【INTERVIEW】「天才てれびくん」舞台版で主演を務める前田公輝。てれび戦士時代を振り返り、現在の心境を語る。
『HiGH&LOW』シリーズの轟洋介役で圧倒的存在感を焼き付け、その好演が記憶に新しい前田公輝。2020年も映画・ドラマの出演が続き、目が離せない。そのスタートを切るのが自身4年ぶりとなる舞台、『天才てれびくん the STAGE ~てれび戦士 REBORN~』だ。“前田公輝の原点”と自身も語る「天才てれびくん」への想いと、主演としての心意気を語る姿に、てれび戦士として活躍していた当時の“前田公輝”がよぎる。
撮影/浦田大作 スタイリスト/高山良昭 ヘアメイク/梶原幸(BELLEZZE) 文/竹下詩織
――今回の舞台化を聞いた時、またオファーを受けた時の率直な感想は?
15年ぶりにてれび戦士の“前田公輝”に戻れるんだっていう嬉しい気持ちがありました。今までずっと色んな役をやらせて頂いてきた中で、今回「天才てれびくん」というステージで自分の役をやらせて頂くのは、本当に嬉しすぎて、当初はこの話流れるんじゃないかなって不安になるくらい (笑)。“まだ確定してないよ”と自分に言い聞かせていましたね。
――このタイミングでの舞台化に、どんな意味を感じていますか?
てれび戦士だったころは夏と冬にイベントがあって、そこでお芝居をする事はありました。天てれを離れてからは、過去に1年半くらいずっと舞台に出させて頂いていた時期があったんですが、今は映像に出させて頂く機会が多くて。でもやっぱり舞台もやりたいな、刺激のある舞台に出させて頂きたいな、と思っていた時だったので、最高に嬉しいタイミングでした。「天才てれびくん」って、卒業してからもずーっと色んな現場やプライベートでも「出てたよね」と言われる番組なんです。それくらい影響力のある番組だったので、自分の中で忘れた事は一回もなかったですし、少しでも恩返しが出来ればと思ってます。
――やはり天てれは自分の原点。
原点ですね。…かといって昔の映像を見ると、顔を覆いたくなる程恥ずかしいし、調子乗ってたなって思うんですけど(笑)。
――今は映像はじめ色んな作品で役者として活躍していらっしゃいますが、今回の舞台では「てれび戦士の前田公輝」に“戻る”という感覚なのか、“演じる”という感覚なのか、どういった感覚ですか?
半々くらいです。役名が“前田公輝”であっても、本当の僕ではないので。僕自身がずっとてれび戦士として、敵であるテレゾンビと戦っていた訳ではないし、悪というものを倒そうと生きていた訳ではない。ただ、てれび戦士として出ていたころの感覚に戻すっていうのはありますね。
――とはいえ、当時は素のままテレビに映っていらっしゃったんですよね(笑)?
もちろんです、もちろんです(笑)。演じてないです、全く。ただ、求められている事はやりたいという気持ちはあったと思います。子供ながらに、この立ち位置だとこういう事を求められているのかな、と考えてやっていた気がします。皆さんに少しでも楽しんでもらえたらいいなっていう感覚は今も一緒ですね。
――てれび戦士が歴代たくさんいる中で、自分が主演をやるという事に対しての気持ちはいかがですか?
今回の舞台に出ていないてれび戦士達の気持ちも背負って、みんなが納得出来るような舞台に出来たらいいなと思っています。僕自身が舞台をしばらく離れていたので、共演者には舞台をずっとやられている方もいらっしゃいますし、そういった方達からもお話を伺っていきたいですね。それこそ、 “大人になった「てれび戦士」と舞台版新キャストが集結して大切なものを守る戦いに挑む”とありますが、本当にみんな色々な人生を経ているので、色んなパワーをもらわないと戦えないと思います。稽古場でも、皆さんから少しずつパワーを頂けたらと思いますね。
――やはり久しぶりの舞台は緊張しますか。
緊張は意外としなさそう…立ってみないとわからないですが(笑)。「天才てれびくん」という看板があるだけで、どこか安心感があるというか、この名前だけで、すべてが包まれるんですよね。てれび戦士だったらみんなわかると思うんですけど、なんていうんだろう…実家の住所くらい(笑)。地名とか、○○中学校とか、小学校とか…あ、出身! でもそこではないもっと具体的な…。ホームっていう言葉が近いんですかね、僕の。たぶんてれび戦士みんなのホームなんですよ、「天才てれびくん」って。自分を象徴するような場所なので、緊張もないのかなあって。ただアクションとか歌とかダンスとか、稽古をするうちに課題にぶつかったら緊張してくるかもしれないです。でも僕ひとりだけでやるお芝居じゃないので、みんなで力を合わせて一緒にやれたらいいなと、とってもワクワクしていますね。
――脚本はもう読まれたんですか?
