【INTERVIEW】4月ドラマ『インビジブル』に出演する谷恭輔に、作品や自身について話を聞いた。

【INTERVIEW】4月ドラマ『インビジブル』に出演する谷恭輔に、作品や自身について話を聞いた。


『病室で念仏を唱えないでください』では救命救急医として、『天国と地獄~サイコな2人~』『ミステリと言う勿れ』では刑事役として活躍した谷恭輔。4月15日より放送となる連続ドラマ『インビジブル』では、事故や事故現場に臨場する鑑識課の鑑識員・近松延武役という、またも特殊な役柄を演じることに。今回で三度目の共演となる高橋一生が主演を務める今作で、どのように作品と向き合い、演じるのか、今の心境を聞いた。

撮影/浦田大作 文/竹下詩織


——先日最終話を迎えた『ミステリと言う勿れ』、非常に面白い作品でした。出演が決まった時のお気持ちは?

昨年にお声掛け頂いたのですが、普段ほとんどマンガは読まないので、これを機に原作も読ませて頂きました。刺さる言葉や共感出来ることも多くて、凄く面白い話だなと。少女マンガにはこんな作品もあるんだって、僕の中では新しい発見でしたね。作品に参加させて頂く時は、共演者の方とご一緒させて頂くのも毎回楽しみではあるんですが、お話しを頂いてまず一番に思うのは、どのようにこの作品に関わって、どう自分が爪痕を残せるのか…ということです。おこがましいかもしれませんが、自分が作品の一端を担えると思うと、プレッシャーにもなりますしやりがいにもなります。

——登場する11話まで、視聴者としても作品を楽しんでいた訳ですが、キャストとしてその世界観に参加してみていかがでしたか。

自分が出させて頂いた作品も、撮影が終わると離れるというか、客観的に見られることは多いです。もちろん自分の演技を見て、粗が目立つとかそういう気になる部分もありますが、作品としては客観的に観て、「だからあの時こういうカットを撮ったんだ」と答え合わせをしながら面白く見させて頂いています。

——今回のようにすでにチームの出来上がった現場に参加する上で気を付けた点はありましたか?

今までの経験上、あまり考え過ぎても色々なことが弊害になってやりにくくなることが多かったので、途中参加の座組であったとしても、フラットに、自分の役割や役柄を全うすることにだけ集中しようと思ってやっています。

——『コウノドリ』や『病室で念仏を唱えないでください』では医療系の役柄、『天国と地獄』や今回の『ミステリ~』では刑事役と、専門的な職業を演じる時はどんな準備をされるんですか?

警察も病院もひとつの組織なので、どういう仕組みでその組織が出来ているのか、というところをまず調べます。例えば病院だったら、どういう経緯でこの病院が出来たのか。警察だったら警視庁と警察庁が違うことだったり、そういった構造を理解することから取り掛かります。自分が役として携わっている職業を本業とされている方達には、特に意識していなくても自ずと入ってくる専門的な情報がたくさんあると思うんです。その辺はやはり事前に知っとかなきゃないけないなと思って。そこからの穴埋めみたいなものは、物語に沿って、現場に入って色々作っていくものだと思っているので、事前情報としてなるべく本やネットで片っ端から調べるようにしています。それが役に立つかどうかはわからないですけど…。でも実際『病室で念仏を唱えないでください』の時は、研修というのか、現場に入る前に実際に医療現場を見させて頂いて、そういった経験はとても役に立ちましたね。


——4月からスタートの『インビジブル』の出演も決まっていますが、また今までとは違う犯罪エンターテインメントになりそうです。台本を読んだ感想や物語に対する期待を教えて下さい。

読み物としても凄く面白くて、台本の段階で先々の展開が凄く気になりました。スピード感もあって、それがまた映像になった時にどうなるのか。具現化されて視聴者の方に見て頂けるのが凄く楽しみです。

——谷さんが演じる近松は、鑑識課というまたも特殊な役柄ですが、今回はどんな準備を?

先程言ったような作業は一通りやりました。あとは『天国と地獄』で刑事役をやらせて頂いた時に、現場に鑑識役の方もいらっしゃったんです。当時撮影しながら鑑識の方の言動も見ていたので、「あ、あんな感じかな」と今回の役に繋げやすかった部分はあります。

——近松は元刑事でもあるので、今までの刑事役の経験も生かされそうですね。

それこそ『天国と地獄』の時は北村(一輝)さんと一緒に色んなところで撮影させて頂いたので、おそらく実際の刑事さんもああいう風にしっかりと足で仕事をしているんだろうなと。そういった経験は近松を演じる上でも凄く活きるだろうなと思っています。

——職業もそうですが、近松役として内面的な役作りで意識していることはありますか?

