【インタビュー】東京パラリンピックリポーター、美容家 三上大進さん【後編】

【インタビュー】東京パラリンピックリポーター、美容家 三上大進さん【後編】



BOOKOUTジャーナルとは

知られざる想いを知る―。
いまいちばん会いたい人に、
いちばん聞きたいことを聞く、
ヒューマンインタビュー。


撮影/イマキイレカオリ
ヘアメイク/George
スタイリスト/FUKAMI
文/高木さおり(sand)

東京2020パラリンピックでNHKのリポーターを務め、チャーミングな人柄と真摯な語り口で人気となった三上大進さん。左手の先天性の障がいも、自身のセクシュアリティも、包み隠さず自然体で発信する姿が注目を集めています。
テレビのコメンテーターやスキンケアブランド「dr365」のプロデュースなど活躍の場を広げる三上さんへのインタビュー。
後編ではNHKの任期をまっとうしてフリーになった現在の活動、今の不安定な世の中を過ごす私たちに明るく前向きなメッセージをうかがいました。(前編はこちら)。

 

2021年11月にdr365をリリースされました。発売当初からとても人気ですね!

化粧品会社で培った経験を活かしてスキンケアブランドを立ち上げたいと、ずっと思ってきました。ただ最初は何とか100個でも売れたらうれしいな、ぐらいに思っていて。それが発売すると、その瞬間に数万というもの凄いアクセスがありました。こんなにも多くの方に応援していただけることに、改めて責任を強く感じましたし、みなさんと一緒に積み上げてきた多くのことに意味があったのだと実感することができました。

マーケティングをしていた頃は、まず製品ありきで「どう届けるか」を考えて行動していましたが、今は真逆。テレビの視聴者の方やフォロワーさんたちから「こんな悩みがある」「これがわからない」などの声をいただいて初めて、みなさんの求める部分が具体的に見えてきました。その上で製品作りに取り組めたことは大きかったですね。

インスタグラムでは商品へのネガティブな感想も正直にアップされていたのが印象的でした。

人の心は、理想と現実のギャップを感じたときに離れてしまうと思ったので、最初から全てをさらけ出していこうと考えました。発売前にモニターの方に製品を送って感想をもらった際に、ポジティブな意見だけじゃなく「肌が荒れた」「真っ赤になった」などのネガティブな意見も公開しました。

もちろん9割9分は「よかった!」って感想が届くのです。だってなんとリピート率は95%なんです。でも、やっぱり絶対に「良くない」と感じる方はいて、その意見を絶対に無視してはだめだと思っています。
世の中にはありあまる数のブランドがあって、どれも素敵で完璧なものを求めているから、その中で一つぐらい不完全さを恥じていないブランドがあってもいいのではないか、そう思ったのです。

それは自分自身に関してもそうです。インスタライブでは、かっこつけない。鼻をほじるし、おならもするし、ニキビも出す。彼氏ができないことも話すし(笑)、弱いところも見せます。

すべて正直に見せてくれることが、今の時代では親近感にもつながりますよね。

逆に「正直な感想をアップしてくれたからこそ買いました」って声が本当に多いんです。
こうして、ネガティブな側面をさらけ出せるようになったのも、NHKのリポーターを通して完璧じゃない自分こそが「完璧」だと思えるようになったから。躍起になって完璧を求めた20代の頃には絶対にできなかったことだと思います。

この混沌とした世の中を今、三上さんはどう捉えていますか?

家での生活が増える中でどうしても自分と向き合う時間が増えていますよね。だからこそ自分の欠点が目について否定的な感情になる人が多くなっているかもしれません。
でも実はそれって全然悪いことじゃないと思うのです。自分を見つめ直す期間って、人生のどこかのタイミングで絶対に必要ですから。

ただ大切なことは、あなたが欠点だと思う部分はあなたの全体の5%ぐらいでしかなくて、残りの95%は本当に眩しくて素敵なものだということ。それに気づいてほしいのです。5%の短所に気づける人は、視点を変えるだけで95%の長所にも目を向けてあげられるはずなんです。

自分に関心がない人は、そもそも欠点にさえ気づけないですね。

自分の欠点に気づいて反省するなんて、すごく奥ゆかしい行為ですよね。誰かと自分をつい比べてしまう人も、比較するだけの研究材料を持っているなんて、とても勉強熱心な方だと思いませんか? そうやって、どんどん自分のいいところを見つければ、結果として自分のことを認めてあげられるようになりますよね。実際にそういう人が私をフォローしてくださる方の中でも増えてきたように感じています。

今後、自分がどう変化するかはわからないし、性と障がいのダブルマイノリティとしての生きづらさは消えることはないと思います。でも、何かを発信することは大好きだから、これからも自分の考え方、人生での失敗や傷ついたことなどを伝え続けていきたいと思っています。

三上さんの発信を楽しみにしている方、日々癒されているという方は多いです。

「1日の終わりに大ちゃんのストーリーを見るのが楽しみ」「夜に大ちゃんのストーリーが上がってるから、仕事もがんばれる」など、日々心待ちにしてくれる人たちがいらっしゃって。私が、少しだけ時間をかけて作った投稿で、見る人が一瞬でもクスッと笑ってくれたり、誰かの心のデトックスになったりするなんて、とてもうれしいこと! せっかく届けるのなら普通のストーリーではなく、少しでもハッピーになれるものを散りばめたい、いつもそう思っているんです。

衣装協力:シャツ ¥17,600、パンツ ¥18,700(ともにCITY(シティ)/STUDIOUS カスタマーサポート 03-6712-5980)、アイウェア ¥39,930(Oliver Peoples(オリバーピープルズ)/ルックスオティカジャパン カスタマーサービス 0120-990-307)※すべて税込み

三上大進(みかみ だいしん)

大学卒業後、日本ロレアル株式会社、ロクシタンジャポン株式会社でマーケティングに従事。2018に日本放送協会入局。2018平昌、2020東京パラリンピックにてリポーターを務める。生まれつき左手の指が2本という、左上肢機能障がいを持つ。2021年11月には自身がプロデュースしたコスメブランド「dr365」をスタート。日々、インスタライブやYouTubeにて飾らない姿を配信しており、多くの人気を集めている。
Instagram @daaai_chan
Twitter @daishin_mikami
YouTube 『大ちゃんチャンネル