
広海 深海の広くて深いここだけの話:愛すべき二匹の猫様がくれたもの
人が猫を育てるのではない。猫が人を育てるのです。
深海 世間ではよく「独身女性がペットを飼うと結婚できない」なんて言われたりするけど。個人的にはペットを飼うのは賛成派。私自身、グリちゃんと暮らし始めたのは一人暮らしをしているときだったしね。
広海 ちゃんと聞いてなかったけど、グリちゃんを飼うきっかけはなんだったの?
深海 誰もいない部屋に帰るのがイヤだったというか。家に帰ったときに「ただいま」を言う相手がほしかったんだよね。そんな安易な考えで暮らし始めてしまったから、実は最初の頃は戸惑うことも多くて。もちろん、ペットを飼うということは命を預かるということ。自分なりに色々と調べて考えたうえで迎え入れたんだけど。頭の中に知識はあっても心が追いつかないというか。距離感に迷ってしまうというか。“親”と“子供”のような関係性を築くのにすごく時間がかかったんですよ。そんな自分を「人として大丈夫か?」と不安に思うこともあったりして。
広海 えっ、でも、深海ちゃんは“ペット賛成派”なんでしょう???
深海 そんなスタートだったからこそ、グリちゃんが私のことを人として成長させてくれた実感がすごくあって。今でも忘れられないのが、以前、私がガンを告知されたときのこと。ショックで頭の中が真っ白になる中、そこでまず私が思ったのが「あ、グリちゃんどうしよう」だったんです。それが自分の中ですごく画期的な出来事で。自分がそう考えることができたのが、なんだかすごく嬉しかったんですよ。「私もちゃんと誰かのために生きることができているんだ」って。
広海 最初は戸惑ったものの、ちゃんと “お母さん”になっていたんだね。
深海 大変なときこそ気遣う相手がいると強くなれるというか。“守るべき者”の存在って自分の大きな力になるじゃない。
広海 こんなこと言ったら、世間のお母さんたちに怒られてしまうかもしれないけど、ペットも子供と同じ。「この子のために」という思いが、生きる活力や働く気力を届けてくれることもあるんだよね。
深海 またさ、人間って一人で生きているとどんどん自分勝手になっていくじゃない。全部が自分の思い通りになってしまう生活は人間をワガママにしてしまう。でも、ペットと暮らすと“思い通りにならないこと”とたくさん出会うから。
広海 朝早くに叩き起こされたり、上から降ってきたり、言葉も通じないしね(笑)。
深海 周りに合わせること、我慢すること、自分一人で生きているわけではないこと……。その“思い通りにならないこと”は、人として忘れがちな大切なことを改めて教えてくれる。大切なペットという家族に出会ったことで、私の人生はより素敵に色づいた。本当にグリちゃんには感謝しているんです。
広海 ぼくも!!!(笑)
【 mini COLUMN 】
みなさまにいただいたご質問をピックアップして、お答えしていきます!
Q. 周りから言われて嬉しい“褒め言葉”は?
広海 ぼくは褒められるのが苦手なんです。「いやいや、そんなこと言っていただくなくて大丈夫です」ってなっちゃうんだよね。誕生日祝いとかも同じで。誰かを祝うのは大好きだけど、祝われるのは苦手。なんか「悪いな」って思っちゃうの。
深海 何言ってんのよ、アンタ。こないだ「肌が綺麗」と言われて喜んでたじゃない(笑)。
広海 だって、それは本当のことだから。本当のことは「悪いな」って思わないじゃない(笑)。そういう、深海ちゃんが嬉しいのはどんな褒め言葉なの?
深海 「深海ちゃんは●●なんだね」。私たちは「似ている」「同じ」と言われることも多ければ、自分たちに興味がない人からは二人一緒に扱われてしまう。そういうことが多いからこそ、「広海ちゃんは〇〇だけど、深海ちゃんは▲▲だね」って、ちゃんと私の個性に目を向けてくれた言葉をもらえたときはすごく嬉しいんだよね。
構成・文/石井美輪
バナーイラスト/Yone(https://yone.in/)
バナーデザイン/浮須 恵(フライスタイド)
※連載は今回で最終回となります。
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