
【春のメンタル不調】健康意識が高まる漢方コラム:穀雨(4/20頃)の過ごしかた
人気の漢方専門家・櫻井大典先生に、季節「二十四節気」に合わせた中医学について学ぶ、心と身体のための「かんぽう歳時記」。
中医学は「季節の養生」と言われるほど“こよみ”を大切にしています。
そこで、この二十四節気ごとに、おすすめの食材(パワーフード)や養生法などを、たっぷりとご紹介!
数千年という歴史に裏づけられた、中医学の“知恵”を学びながら、日本の美しい四季おりおりを、もっと元気に、もっとたのしく、過ごしてみませんか――?
第21回は、「穀雨(4/20頃)」です。
「穀雨」って、どんな季節なの?
やわらかな春の雨が田畑をうるおし、まさに“恵みの雨”となる頃を指す「穀雨」は、春の終わりを告げる節気となります。
(イメージ:写真AC)
この時期は、新しい環境を迎えて張りつめていた心と身体が、ストレス、寝不足、呼吸の乱れ、胃腸トラブルなどの不調に見舞われやすいとき。「ひたすら眠い」「とにかく疲れる」という人も多いことでしょう――。この頃は「調和肝脾(ちょうわかんぴ)」といい、春に活発に働く「肝※」と、胃腸の働きを司る「脾」の働きを良くすることが重要なポイントに。不摂生は避け、胃腸を整えることが“養生”のポイントとなります。
(※)「五行論」に基づく、「肝、心、脾、肺、腎」の5つを「五臓」といいます。いわゆる「五臓六腑」の五臓にあたり、肝は春、心は夏、脾は長夏(梅雨)、肺は秋、腎は冬に活発に動くとされています。
「穀雨」のパワーフードは?
「穀雨」の頃におすすめの食材(パワーフード)は、ズバリ、「鱸」(スズキ)!
平性※1の鱸は中国でもよく食べられる食材のひとつで、この時期にいたわりたい「肝」を養い、胃腸を整え、血(けつ)を補ってくれる「調和肝脾」にピッタリの食材です。
(イメージ:写真AC)
そこで、3~5月に旬を迎える「新玉ねぎ」と一緒に、ホイル焼きにしてみてはいかが?
新玉ねぎは、吐き気や胃の不快感などを改善し血をめぐらせるので、この時期に出やすいゲップや、頭痛、肩こりを緩和してくれますよ。
また、ぜひ柑橘系を摂ってほしいこの頃、特におすすめなのは、「文旦(ブンタン)」。
寒性の文旦は、ストレスからくる胃腸トラブルを治し、咳を鎮め、イライラや落ち込みやすさなどのメンタル面もカバーしてくれます。ストレスを受けやすい春の時期には、ぜひ文旦と覚えておきましょう。爽やかな酸味と甘味※2で、気分をリフレッシュしてくださいね!
(※1)「五行論」に基づく、食べ物が持つ5つの性質「寒、涼、温、熱、平」を、「五性(五気)」といいます。その食べ物を食べたときに、体内で身体を温めるか、冷ますか、あるいは寒熱のかたよりが起こらないかによって分類され、いずれにも属さず、かたよりのないものが「平性」となります。
(※2)「五行論」に基づく、「酸、苦、甘、辛、鹹(しょっぱい味)」の5つを「五味」といいます。もともとは味そのものを指す言葉でしたが、現在では食材が持つ効能によって分類されています。
「穀雨」の頃の、心と身体の状態は?
春の終わりにあたるこの時期は、「肝」の疲れが溜まり不調が出やすいとき。冒頭で触れたストレス性の胃腸トラブルに加え、イライラ、情緒不安定、不眠、身体のだるさなどに見舞われる人が多い頃でしょう。
また、「肝」が弱ると「胆」も弱るため、いわゆる「胆力」がなくなります。「胆力」がなくなると、ズバッと何かを決める“決断力”が低下するので、新しいことにチャレンジしたいのに一歩が踏み出せない、気後れする、なぜかビクビクしてしまうといった症状も……。
では、どのような過ごし方(養生)をすればよいのでしょうか――?
「穀雨」の過ごしかた(養生)は?
春に多いストレス性の症状に見舞われたら、とにかくリラックスして、心身ともに“ゆるめる”ことがポイントになります。
寝不足の人は睡眠をたっぷり確保してほしいのですが、なかなか生活スタイルが崩せないという人におすすめなのが、お風呂タイムの活用です。湯船に浸かり、思わず「はあ〜」と声の出た経験のある人は多いはず。中医学的には、あの「はあ〜」というタイミングにこそ、気と血が身体中をめぐっていると考えます。つまり、心からリラックスしているというわけですね。
あるいは、手軽な“レンチン蒸しタオル”も効果的。濡らして軽く絞ったタオルをレンジで温め、目の上や首の後ろに当ててみてください。きっと「はあ〜」と、心身ともにゆるむことでしょう。この「はあ〜」をひとつの目安(=キーワード)として捉えることで、「自分が何をしたらリラックスできるのか」……より明確になるはずですよ。
「穀雨」の中医学的・たのしみごと
4月初頭の「晴明(せいめい)」から、この「穀雨」にかけては、一年を通じて、もっとも新緑の美しい時期。そこで、みずみずしい新緑のシャワーを浴びに、大きな公園や森など、“木”に囲まれた場所に、足を運んでみてはいかがでしょう?
(イメージ:写真AC)
五行でいうと、春の「肝」は五行の木を表します。つまり、この時期に“木”の多い場所に身を置くことは、そういった観点からもラッキーアクションと言えるんですよ。
新緑を楽しみつつ、じっくりと、木を眺めてみてください。あらゆる方向に、のびのびと枝葉を伸ばす様子は、この時期に私たち人間が“そうありたい”姿そのもの! 思わず「はあ〜」と、声が出てしまう人も多いかもしれません。
リラックスすること、ゆるめること。そう聞くと、「ヨガ?」「ジムでストレッチ!?」と考える人もいるでしょう。しかし、そこまで気合を入れる必要はありません。それどころか、頑張りすぎは逆効果になることも……。そこで、ご提案したお風呂や蒸しタオルのほかにも、あたたかい日差しのなか公園でランチを食べたり、コーヒーやお茶で一息つくのはいかが? くれぐれも窮屈に考えず、身近な「はあ〜」を探してみてくださいね!
*次回は「立夏の過ごしかた」5月4日(水)更新予定です。
構成・文/国実マヤコ
バナーイラスト/Sunny