喫茶室とサンドイッチ

喫茶室とサンドイッチ


仕事柄、打ち合わせでしょっちゅう喫茶店を利用している。正確に言うと、喫茶店というより喫茶室といったほうがいいかもしれない。
自分の勝手なイメージなのだが、喫茶店は光量を落とし気味の薄暗い店内にコーヒーの香りとともに煙草の煙がもうもうとたち込めている空間。それに対して、喫茶室は禁煙なのはもちろん、自然光が差し込む明るい店内にゆったりとテーブルが配置され、静かにクラシックが流れていたりするイメージ。
私にとって落ち着いて打ち合わせするために欠かせないのが、静かな空間と淹れたてのお茶、そして何より必要なのが美味しいサンドイッチだ。資料やノートを広げたテーブルの脇にちょこんと置かれた上品なサンドイッチをつまめば、お腹も頭も満足していいアイデアが浮かぶというもの。

よく利用する喫茶室がいくつかあるが、そのなかでもお気に入りのお店を紹介したいと思う。
まずひとつめは青山と乃木坂のあいだにあるウエストの青山ガーデン。
店内はゆったり、テラス席には糊の効いた清潔な白のテーブルクロスがかけられ、季節ごとの植物がさりげなく配置されている。テーブルの横にはコンセントもちゃんと付いているという配慮っぷりだ。

ウエストといえば名物のシュークリームを始めとするバラエティ豊かなケーキや香ばしく焼き上げられたホットケーキが人気だが、実はサンドイッチもかなりのクオリティだ。種類はハム、卵、野菜から好きなものをふたつ組み合わせられる。パンは12枚切りの薄めでホワイトかライブレッドから、トーストするかそのままか好みに応じてオーダーすることが可能。いつもオーダーするのが卵と野菜の組み合わせをトーストしたパンで。ホワイトかライブレッドかはその時の気分に応じて。
しばらくして運ばれてくるサンドイッチは端正のひとこと。自分でも作るからわかるが、サンドイッチをきれいにカットするのは至難の業。カリッと香ばしくトーストされたパンで挟んだ具の黄色やグリーンの美しい断面はまるで小さな花束のよう。そこにレモンをちょこっと搾って、ひとつずつお上品につまんで口に運ぶ。まろやかな卵ペーストとしゃりっとした食感が爽やかな野菜のコントラストが楽しい。特に野菜は単なるレタスやペラペラのきゅうりやトマトを挟んだものではなく、茹でて細かく刻んだブロッコリーやセロリを混ぜてトマトと合わせたものでとにかく食感がフレッシュなのだ。一度家でもやってみたいと思っているのだが、勘どころがわからず、いまだトライできないでいる。

サンドイッチに合わせる紅茶もダージリン、アッサム、アールグレイから選べて、しかも飲み物はお代わり自由というのが泣かせる。ポットでサービスされるロイヤルミルクティやカフェオレでさえ、お代わり自由だというからどれだけ親切なのだと頭が下がる思いだ。
控えめで折り目正しいサービスもとても気持ちがいい。何度か通って顔見知りになった人でも決して、なれなれしさはなく一定の距離間を保っているのがとても心地よい。以前、前回忘れものしたことも気が付かなかったボールペンを次に訪れたときにさりげなく渡してくれたことにはびっくりするやらうれしいやら。そんなところもウエストが好きな理由なのかもしれない。

もう一軒は日比谷の帝国ホテル横のインペリアタワーのなかにある、はまの屋パーラー。有楽町の駅前にある昔懐かしいちょっぴりレトロな雰囲気の老舗店として知られるはまの屋パーラーの支店で、意外に知られていない穴場的存在。本体のはまの屋パーラーは2011年に45年の歴史に一度幕を下ろしたが、翌年、人気のレシピやサービスはそのまま、再スタートを切った。ここ、日比谷店はいつ行ってもゆったり座れて、打ち合わせが長引いても気まずくならないのがいい。
こちらもサンドイッチが名物だ。いちばん人気は柔らかな卵焼きを挟んだ玉子サンド。こちらもそのままかトーストするかが選べる。この玉子サンドにツナや野菜を組み合わせるのが好きだ。

意外にボリュームがあり、一皿食べるとお腹いっぱい。先日は季節のスープセットで甘いかぼちゃのポタージュが付いてきた。お茶のセットは真っ赤なル・クルーゼで供されるのでテーブルの上がとても華やかな雰囲気に包まれる。
ビートルズが流れる店内は適度にほうっておいてくれるので打ち合わせする身にとってちょうど塩梅がいい。ゆったりと時間を過ごして、美味しいサンドイッチとお茶を頂いてお代はホテル内とは思えないほどのお値打ち価格。ホテルのコーヒーハウスとは比べ物にならないから、なんだか狐につままれたような気持ちになってしまうほどだ。

サンドイッチ好きのみなさん、一度足を運んでみて欲しい。打ち合わせにぴったりのお店は、友人とのおしゃべりを楽しんでもよし、読書をしたり、ひとりでぼーっとするのもよし。心地のいい時間を提供してくれるはずだ。

 

 

 

『arikoの食卓』

 『arikoの食卓 -もっと食べたい-』

『arikoの黒革の便利帖』
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『arikoの食卓 ~小腹がすいたら~』

Written by ariko
ariko

CLASSY.、VERY、HERSなどの表紙やファッションページを担当する編集ライター。日々の食卓をポストしているInstagramが、センスあふれる美味しそうな写真と食いしん坊の心を掴む料理で話題に。現在、フォロワー数は131,000人を突破。Instagram@ariko418

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