【梅雨の体調不良】健康意識が高まる漢方コラム:芒種(6/6頃)の過ごしかた

【梅雨の体調不良】健康意識が高まる漢方コラム:芒種(6/6頃)の過ごしかた


人気の漢方専門家・櫻井大典先生に、季節「二十四節気」に合わせた中医学について学ぶ、心と身体のための「かんぽう歳時記」。

中医学は「季節の養生」と言われるほど“こよみ”を大切にしています。
そこで、この二十四節気ごとに、おすすめの食材(パワーフード)や養生法などを、たっぷりとご紹介!

数千年という歴史に裏づけられた、中医学の“知恵”を学びながら、日本の美しい四季おりおりを、もっと元気に、もっとたのしく、過ごしてみませんか――?

第24回は、「芒種(6/6頃)」です。

 

「芒種(ぼうしゅ)」って、どんな季節なの?

稲や麦など穀類の種を蒔くのによい時期とされ、この頃から梅雨入りする地域も増えていき、徐々に蒸し暑い日が増えていきます。

(イメージ:写真AC)

このジメジメとした暑さが胃腸(脾1)の働きに影響を及ぼすため、体内に余分な湿気が溜まる「痰質(たんしつ)」という状態に陥りやすい時期――。
「身体がだるい」「頭が重い」「やる気が出ない」「吹き出物が出る」といった症状に見舞われる人も多いかもしれません。そこで、気をつけたい養生が水はけ(=除湿)。湿気を払い、「清暑」といって夏の暑さを取り除いてくれる“うり類”を意識して摂るといいでしょう。このあとに紹介するパワーフードのほか、涼性※2の冬瓜、スイカなどもおすすめです。

(※1)「五行論」に基づく、「肝、心、脾、肺、腎」の5つを「五臓」といいます。いわゆる「五臓六腑」の五臓にあたり、肝は春、心は夏、脾は長夏(梅雨)、肺は秋、腎は冬に活発に動くとされています。

(※2)「五行論」に基づく、食べ物が持つ5つの性質「寒、涼、温、熱、平」を、「五性(五気)」といいます。その食べ物を食べたときに、体内で身体を温めるか、冷ますか、あるいは寒熱のかたよりが起こらないかによって分類され、いずれにも属さず、かたよりのないものが「平性」となります。

 

「芒種」のパワーフードは?

「芒種」の頃におすすめの食材(パワーフード)は、ズバリ、「ズッキーニ」
寒性のズッキーニは「清熱生津(せいねつしょうしん)」といって、こもった熱を取り、潤いを生むので、暑気あたりや喉の渇き、肌の乾燥やむくみにピッタリ。利尿作用もあるので、尿が出づらい、痛みがあるといった人にも適しています。
食べ方は、輪切りにしてフライパンで焼き、塩コショウで味つけするだけで、シンプルで美味しいですよ。また、ズッキーニとジャガイモを輪切りにしてサッと炒め、粉チーズを加えても合います。

(イメージ:写真AC)

ズッキーニと同じウリ科の「キュウリ」も、水はけをよくする心強い食材のひとつ。身近な食材ですが、ぜひこの時期は意識して食卓に並べてみてください。

「トマト」も、暑気あたりに良いだけでなく、「肝」の働きを平常化させるので、興奮や疲労を鎮め、胃腸の働きをよくします。
トマトは生のまま食べることが多いかもしれませんが、微寒性の特徴を持ち、身体が冷える傾向にもありますので、加熱して食べるのをおすすめします。たとえば、ミニトマトと砂肝のオイル煮(アヒージョ)はいかがでしょうか。砂肝は“鶏内金(けいないきん)”という生薬になるほど消化促進によい食材なので、トマトと一緒に食べることで夏バテにうってつけの一皿に。一緒に炒めるだけでも十分美味しいので、ぜひ、試してみてください。

 

「芒種」の頃の、心と身体の状態は?

