【新茶の効果】健康意識が高まる漢方コラム:小満(5/21頃)の過ごしかた

【新茶の効果】健康意識が高まる漢方コラム:小満(5/21頃)の過ごしかた


人気の漢方専門家・櫻井大典先生に、季節「二十四節気」に合わせた中医学について学ぶ、心と身体のための「かんぽう歳時記」。

中医学は「季節の養生」と言われるほど“こよみ”を大切にしています。
そこで、この二十四節気ごとに、おすすめの食材(パワーフード)や養生法などを、たっぷりとご紹介!

数千年という歴史に裏づけられた、中医学の“知恵”を学びながら、日本の美しい四季おりおりを、もっと元気に、もっとたのしく、過ごしてみませんか――?

第23回は、「小満(5/21頃)」です。

 

「小満(しょうまん)」って、どんな季節なの?

小満は、万物の生命がエネルギーに満ち、うっすらと汗ばむ日も増え、降り注ぐ日差しに夏を感じ始める頃です。

(イメージ:写真AC)

人間の身体も自然と同じく、しっかりとエネルギーに満ちていなければいけない時期ですが、新しい環境に適応すべく仕事に邁進する人も多く、気づけば「外食ばかり」「睡眠時間がとれない」という人も多いのでは――? 忙しさから胃腸が弱り、気(エネルギー)が足りない状態になりやすい頃です。養生のキーワードは、中医学の言葉でいうと「養陰(よういん)=潤いを養う」「益気(えっき)=エネルギーを養う」「清心(せいしん)=心の働きを整える」。食事や睡眠で身体に潤いと元気を養い、初夏の暑気から身を守って「心(しん)」を整えておきましょう。

(※)「五行論」に基づく、「肝、心、脾、肺、腎」の5つを「五臓」といいます。いわゆる「五臓六腑」の五臓にあたり、肝は春、心は夏、脾は長夏(梅雨)、肺は秋、腎は冬に活発に動くとされています。

 

「小満」のパワーフードは?

「小満」の頃におすすめの食材(パワーフード)は、ズバリ、「ホタテ」
5月から8月にかけてグンと美味しくなるホタテは、この季節に食べてもらいたい食材のひとつ。平性1で気血(きけつ)を補ってくれる滋養たっぷりのホタテは、ストレスにも良いんです。

(イメージ:写真AC)

また、夏の五臓の「心」を補うには、「煮麺(にゅうめん)」がおすすめ。素麺は冷やしてめんつゆで食べるのが一般的ですが、ホタテで出汁をとり、温かくいただいてみてはいかがでしょうか? 素麺の原材料である小麦は、涼性で「心」によく、動機、不眠、情緒不安定にもよいので、メンタル面の不安を抱えるこの頃に、うってつけのメニューとなります。

そして、平性で潤いを生み、乾きをとってくれるのが、「レモン」。この時期、運動会などでスライスしたレモンをはちみつ漬けした「はちみつレモン」が重宝されますが、こもった熱をとり暑気あたりを改善するので夏バテに効くんです。ちょうど「養陰=潤いを生むこと」が養生として大切な時期。レモン(酸味※2)と、同じく乾燥を潤すはちみつ(甘味※2)の組み合わせは「酸甘化陰(さんかんかいん)=酸味と甘味の組み合わせ」といって、中医学でも“潤い補給”の定番とされているほど。運動して発汗するときに食べる「はちみつレモン」は、理にかなっているというわけですね。できるだけ、オーガニックのレモンと、非加熱の無加糖はちみつを使いましょう!

(※1)「五行論」に基づく、食べ物が持つ5つの性質「寒、涼、温、熱、平」を、「五性(五気)」といいます。その食べ物を食べたときに、体内で身体を温めるか、冷ますか、あるいは寒熱のかたよりが起こらないかによって分類され、いずれにも属さず、かたよりのないものが「平性」となります。

(※2)「五行論」に基づく、「酸、苦、甘、辛、鹹(しょっぱい味)」の5つを「五味」といいます。もともとは味そのものを指す言葉でしたが、現在では食材が持つ効能によって分類されています。

 

「小満」の頃の、心と身体の状態は?