近松は結婚していて、姉さん女房で、息子がひとりいる、という設定ですが、僕が台本を読んだり、監督やプロデューサーさんとお話しした印象としては、色んなことに対してもの凄く丁寧な人なんだろうなと。キャラクター的な特徴としては眼鏡をかけていて、機械オタクで鑑識オタクという部分もあるんですが、近松の私生活ってどんなんだろうと考えた時に、しっかりと物事に対して、無碍にせずに不器用ながらも向き合う人なんだろうなと。そこを最初に軸として持って演じています。


——高橋一生さんとは3度目の共演ですが、いかがですか? 立場的には刑事と犯人から、協力し合うパートナーになります。

三度目ということもあって、ドラマの撮影期間が約4カ月と考えると、計1年間くらいはご一緒させて頂いてるということになります。『凪のお暇』で初めて共演させて頂いたですが、あのころより『天国と地獄』の時のほうが色んな話をさせてもらっているし、今回はもっと、個人的な実感としては、より仲良くさせてもらっているんじゃないかなと…(笑)。もちろん大先輩なので、尊敬していますし大好きな俳優さんです。その今まで培ってきた関係性みたいなものも、今回近松として使えるなと思ったんですよね。相手の懐に入っていく距離感とか。『天国と地獄』の時は役柄的にほとんど関わらなかったのですが、今回はがっつりやらせて頂けるので楽しみです。これから撮影していく中で一生さんとのシーンも増えていくと思うので、色々お話ししながら作っていけたらいいなと思っています。

——現場はどのような雰囲気ですか。

僕の印象ですが、凄く優しい雰囲気が流れている現場だなと思います。刑事ものだと殺伐とした空気が流れているのかと思いきや、今回キャストの方達が柔らかい雰囲気を持っていらっしゃる方が多いというとこもあってか、緊迫したシーンを撮っていても、カットした瞬間に和やかなムードになりますね。そういうメリハリは、今後作品にいい影響をもたらすんじゃないかな。ドラマの中にも、ずーっと緊張したシーンばかりではなく、笑えるシーンだったり、ほんわかするシーンがあったりするので、そういう場面に生きてきそうだなと思います。

——楽しく撮影されているんですね。そんな今作で、どのように自分の爪痕を残したいと思っていますか。

僕が今年32歳になるのですが、20代のころから舞台をずっとやってきて、だんだん映像にも出させて頂く中で、無理しないようにしよう、という考えになってきたんです。今回の『インビジブル』では特にその想いが強いんですよね。自分のありのままで近松という役に挑んでいるので、自分がよく出ているような気がします。今回はなんとなく、随所で谷恭輔と近松がリンクするところが多いような気がしていて。そういう意味で無理していないのかもしれないです。昔は、それこそ役者を始めたばかりの20代前半のころは、ああいう人になりたい、ああいう役者さんを目指そう、という想いもあったのですが、やっぱり性格も顔も身体も声も違うので、どうしたってそこを目指しても無理が出てくるんですよね。そうなるとなんであっちにいけないんだろう、って苦しくなってくることも多くて…。30代になってその考えをやめてから、凄く楽になったんです。その楽になった部分がどう影響するのかはわからないんですが、今は近松という役をやらせて頂く中で、感触としても凄くいいものを感じているので、僕自身も楽しみです。

——自分らしく、ということですね。とはいえ大先輩と共演することも多いので、毎回刺激もあるんじゃないでしょうか。

あります。無理しないようにする、ということは大前提に自分の中にあるのですが、考えることや学ぶことは常にやろうと思っていて。それこそ北村さんや(高橋)一生さん、船越さん、伊藤英明さん…その方達の姿勢が少しずつ自分の中に取り込まれているような気はしているんです。それは私生活においてもそうです。色んな方の影響を受けて、今回の谷恭輔が演じる近松が出来上がるような気がしています。


——放送が楽しみです。谷さんは2013年から、主に最初は舞台で活躍されていましたが映像に興味を持ったきっかけはあったのでしょうか?

役者を始めた時からずっと映像はやりたかったんです。昔から映画が好きで、20代前半のころは小劇場しか立っていなかったんですが、あのころは食い入るように映画やドラマばかり見ていました。映画は週に5本必ず観るという、自分の中でルールを作っていたんです。そうなると年間300本くらい観ることになるんですが、それを何年か続けていました。そういう意味でも映像には興味があったというか、自分に近い存在だったような気がします。ただ実際自分が映像の現場に入ってやってみると全然違うものだったので、そこに戸惑いはありましたけど。

——舞台と映像、両方経験して違いはどんなところにあると感じますか?

