――今後、役者としての目標や、10年後こうなっていたい、という野望があればお聞かせください。

日本アカデミー賞 新人俳優賞を獲りたいです! あとは、しっかり人に伝えられる役者になりたいです。演技が上手くても伝えられない部分ってあると思うんです。しっかりと誰かのために生きて、誰かのために役者をやれたらいいなって思います。

――最後に、こうしたインタビューなどで作品のこと、自分のことを自分の言葉で話す機会はいかがですか?

得意ではないですが、作品の事を話すのは凄く嬉しいですね。あまりこうやって口に出す機会がないので。取材をして頂けるのは嬉しいですし、もっとして頂けるように頑張ります!


  ●プロフィール
楽駆(らいく)
1996年11月30日生まれ、大分県出身。2017年、所属事務所のワークショップオーディションにて、応募者数500人以上の中より選ばれ所属、俳優デビュー。19年出演作にドラマ・映画『女の機嫌の直し方』、ドラマ『W県警の悲劇』#5など。今後『最初の晩餐』(11月1日公開)など出演映画の公開も控える。


  ●作品紹介

(C)地獄少女プロジェクト/2019映画『地獄少女』製作委員会

『地獄少女』
監督・脚本:白石晃士
出演:玉城ティナ、橋本マナミ、楽駆、麿赤兒、森七菜、仁村紗和、大場美奈(SKE48)、森優作、片岡礼子、成田瑛基 / 藤田富、波岡一喜
原案:わたなべひろし
原作:地獄少女プロジェクト
配給:ギャガ

「ねえ、知ってる? 夜中0時にだけ開くサイトで依頼すると、地獄少女が現れて、怨みを晴らしてくれるんだって―」都市伝説の話題に沸く女子高生、そのグループになじめず、浮かない表情を浮かべるのは、市川美保(森七菜)。大好きなアーティスト、魔鬼(藤田富)のライブで知り合った南條遥(仁村紗和)に魅了された美保は、遥とともに魔鬼ライブのコーラスのオーディションを受けることに。受かったのは遥。やがて少しずつ様子がおかしくなっていく遥を心配した美保は、魔鬼が、遥をライブで行う<儀式>の生贄にしようとしていることを知り、噂のサイトにアクセスする―。

11月15日(金)より全国ロードショー
https://gaga.ne.jp/jigokushoujo-movie/