「自分」を見失った人に知ってほしい、心に刺さる「人生の文章」とは?


「毎日こんなに頑張っているのに、幸せになれないのはなぜ?」「なんか、いつも寂しくて、虚しい……」「“人生”って、これでよかったんだっけ――?」。
そんな想いが頭をよぎり、意味もなく、涙があふれる夜はありませんか? 

 慌ただしい世の中と足並みを揃えようと「頑張った」結果、知らないうちに疲れ果て、本来の自分を見失っている人も少なくないはず。
そんなとき、あなたの心の一番の“処方箋”となるのは、その場だけの慰めの言葉や、正しいアドバイスではなく、もしかすると「ただ、そっと寄り添ってくれる」一冊の本、あるいは、たった数行の短い文章なのかもしれません。

 ここでは、そんな「人生の文章」を、TWICE、WannaOne、Stray Kidsなど、人気アイドルの愛読書としても話題となり、韓国で20万部を突破するベストセラーになったエッセイ『私が望むことを私もわからないとき 見失った自分を探し出す人生の文章』の著者であるチョン・スンファン氏が紹介します。

※本記事は、チョン・スンファン著/小笠原藤子訳『私が望むことを私もわからないとき 見失った自分を探し出す人生の文章』(ワニブックス刊)より、一部を抜粋編集したものです。

(イメージ:写真AC)

大丈夫、がんばらなくてもいいんだよ

 誰にでも、癒やしが必要なときがある。疲れ果てていたり、寂しかったり、悲しい出来事があったり、とても落ち込んだときなど。一人では解決できないことに悩むとき、私たちは誰かの肩を借り、「元気出して」と励まされ、慰められる必要があるのだ。

 だが不思議なことに、「元気出して」という言葉を持て余し、本心に感じられない場合がある。慰めてもらっているのに、慰められない。そんなときに必要なのは何だろうか? 本当に何の励ましも慰めもいらないなら、そのまま放って置かれたいのだろうか? 

 いや違う。そんなときに必要なのは、もう少し頑張ってという言葉ではなく、今のままでも何の問題もないという言葉、私の存在自体をあるがままに認めてくれる言葉なのだ。

(一部中略)

  頑張って、とは僕はいいたくない。頑張れ、という励ましの言葉を期待しているのなら、それは今の君には全く逆効果ではないかと思うんだ。がんばれ、がんばれ、と励ます歌ばかりが氾濫している世の中、もうみんなそういう言葉では本当の力は出ない。がんばらなくてもいいんだよ、と僕は言いたい。
 そうだよ、今の君には、がんばらなくてもいいんだという言葉を贈りたい。がんばりすぎて、違う道や世界に君がそれていってるような気がしてならない。がんばらなくてもいいのか、と思うと気が楽になるだろう。人間本当はがんばる必要なんかないんだ。そう思うとおかしなもので逆に力が出てくる。だめになる人というのは、自分に負担をかけすぎてしまう人たちなんだと思う。がんばらなくてもいい、自分のペースで進んでいけばいいんだ。

 辻仁成の小説『愛をください』の中の文章だ。最近になって、さらに私の頭の中に残っている一節でもある。今私たちが一番欲している言葉は、おそらく「頑張れ」ではなく、「頑張らなくても大丈夫」という言葉だろう。

「大丈夫」「よくやってる」「これ以上頑張らなくていい」。とてもつらいのに座り込むこともできず、必死に耐え、立ち尽くすことしかできない人たちには、こんな言葉が大きな慰めになる。「がんばりすぎて、違う道や世界に君がそれていってるような気がしてならない」「人間本当はがんばる必要なんかないんだ。そう思うとおかしなもので逆に力が出てくる」という言葉は、私たちが頑張る理由が他の人のためではなく、自分のためだということに気づかせてくれる。

 人にはそれぞれ、適当な速度がある。無理に疾走しようとしたり、他の人や会社のペースに追いつこうとする必要はない。むしろそうすることで、いざというときに頑張れず、道半ばで倒れてしまうこともあるのだから。走り疲れたなら、無理することはない。そんなときは、少し休んでからまた進んでもいい。

(イメージ:写真AC)

「美しい文章に、心温められますように」――。この索漠とした世の中に、少しでも温もりや慰めの言葉を届けようと、本紹介サイト<The Book Man>を運営しながら、多くの人々の心に響く「人生の文章」を紹介し、ともに鑑賞してきたチョン・スンファン氏。スンファン氏は私たちに、こんなメッセージを贈ります。

「一文の持つ力で、あなたが心の温もりを取り戻し、あなたの傷が癒され、あなたを再び笑顔にし、誰よりも元気にあなただけの人生を歩んでいけますように」

<参考文献>
辻仁成著/ヤン・ユンオク訳『愛をください』(ブックハウス/2004年)


私が望むことを私もわからないとき
著:チョン・スンファン/訳:小笠原藤子

チョン・スンファン
作家、本紹介サイト<THE BOOK MAN>運営者。慌ただしい日々を生きる読者の疲れた心を、心地よい言葉で癒やしてくれる、本のセラピスト。多様なSNSサイトを通し、毎週のべ150万人のフォロワーに美しい言葉と心温まるストーリーを綴っている。邦訳された著作『自分にかけたい言葉 〜ありがとう〜』(講談社)は、韓国で30万部を超える。

小笠原藤子
上智大学大学院ドイツ文学専攻「文学修士」。現在、慶応義塾大学・國學院大學ほか、ドイツ語非常勤講師。訳書に『今日笑えればいいね 心向くまま自分らしく生きることにした』(小社)、『自分にかけたい言葉 〜ありがとう〜』(講談社)、『+1cmLIFE たった1cmの差があなたの未来をがらりと変える』(文響社)がある。