当たり前ですが、稽古があるかないか、というところですね(笑)。映像は稽古がないのが面白いところでもあります。僕はストレートプレイばっかりだったのですが、舞台では1回上演が始まっちゃうと2時間の世界観が途切れることなく流れ続けます。その時間の流れを追っていけるから、舞台のほうが役としての感情がつくりやすいというのはあると思うんです。映像はやはり順撮りじゃないほうが多いので、シーンごとに瞬発的に感情を作れる方達は凄いなと、いまだに尊敬します。僕はどちらかというと、今の段階ではまだ舞台のほうが慣れているというか、気負わずに出来ている感覚があります。

——舞台と映像では感じる面白さも違いますか。

映像は稽古がない分、それぞれが思っていること、考えていることをほとんど打ち合わせせずに、その場で合わせるので、その時の緊張感や集中力、やり取りがどっちに転ぶかわからないスリリングさというのは、癖になる感じがあります。現場でこういう演技をする方なんだ、こういう読み方をするんだ、と。そこを学べるので、映像も凄く面白いですね。

——これからの自分の活躍の場についてはどう考えていらっしゃいますか?

希望は特にないですが、どちらかをやめるというのはしたくないです。もちろん今後考え方は変わると思いますが、やっぱり僕のホームグラウンドは舞台だと思っていて、今の時点ではドラマや映画は挑戦の場という表現が僕の中ではしっくりきています。両方ともやめずに、どちらにもいい影響を与えられるような状態でいたいなと思います。

——今、お芝居をする楽しさは?

僕自身人と話すのが好きなので、お芝居の中では会話が出来るし、人と関われることがやっぱり楽しくて。映像だと関わる人数もより多くなりますよね。全然知らなかった方と共演することもたくさんあるので、はじめましての状態から関係が深まっていったり、その人がどんなことを考えて、どういう人生を歩んできたのか、と理解していく作業も凄く素晴らしいなと思います。それも演技に生きてきそうな気がしますし。


——そんな谷さんですが、今後挑戦したい役柄はありますか?

やってみたい役とかは…ないんですよねえ(笑)。これがやりたい! というのは特になくて、受け身かもしれないのですが、『この役をやってほしい』と言って頂けることが凄く嬉しくて。自分から希望してやるよりも、『この役でお願いします』というほうが任されたんだという実感が大きいというか、凄くやりがいを感じますね。任されることの責任感っていうのが今の僕には凄くありがたくて充実している要素のひとつです。きっと僕自身ではわからない、僕にある要素を、オファーしてくれる方はどこかで抽出して見つけてくれたはずなので、たとえかけ離れた役だとしても、凄く嬉しいと思います。そのあとにプレッシャーがのしかかってきますけど(笑)。

——今後役者に限らず挑戦したいことはありますか?

ラジオが好きなので、ラジオをやってみたいですね。ただ話すことが上手な訳ではないので、ひたすらラジオで人の話を聞く番組をしたいなって(笑)。相槌だけ打つ、みたいなのがいいな。仕事で人の話を聞けるって凄く面白いと思います。喋るより聞くほうが好きなんです。だから編集者の方がどういうお仕事でどういう苦労があるのか、逆に僕が今聞きたいところです(笑)。


  ●プロフィール

谷恭輔/たに・きょうすけ
1990年5月9日生まれ、大阪府出身。2013年から舞台を中心に活躍。17年、『コウノドリ』で連続ドラマ初出演を果たし、以降『凪のお暇』『病室で念仏を唱えないでください』『天国と地獄~サイコな2人~』など様々な作品に出演している。22年は『ミステリと言う勿れ』に出演、『インビジブル』(4月15日~TBS系にて放送)を控える。


   

●作品紹介

『インビジブル』
脚本/いずみ吉紘
演出/竹村謙太郎 棚澤孝義
出演/高橋一生 柴咲コウ 有岡大貴(Hey!Say!JUMP) 堀田茜 谷恭輔 大野いと 板垣李光人 西村元貴 結城モエ 田中真琴 村井良大 酒向芳 原田泰造 桐谷健太 ほか


裏社会を牛耳り、あらゆる凶悪犯罪者達の取引を仲介する犯罪コーディネーター“インビジブル”。その存在は警察内部でも一部の人間しか知らず、しかも実像に迫ったことがないゆえに、都市伝説とささやかれていた。そんなインビジブルが突如、自身が関わってきた未解決事件や凶悪犯罪者の情報を提供し、犯人逮捕に協力すると警察に申し出る。条件はたったひとつだけ。操作一課から左遷された刑事・志村貴文(高橋一生)を担当にすること――。

4月15日(金)よる10時~放送
https://www.tbs.co.jp/invisible_tbs/