読みました。敵対するテレゾンビっていう存在は、僕がてれび戦士のころ(2003年~2006年)よりもっと前、番組が始まった時の設定にあったんですって。そのテレゾンビを倒すという話だったので、「天才てれびくん」のすべての歴史が詰まった舞台だと思いました。あと、てれび戦士に戻れる喜びってこんなに幸せな事なんだと改めて思いましたね。自分のルーツに戻るって、こんなに幸せなんだと。
――舞台までには具体的にどんな準備を?
僕、剣を持つんですよ。1回だけ舞台で白虎隊をやった事があって、それ以来約10年ぶりに剣のアクションをやるので少し不安ですが、好きなアクションチームがあるので、そこのレッスンに通いつつ…。あと僕、早乙女太一と凄く仲がよくて。だから太一にも教えてもらおうかなと思ってます(笑)。
――以前『HiGH&LOW THE WORST』のインタビューで「アクションが好きになった」と答えていましたが、今回の舞台でも発揮されるのでしょうか。
先日ビジュアル撮影で剣を持った時に、凄くテンションが上がった自分がいました。少年の心を忘れていなかった。やっぱり剣を持つのが好きなんでしょうね、男子は(笑)。
――今回共演者に、ド・ランクザン望さん、飯田里穂さんと、当時同じ時期にてれび戦士として活躍されていた方達がいます。卒業してからも会う機会はあったんですか?
会っています! 本当、幼馴染と同じような感覚だと思いますね。特に里穂の存在はめちゃめちゃ大きくて、唯一の異性の友達かもしれないです。声の出演ですが、声だけでも僕は安心すると思いますね(笑)。
――一方、長江さんや鎮西さんとは初めての共演ですか?
時期は被ってないんですが、ふたりが現役の時にOBとして夏のイベントに出させてもらって共演しています。あとSNSとかで活動は見てますね。崚行に関しては、舞台を多く経験していて僕よりも見せることに対して長けてると思うので、その辺は教えてもらいたいなと思っています。
――実は私もリアルタイムで楽しんでいた視聴者のひとりです。同じように当時楽しんで見ていた、大人になった方達に今回の舞台はどう映ると思いますか。
昔の記憶って、思い出としてどんどん美化されていくと思うんです。それを超えるものを出さないと、観て下さった方は、“あ、天才てれびくんだ!”という感覚にはならないような気がしていて。それを超えられるように、汗水かいて、スキルを磨いて、当時の僕に戻すというよりは、僕の役者人生で色々培ってきたものをプラスアルファして相乗効果になればいいなと。もちろん、楽しみにして頂いて大丈夫ですよ! なんとなく自信があるんです。僕自身が楽しめる自信があるので、そうするとやっぱり皆さんにも届くと思いますし。
――前田さん自身、「天才てれびくん」を卒業して、離れてみて気づいた事はありますか?
色んな現場での適応力ですかね。適応力って養うのに時間が必要で、すぐ身につくものではないじゃないですか。でも僕は「天才てれびくん」でその時間をたくさん作って頂いたので、それは凄く力になってますね。生放送やバラエティーでも、話を振られたらすぐ言葉が出てきますし、コミュニケーション能力とか、すべて「天才てれびくん」によって養われたと思うので、今凄く助かってます。
――そんな前田さんですが、子供のころからエンターテインメントを提供してきた、そういった経験があるからこその役者としての強みはなんだと思いますか?