身体の中に湿気が溜まる「痰質」とは、いわば、スポンジが水を吸って重くなったような状態のこと。そのため、梅雨時期によくみられる「身体が重い(=だるい)」「頭が重い」と訴える人が多くなります。中医学では、これらを外からの湿度「湿邪(しつじゃ)」に侵された状態と考えます。とくに、ストレスなどで胃腸が弱って身体の水分代謝が悪くなっている人は、雨の日など、外からの湿度に影響を受けやすくなりがちです。

加えて、普段から水分や甘いものを摂りすぎている、とりわけ甘くて冷たいドリンクが好きで、多く摂る習慣のある人は、この時期の梅雨や台風の影響を受けやすく、身体がだるくなる、便がベタベタする、吹き出物が出る、やる気が低下する、めまいといった症状がみられやすいでしょう。

では、どのような過ごし方(養生)をすればよいのでしょうか――?

 

「芒種」の過ごしかた(養生)は?

この時期の養生としては、とにかく水分代謝に気をつけて身体のなかに湿気を溜め込まないこと、くり返しになりますが、水はけをよくすることがポイントになります。過剰な水分摂取に気をつけることはもちろん、潤いを補給する乳製品も、なるべく避けるようにしてください。

そして、見逃しがちなのが、家の周囲に川や池がある、海の近くに住んでいるといった“環境要因”です。こうした環境にある人は「湿邪」の影響を受けやすいので、積極的に除湿機を使うことをおすすめします。ベッドの下などに除湿剤を置くのもいいでしょう。

また、意識して発汗することもお忘れなく。軽い運動や入浴、サウナなどもおすすめです。とにかく“ジメジメしてきたら発汗”と覚えておきましょう。「除湿・発汗・利尿」で、ぜひ、環境も身体も水はけの良い状態を意識してみてください。

 

「芒種」の中医学的・たのしみごと

「梅雨」「入梅」といった言葉が示すように、6月に入るとスーパーに青梅が出まわり始めます。そう、梅シロップや梅酒、梅干しを漬ける、一年に一度の“梅しごと”のシーズン到来です!
梅は咳や下痢を止め、疲労回復にとても良いんです。汗のかきすぎ対策にもいいですよ。

(イメージ:写真AC)

丁寧に下ごしらえをして作る梅シロップや梅酒は長期保存ができますから、この時期に多めに作っておけば、一年中、梅を楽しむことができます。また、家庭ごとに違うレシピやその年ごとの仕上がり具合なども、手作りならではの醍醐味ですね。

「そんな“丁寧な暮らし”は、とても……」と敬遠せず、ぜひトライしてみてください。それほど難しくありませんし、ご家族と一緒に作れば、初夏のよい思い出となることでしょう。

 

ジメジメしたこの時期にピッタリな「二皮玄米茶(にひげんまいちゃ)」という漢方茶があります。通常の玄米茶は、炒ったお米を煎茶の茶葉に混ぜて抽出しますが、これはさらに冬瓜と生姜の皮の液を使用します。
作り方は、まず、冬瓜の皮20gと生姜の皮5gを、水400mlで10分ほどグツグツと煮て、その合間に、フライパンで米を炒っておきます。急須に緑茶の茶葉と炒った米を入れ、煮だした冬瓜と生姜の液をお湯代わりに使ってお茶を淹れたら、「二皮玄米茶」の完成! こもった熱を取り利尿作用にも優れているので、ぜひトライしてみてくださいね。

*1年間にわたる「かんぽう×二十四節気」の連載はいかがでしたでしょうか?
連載はこれで最終回となります。ご愛読ありがとうございました。

構成・文/国実マヤコ
バナーイラスト/Sunny


Written by 櫻井大典
櫻井大典

アメリカ・カリフォルニア州立大学で心理学や代替医療を学び、帰国後、イスクラ中医薬研修塾で中医学を学ぶ。中国・首都医科大学附属北京中医医院や雲南省中医医院での研修を修了し、国際中医専門員A級資格取得。日本中医薬研究会に所属し、同志と共に定期的に漢方セミナーを開催。中医学の振興に努めている。
SNSにて日々発信される優しくわかりやすい養生情報は、これまでの漢方のイメージを払拭し、老若男女を問わず新たな漢方ユーザーを増やしている。
主な著書に『こころとからだに効く! 櫻井大典先生のゆるゆる漢方生活』、『こころの不調に効く! 気楽に、気うつ消し』(ともにワニブックス)、『まいにち漢方 体と心をいたわる365のコツ』(ナツメ社)、『つぶやき養生』(幻冬舎)、『漢方的おうち健診』(学研プラス)ほか多数。
X(旧Twitter): @PandaKanpo
Instagram: @pandakanpo
HP:https://yurukampo.jp/

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