【話題のイタリア生活】この夏、イタリア人に学ぶ「バカンスの過ごし方」とは?


イタリア人パートナーとの結婚を機に、イタリアのトリノに家族4人で暮らす、イラストレーター・漫画家のワダシノブさん。イタリア在住15年となるワダさんのイラストエッセイは、日本人の私たちがハッとするようなエピソードが、ほっこりかわいい漫画とともにつづられ、noteやTwitterで大きな反響を呼んでいるんです!

そんなワダさんのイタリア生活をつづったエッセイが、ついに書籍化。『いいかげんなイタリア生活 イタリア在住15年の私が見つけた頑張りすぎない生き方』は、「適当でも、いいかげんでも、だいたいなんとかなる」と、心がふっと軽くなるエピソードが盛りだくさん。

ここでは、ワダさんに「目から鱗が落ちた」と言わしめた、イタリア流“バカンスの過ごし方”をご紹介します。きっと、この夏の過ごし方のヒントとなるはずですよ!

 

ただ“今を生きればいい”バカンスの過ごし方

夏休みといえば、「休みでも早寝早起き!」「休みの間どう過ごすかが大切!」――。日本人の私たちは、小さいころからそんなふうに言われ続けてきました。そして、社会人になってからも「休日の体調管理も仕事のうち」と、せっかくの休みにもかかわらず、襟を正す始末……。

ところが、イタリア流「バカンスの過ごし方」は、我々と、まったく感覚が違うようで!?

イタリアのバカンスはだいたい二週間ほどあって、「ferragosto(フェラゴスト)」と呼ばれる8月15日の前後の一週が休みになるほか、6月から9月にかけて調整しながら合計で二週間以上の休暇をとる。(中略)

この長い休暇で彼らが何をするかというと、答えは単純で「日常から離れて生活する」のだ。辞書で調べると、生活とは「生存して活動すること、生きながらえること」と出てくる。つまり、休暇中はただ生きていればいいのだ。
まず、日常から離れるために、イタリアの人たちは海や山、行きたかった街へと移動する。移動先は豪華である必要はなく、アパートでも、キャンプ場のコテージなどでもいい。一週間単位で借りられる部屋を探し、そこで生活するのだ。
バカンス中の過ごし方は、だいたい次のような感じだ。
朝、起きる。海か山、または街に行ってだらだら過ごす。夜になったら何か食べ寝る。これを最低でも一週間、できればそれ以上続けるのだ。

いつもと違う景色の中で生活することが、休暇の一番の目的なので、観光や美味しい食事はすべてオプションとして考えられる。家事ですらオプションにすぎない。
ましてや、「将来の役に立つこと、意味のあることをしなくては」なんて考えからは、しっかり離れるべきなのだ。ただ今のことだけ、どんなに先でも今日一日のことだけを考えて生活すればいい。
大げさかもしれないけれど、たったこれだけのことで人生に色が戻ってくる。本当に魔法のようで、「だから、この人たちはこんなにバカンスを大事にするのか」と、目から鱗が落ちたほどだ。
(本文より抜粋)

 

イタリアで知った、本当の休暇の意味とは?

イタリア流の「バカンスの過ごし方」に感銘を受けたワダさんですが、つづけて、日本人ならではの“心の内”を吐露します。

私は最初のうちはこの何もしない長い休暇が苦手で、「時間の無駄」とすら思っていた。というのも、私にとって休暇は、子どもの頃の夏休みのイメージのままだったからだ。子どもの頃に何度も言われた、「休みの間もきちんとしていないと、休みが終わった後が大変だよ」という言葉に囚われていたのだ。
今になって思うのが、日本の小学校で配られる夏休みの宿題に計画表があるのは、夏休みが休暇ではなく、「休み明けのために規則正しく生活して、学びを得るための期間」だからかもしれない。そのせいで計画表なんて一度も守れたことがない私でも、「きちんとしないと後から困る」という考えだけは染みついてしまった。だから、休暇中もずっと誰かに「後から困るよ」と言われている気がして落ち着かなかったのだ。

でも、イタリアのバカンスを経験して、この考えはなんだかおかしいと思うようになった。もし、休み明けに以前のような日常に戻れないなら、休み前の日常に何か問題があるはず。もしくは休みが全然足りていないから、もっと休むべきなのだ。戻るのが嫌なら戻らなくてもいい。嫌なのはそれが自分にあっていない証拠だから。
いつかのために準備ばかりすることをやめて、今を生きる。これがイタリアで知った休暇の意味だ。もっと休みを。
(本文より抜粋)

 

「いつかのために準備ばかりすることをやめて、今を生きる。これがイタリアで知った休暇の意味だ。」そんなワダさんの言葉に、思わずドキッとした人も多いのでは? 

この夏、イタリア流「バカンスの過ごし方」に学び――たった1日でも2日でも――本当の“休暇”を過ごすことで、心からリフレッシュしてみませんか?

\大好評発売中!/
いいかげんなイタリア生活
著:ワダシノブ

ワダシノブ

イラストレーター・漫画家。広島県生まれ、イタリア・トリノ在住。
日本で出会ったイタリア人パートナーの帰国について、 2007年にイタリアに渡る。イラストレーターとしての仕事のかたわら、noteやPodcastでイタリア生活について発信している。
Twitter @shinoburun