【HSP/繊細な人】ナイーブさんの「生きづらさ」を強みに変えるテクニックとは?


最近、「HSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)」や「繊細さん」といった言葉を、よく耳にしませんか――? 

「HSP」を直訳すると「とても繊細(敏感)な人」。これは病名ではなく、あくまでも最近の心理学の研究で提唱されている“人間の個性”のひとつです。ところが、彼らのナイーブさの根底には、「ネガティブな考え方のクセ」という共通点があり、そのため「どうせ私は……」「ぜんぶ自分のせい」などと考えがち。そのストレスフルな考え方が悪循環に陥ると、不安症、うつ病といった心の病気(精神疾患)につながることも……。

ここでは、長年、不安症やうつ病などの治療にあたってきた、認知行動療法のスペシャリスト、精神科医・清水栄司先生による待望の新刊『ナイーブさんを思考のクセから救う本』より、そんなナイーブさんの「生きづらさ」を“強み”に変えるテクニックをご紹介します!

 

カンペキか、失敗か――「全か無か思考」に注意!

ナイーブさんや繊細な人のなかには、「人間関係で失敗してはいけない」「人前でカンペキな話をしなければいけない」といった“極端”な思考パターンを持つ人が多くいます。

100点満点のテストで95点を取ったのにも関わらず「100点じゃなかった……」とがっかりしてしまう。この極端な完璧主義を「全か無か思考」といい、たった2種類の価値でしか評価ができなくなってしまう状態に、清水先生は警鐘を鳴らします。

「『完全に◯◯である』ということは実際にはありえないことも多いのに、自分で決めた高すぎる目標設定に自分を無理に合わせようとしてしまう。そのために、本来なら『成功』と肯定的に認知をしてもいいようなときでも、『失敗』と否定的な認知をします。その結果、本当だったら自信を持っていいはずなのに、『ああ、自分はなんてダメなんだろう……』と自信喪失を繰り返してしまうのです」

先生の言葉に、ギクっとする人も多いのでは? この「全か無か思考」にとらわれると、一層ストレスがかかり、気分が暗くなったりして、悪循環にはまってしまうことも……。「自分はもうダメ」と嘆くまえに、まずは「全か無か思考」に陥っていないか、一度、自分の思考パターンを振り返ってみましょう。

 

わたしは嫌われている――それ「結論の飛躍」じゃない?

そっけない態度をとられたように“感じた”だけにもかかわらず、「わたしはあの人に嫌われているかも」……。そんなネガティブな思いにとらわれることは、ありませんか?

ナイーブさんは、「心の読み過ぎ」をする傾向があります。これは、人の発言や行動の一部分で、その人がどう思っているかをことさらネガティブに決めつけ、それが本当かどうかも確かめようとしないで、いきなり結論づける思考パターンのこと。いわゆる、「認知の歪み」と呼ばれるネガティブな考え方のクセのひとつです。

そもそも、人の心なんて、わかるはずがありませんよね……。ところが、この“大前提”を忘れて他人の心を読もうとし過ぎたり、ネガティブな読み方に偏り過ぎたりすると、「生きづらさ」につながってしまうんです。もしかすると、相手のそっけない態度も、「たまたま家庭の問題で頭がいっぱいで、心ここにあらず」だった可能性だってあるのですから。

これは、人の心のみならず「未来」についても同じ。ナイーブさんは誰にもわからない未来についても「どうせ、失敗するに決まっている!」と、根拠もないネガティブな結論に一足飛びにジャンプ! そして、勝手に「お先真っ暗」に陥ることも……。

これも、誰にもわかるはずのない未来を勝手に決めつけて、自分で決めたどの未来へと進んでいるだけ、なんです。こうした「結論の飛躍」に心あたりのある人は、今すぐその思考パターンを見直していきましょう。

ご紹介した「全か無か思考」「結論の飛躍」のように、ナイーブさんの“生きづらさ”には、自分を不安にさせる“思考パターンの悪いクセ”がつきもの。逆に言えば、この考え方のクセを修正するだけで“生きづらさ”が飛躍的に改善するのみならず、その「繊細」な要素をうまく改善し、自己肯定感を高め、仕事や人生の生産性を上げることも可能に! 

『ナイーブさんを思考のクセから救う本』には、そんな繊細さを活かした心の健康習慣や繊細な人が生きやすくなるためのライフハックが盛りだくさん。さあ、あなたの“弱み”を“強み”に変えて、もっとラクに、もっと楽しく豊かに、生きてみませんか――?

イラスト/ハルペイ

\大好評発売中!/
ナイーブさんを思考のクセから救う本
著:清水栄司

清水 栄司 (しみず・えいじ)

1965年山梨県生まれ。千葉大学大学院医学研究院認知行動生理学教授、医学部附属病院認知行動療法センター長、子どものこころの発達教育研究センター長。 精神科医。1990年、千葉大学医学部卒業。千葉大学医学部附属病院精神神経科、 プリンストン大学留学等を経て、現職。認知行動療法のスペシャリストとして、不安症(パニック症、全般不安症 社交不安症)、強迫症とうつ病などの治療に、複数の認知行動療法士とともにあたっている。