それこそ、今日のスチール取材の撮影でも様々なポージングをやりましたが、あの時に凄く感じました。「天才てれびくん」時代、お便りコーナーで視聴者からのお手紙を読むんです。大体皆さん“○○さんが好きです、質問があります”って書いて下さるんですけど、自分で言うのも…ですが、ありがたい事に、当時僕の名前を書いて頂ける事が凄く多かったんですね。だからそう言って下さる方達のために僕自身も、もっともっと、そう思ってもらう努力をしなきゃ、という意識があって。だから今意識しなくても、次々とポージングができるのは、「天才てれびくん」で覚えた“見せる”っていう事が体に染みついていたからだと思いますね。自分の見せ方って芸能のお仕事をやっている上で凄く大事だと思うんです。自己PRというか。一枚の写真にしてもそうですし、芝居もその人の人生が出るって言われているので、その人生の見せ方も大事だと思います。それが自然と意識しないで出来るようになっているのかもしれないなと。もちろん上には上がいて、もっと凄い方々はいっぱいいるんですけど、僕の中ではそれを強く感じました。
――最後に、今回「楽しい」「おもしろい」を届けることがてれび戦士とありますが、前田さんにとって、今役者として「楽しい」「おもしろい」と感じる瞬間は?
一番フラットに出来た時ですかね。「カット!」て言われた瞬間に“あ~今フラットにできたな”って感じられる時が凄く楽しいです。
――フラット? …演じている感覚がないという事ですか?
そうですね。相手の空気を感じて、相手の反応を見て、自分の演技が出た瞬間です。考えなくても自然と出てきて、直観的にパーンってセリフが言えた時とか動けた時とか、すっごく気持ちいいし、それが僕の思う役者としての一番の刺激で、一番楽しいところですね。あと自分のお芝居で空気が変わった時も嬉しいです。そう考えると役者って凄く達成感が多いと思います。今自分の性格が、なんとなく高校生くらいのころに戻っている気がしていて。尖っていた時もありましたが、色んな事を経て、一周回って、純粋なあのころに戻れているような感覚です。それが演技にどんな風に影響するのか。自分でも楽しみです。
衣裳協力/NO.ID、DIESEL
●プロフィール
前田公輝(まえだ・ごうき)
1991年4月3日生まれ、神奈川県出身。6歳の時、ホリプロ・インプルーブメント・アカデミー1期生で芸能界入り。2008年、映画『ひぐらしのなく頃に』など多数の映画で主演を務める。同年『ごくせん』(日本テレビ)、15年『アルジャーノンに花束を』(TBS)、『デスノート』(日本テレビ)など多数のドラマに出演し、16年『ダマシバナシ』(日本テレビ)では主演を務める。最新作に、10月公開映画『HiGH&LOW THE WORST』、『赤ひげ2』(NHK BS プレミアム)『貴族誕生 PRINCE OF LGEND』(日本テレビ)など。20年には映画『カイジ ファイナルゲーム』の公開を控える。
●作品紹介
『天才てれびくん the STAGE~てれび戦士REBORN~』
脚本/小林雄次
演出/井上テテ
出演/前田公輝 長江崚行 鎮西寿々歌 ド・ランクザン望 飯田里穂(声の出演)/高野 洸 多和田任益 松村 優/麿赤兒(特別出演)/横山だいすけ
2020年1月23日(木)~26日(日)東京・ヒューリックホール東京、2月1日(土)~2日(日)大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA WWホールにて上演。
てれび戦士──それは「楽しいこと」を届ける選ばれし子どもたち。彼らの歌声は全宇宙の人々を魅了していた。しかし、「楽しいこと」を奪おうとするテレゾンビ党が地球に襲来し、てれび戦士たちは敗北。全宇宙が「つまらないこと」に支配されてしまった! てれび戦士たちはテレゾンビ党に記憶を奪われ、やがて大人になった。すべてを失って…。
だが、希望は失われてはいなかった。彼らが謎のリモコンを手にしたとき、てれび戦士としての記憶がよみがえる!
「天才てれびくん」を復活させ、楽しいテレビを取りもどせ! 大人になったてれび戦士たち!