「立夏」につづき“五月病”に気をつけたい時期となります。いわゆる「元気がない」人が増え、身体の疲れから、心の疲れが出やすい頃でしょう。

5月終盤、小満の後半に差し掛かると、学校、職場の新しい環境にも少し慣れてきて、五月病もそろそろ出口が見え始める頃でしょうか。しかし今度は梅雨に入り、雨も多く気温が徐々に上昇し始め、まだ肌寒かった立夏の頃と比べて、暑くて湿度の高い時期に。心身とも重だるく感じる方が増え、寝苦しさなども目立つかもしれません。

湿気の邪気である湿邪(しつじゃ)にやられると、手足や頭の重だるさ、むくみ、吐き気や軟便、下痢などがよく見られます。湿邪にやられやすのは五臓の脾。脾が弱ると食欲不振に加え、「考え込みやすい」という症状も出てきます。

では、どのような過ごし方(養生)をすればよいのでしょうか――?

 

「小満」の過ごしかた(養生)は?

五月病は、こじらせると適応障害や睡眠障害、うつ病などに繋がってしまうかもしれません。環境や立場的に“逃げ出せない”状況にいる人も多いかと思いますが、無理せず休んで、心と身体をゆるませる「余白」をつくっておきたい時期です。ボーッとする「余白」の時間がないと、身体のめぐりが悪くなり、実際に血流も悪くなってしまいます。

せっかくエネルギッシュな陽気に満ちる時期ですから、その陽気の大元となる太陽の光を浴びるのもおすすめ。とはいえ紫外線も強いので、30分程度を目安にしてください。ポイントは首の後ろにある大椎(だいつい)と呼ばれるツボ。この大椎を中心に背中から腰を意識して、太陽の光を浴びるようにしましょう。わざわざ外に出なくても、窓際でボーッと太陽を浴びるのもオッケー。これから梅雨に入るので、雨の合間の晴れの日をしっかり活用した養生をしてください。

また、梅雨の入り口に湿邪の影響が見られる方は、生冷食(せいれいしょく=生のものや冷たいもの)を避け、外食時のお水の氷を抜いてもらうなど、水浸しになるのを避けましょう。

 

「小満」の中医学的・たのしみごと

5月といえば、新茶のシーズン! せっかくの新茶ですから、できればペットボトルではなく、急須で丁寧に淹れたお茶を、お気に入りの茶碗でいただいてみませんか?

(イメージ:写真AC)

緑茶には、潤いを生み目や頭をスッキリさせ、ソワソワする心を安定させる力があります。そう、仕事でオーバーヒートしたとき、ストレスでもやもやするときにピッタリのお茶なんですよ。

効能としても心と身体をスッキリさせてくれる緑茶ですが、できれば、茶葉の香りを楽しむ、急須をお湯で丁寧に温めておく、お気に入りの茶碗や湯呑みを選ぶといった、お茶をいただく「時間(=余白)」自体を大事にしたいもの。急須や茶碗などの茶器は、お手頃なものなら100円ショップから数千円のものなど、本当にさまざまなバリエーションがありますので、ぜひ、この機会に自分の“お気に入り”を探してみては――?

 

ぽかぽかと太陽の気持ち良い縁側で、緑茶をズズっと飲んでいた日本のおばあちゃんは、まさに“養生のプロ”(笑)。情報に溢れた現代と違い、昔の人は身体が欲するものを、(教えてもらわなくても)きちんと理解していたのかもしれませんね。ちなみに緑茶を淹れるときは、熱湯ではなく湯冷ましした70度程度のお湯を使用しましょう。忙しければ忙しいほど、緑茶を楽しむ「余白」の時間を作ってみてくださいね!

*次回は最終回。「芒種の過ごしかた」6月3日(金)更新予定です。

構成・文/国実マヤコ
バナーイラスト/Sunny


Written by 櫻井大典
櫻井大典

アメリカ・カリフォルニア州立大学で心理学や代替医療を学び、帰国後、イスクラ中医薬研修塾で中医学を学ぶ。中国・首都医科大学附属北京中医医院や雲南省中医医院での研修を修了し、国際中医専門員A級資格取得。日本中医薬研究会に所属し、同志と共に定期的に漢方セミナーを開催。中医学の振興に努めている。
SNSにて日々発信される優しくわかりやすい養生情報は、これまでの漢方のイメージを払拭し、老若男女を問わず新たな漢方ユーザーを増やしている。
主な著書に『こころとからだに効く! 櫻井大典先生のゆるゆる漢方生活』、『こころの不調に効く! 気楽に、気うつ消し』(ともにワニブックス)、『まいにち漢方 体と心をいたわる365のコツ』(ナツメ社)、『つぶやき養生』(幻冬舎)、『漢方的おうち健診』(学研プラス)ほか多数。
Twitter: @PandaKanpo
Instagram: @pandakanpo
HP:https://yurukampo.jp/

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