なぜか憎めない人の魅力とは? 倫理観バグがすごいのに愛される後輩とのエピソードから考える。

なぜか憎めない人の魅力とは? 倫理観バグがすごいのに愛される後輩とのエピソードから考える。


ゆとりフリーターの「ぬるい哲学」みんな違って、みんな草


「みんな違って、みんないい」の精神で育てられ、
経験至上主義な大人、自由すぎる価値観を持った年下、
年が近いはずなのに分かり合えない同年代に囲まれても
「ふっ(笑)」とあしらうだけのぬるい地獄に浸ってます。

そんな環境でも日々を生き抜くため模索中の
「ゆとりフリーター」が綴る、ぬるい哲学と
想像以上にしんどい!人間図鑑


私の働いていたレンタルビデオ店に20歳のイケメンバイトがいた。たしかイギリスだかどこかのヨーロッパのハーフかクオーターらしく、長い手足に彫りが深く、くるくるなクセっ毛は天然パーマらしいが、おしゃれでセットしているようにしか見えないほど似合っており、この田舎のレンタルビデオ店には不釣り合いなほどに整った容姿だった。ユニクロのウルトラストレッチスキニージーンズでも履いてエビぞりジャンプすれば、その瞬間がポスターにされていても違和感はない。
しかし彼は私の期待するウルトラストレッチスキニージーンズではなく、少しダボっとしたウォッシュ加工で禿げた色味のジーンズをいつも履いていたため、私は彼を心の中でウォッシュと呼ぶことにした。

そのウォッシュ、意外にも職場ではモテるどころか悪評が蔓延していた。

彼はとてもおしゃべりな人だった。人見知りの多い職場では、空気を和ませるおしゃべりであれば大歓迎だ。しかし彼は話しかける相手に決まって、第一声「最近良いことありましたか?」と聞き、そこで相手に良いことがあろうが無かろうが二言目には「自分は今日のお昼はコロッケをこんなに食べた」だの「久しぶりに洋服を買いに行ったら店員さんにのせられて短パンを買ってしまった」だの、仲が良ければまだしも、強引な自分語りをするので大変タチが悪かった。やがて話すことが無くなったかと思えば「トイレに行ってきます」と言ったっきり30分は帰ってこず、そこでスマホをいじっていたりするのだ。悪評が立つのも仕方がない。

しかし当の本人は全く悪びれもせずまっすぐな瞳で
「だっておしゃべりしていた方が楽しいじゃないですか」と言う。

これは倫理観にバグでも発生しているのだろうか?
楽しいのはお前だけかもしれないよとイヤミの一つでも言いたくなるところだが、ウォッシュは職場では群を抜いてお客さんウケが良かった。もうウケが良すぎて「対応がさわやかで丁寧だった」とお褒めのメールがウォッシュ名指しで来るくらいだった。本社の偉い人から一目を置かれ、ますます色んな意味で浮く存在となっていた。

そんな彼について私はどう思っていたかというと、嫌いではなくむしろその空気を読まない生き様に少し好感と興味を持っていた。
ただ、話しかけられると、やべ! 罠にかかった! みたいな気持ちになるのはみんなと同じで、傍から見ている分には良いが距離の取り方を失敗してはいけない要注意人物だと思っていた。

私はこのまま遠くから彼の自由奔放ライフを他人事のように観察していたい気持ちでいたのだが、ある時、彼とシフトが立て続けにかぶることが増えた時期があった。
なんとその一時のシフトかぶり期の中で、私は不覚にも彼の恋愛相談に乗るほど仲良くなってしまったのだ。

最終的には「僕、ゆとりさんみたいな人と話すの好きなんですよね」と言われるほどの好感を得てしまうほどに。
私にとって、ウォッシュという人間の魅力とは一体何だったのか……。

はい!
長い長いプロローグを読んでいただきありがとうございます。
ということで今回は、街にクリスマスソングが流れはじめ、恋人たちの季節と呼ばれるこの時期に思い出す、バイト先の後輩ウォッシュという人物について、ぬるく哲学していきます。

 

「楽しい方が良いじゃないですか」論

ウォッシュの特徴の一つとして「話が面白くない」があげられる。悪評の最も根源の理由にあるのがこれだ。
性格上すきあらば自分語りをしてしまうのは仕方がないとして、彼はさらにプラス要素としてそこで自身の偏った意見をなんの躊躇いもなく打ち込んでくる。これがきっと不快ポイントなのである。

例えば、「デートを誘うことくらい誰でもできるじゃないですか」←そうじゃない人もいるよ……
女の子ってなんで自分の親に僕のこと話すんですかね」←主語でか……
など、恋愛関連の話では特段やかましい。

私もやはり周りの目が気になり、正直なところ彼とあまり関わりたくなかった。しかし恋バナとなれば話は別だ。
恋愛の話が大好物だった私は、学生時代友人とファミレスに入り浸ったあの頃を思い出しながらやや気を利かせた相槌を打つようになった。

すると彼は、小まめに「来週はTwitterで知り合った女の子と出かける」や、「あの子の悩み相談のLINEを未読無視している」などを報告してくれるようになった。どうやら彼は恋愛面でも自由奔放らしい。私は私で野次馬根性から「なんで返信したくなくなったの?」と聞き返すと、彼は「僕、楽しい話しかしたくないんですよね。暗い話したくないんです」とのこと。
なんだそれは。恋愛関係なら相手の暗い部分も受け止めたりするのも醍醐味の一つなんじゃないのかね! と私の恋愛論をアツく語りたくなったが、さすがにそこまで踏み込むのは違うなと思い「ハハ……」と流すことでブレーキを踏んでいた。
にしても、彼の一貫して「楽しい方が良いじゃないですか」のブレなさには、もはや清々しささえ感じ始めていた。

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Written by yutori_freeter
ゆとりフリーター

1995年生まれの高卒フリーター、音声配信者。21歳の頃、実家の押し入れから音声配信活動を開始。
配信中の番組『ゆとりは笑ってバズりたい』ではバズるにはどうしたら良いか試行錯誤している。現在の番組フォロワー数は3万人。
JAPAN PODCAST AWARDS 2020 ベストパーソナリティ賞ノミネート。
Radiotalk番組『ゆとりは笑ってバズりたい』:https://radiotalk.jp/program/1877
Twitter:@yutori_radio_ 
Instagram:@yutori_radio_

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